第4話 桜台旅人(魂)と女の子(神)と謝罪(土)
「…それで、お願いがあるのじゃ。」
はて?なんでしょうか?
「あの子がお主に会いたがっておるのじゃ。」
───え?
僕、桜台旅人は只今絶賛困惑中です。
「頼む。あの子に会ってくれんか?」
いや、そんなこと言われましても……。
「会って一言話すだけでも十分じゃ。」
え~~~~、どうしよっかな………
真剣
「何故、そんなに乗り気でないのか教えてもらってもよいか?」
……何故って……
めちゃくちゃ気まずいじゃないですか!!!!
いやだって、悪気なく自分を殺めた人(神)と対面ですよ!?
気分はさながら自分が犯人だと決めつけ冤罪だった人に面接する事になった遺族のよう。
…………そんな事態になったことはないのでどういう気分かよくわかりませんが。
少なくとも、
好きな子に告白し、「彼氏いるから」と断られた翌日に学校でその子とその子の彼氏(彼女が告白されたことを知らない)と3人でチームになってしまい協力して発表することになり、奇跡的にその発表が上手く行ったために全校生徒の前でもう一度発表しなければならなくなってしまった時の気まずさは優に超えています。
(因みに「協力して発表することになる」まで作者の実体験です。実験体ではありません。あのときは本当に死にたくなりました。)
…………そんな話(冗談ではないから冗談とは言わない。)はさておき、なんでまた僕に会いたいと言ってるのでしょうか。
「それはじゃな───」
…………そういえば神様って心読めるんでしたね。
「……今更かの?」
いや~すっかり忘れてました。すみません。
「…まあ、よいが。それで、あの子がお主に会いたがっておる理由というのは…………」
……ゴクリ…………
「お主に……謝罪するためなのじゃ!!!」
な、なんだって~~!!!!?
いつものですね。ありがとうございます
確かこの神様はお約束がわからないとか言ってた割にはしっかりお約束してますよね。
「ちょっとばかり勉強しての。」
ああ、そういうことでしたか…………
……いや、いつの間に!?
「神は同時にいくつもの分身を操れるぞ。」
……あぁ。なんかありましたね、そういうの。
日本でも、同じ神様を祭る神社が複数あるのはそれが理由らしいですね。
例としては、北野天満宮と太宰府天満宮とかがありますね。
この神様は日本の神様と少し離れているような(どちらかと言えば仏様とか仙人様に近い)ですが、同じ事が出来るんですね。
「そうじゃな。全ての神がというわけではないが、分身が出来る神は多いぞ。」
はえ~~そうなんですか。
てっきり日本の神様特有の能力かと……
「……まあ、あそこまで分身できるのも珍しいがの……」
どうやらこの神様はそんなにたくさん分身できないみたいですね。
「いや、わしができないと言うよりは、あやつらができすぎなのじゃ。ほとんどの神は普通10体くらいが限界じゃ。あやつらが特殊なだけじゃよ。」
どうやら日本の神様は分身に特化しているみたいです。
他に分身が得意な神様はいるのでしょうか。
「うーん……地球の神は全体的に得意な神々が多いような気がするのう。」
へ~そうなんですか。
………………………………
おっと、話が逸れてしまいましたね。
それで、あの子が僕に会いたいという話ですけども。
「おお、そうじゃったそうじゃった。あの子がお主にどうしても謝罪したいらしいのじゃ。」
……わかりました。時間や場所は?
「今からここでじゃ。」
──────は?
え?今から?ここで?できるの?テレポートでビュンみたいな?
いや、待てよ……
まさか、僕が了承するのを見越してこっちに呼んでたなこの神様……!
「い、いやそうではない!テレポートじゃよテレポート!神はテレポートぐらい誰でもできるわい!」
あ、そうなんですか。
「もちろんじゃ。無論、場所は教える必要があったから教えたが、あの子がここでずっと待っているなんて事はあるまい。」
本当に?
「少なくとも、わしは呼んどらん。」
『つまり勝手に来てる可能性はあると?』
「それは…………」
それは?
「それは……なきにしもあらずじゃな……」
ええ……
「あの子の親から連絡は来ておらぬが…………あの子が親に黙って来ている可能性はあるのう。」
『後で怒られません?それ。』
「怒られるぞ。」
じゃあダメじゃん。
『…………(ピクッ)』
「ん?」
なんでしょうか?
『───………(ササッ)』
……………………
「……………………」
あの~~、もしかしなくても……
「…………(コクリ)」
あちゃ~~~……。
「で、何をコソコソしておるのじゃ。」
『ばれてますよ~~。』
「!!?」
「そこにおるのはわかっておるぞ」
『出てきてくださ~~い。』
「えっあっ……うぅ。」
『!』
おずおずと現れたのは、白髪金眼の10歳くらいの美少女。
腰辺りまで伸ばした白髪は絹のようになめらかで、頭頂部にはしっかり天使の輪があります。
そして、白くきめ細かい肌と、細いが健康的な四肢を真っ白の膝丈ワンピースで覆っている。
小さな顔に大きな目と透き通った鼻筋、血色のいいピンクの唇。そして、完全左右対称の顔は少し作り物めいている。少し作だけで済んでいるのは女の子の美貌故かその頬を赤らめているからか。
こうしているうちにもどんどん赤く…………あれ?
気がつけば熟れたリンゴ見たいに真っ赤になっていました。
……………………
What?
え?なんで!?Why Japanese people!!?
って言おうとしたけど、よくよく考えなくてもJapaneseでもpeopleでもなかった件について。じゃあWhyしか残らんやないかい。
………………………………
いやいや、そうじゃなくてですね。
何故照れているのでしょうか?
もしかして、声に出てましたかね?
いや、でも声には出ていなかったような?
じゃあどうやって……?
だって、心でも読めない限り無理ですよね。
心でも読めない限り…………
心でも…………
…………
まさか?
「そのまさかじゃ。」と神様。
あっ
「うぅ……ええ………?(グルグル)」
す……
『すみません!あの、こ、これは突然出てきたことに驚いてですね!つ、つい思った事をそのまま言ってしまってですね(?)。え、え~と、もう少し頭を整理してから発言するべきでした(?)。不快にさせてしまい本当に申し訳ありません……!』
「!?、~~~~!!?…………キュウ。」
女の子気絶。
アッ
「……………………」
え~っと……すみません。
「…………ハア。全く……1つ訂正しておくと、お主は思っただけであって話してはない。頭の中を整理をしてからは思うのは無理じゃろう。」
あっはい。
「……まさかお主にタラシの才能があったとはのう…………」
ありますかね?
「普通は「きれいだなあ」で終わるものじゃろう。あそこまで細かく褒められたら誰でも照れるわい。」
そういうもんですかね?
「そういうもんなのじゃ。」
……………………というかひ孫さんがきれいってことには反対しないんですね。
「? 当たり前じゃろう。流石に神界一とは言わぬが、かなりの美形であることには間違いなかろうて。」
あっそうなんですか。
え~とそれで……………………
「……………………(気絶中)」
あの……お嬢さん…………どうしましょう?
「少なくとも起きるのを待つしかあらぬの。」
それしかないですね。すみません。
「構わんよ。」
『それで…………親御様には連絡しなくていいんですか?』
『………………(ピクッ)』
「………………………………」
……………………………………
「…………今はまだよいのではないかの?」
『…………(ホッ)』
…………ソウデスネ。
『……………………(モジモジ)』
「………言わんから起きてこい。」
「!……はい。」
「それで、彼に謝りたいのであろう?」
「はい。」
「なら、しっかり整理してから話すのじゃ。」
『僕はいつでもいいですから、慌てず焦らず落ち着いて、お願いしますね。』
「はい。えっと、その…」
……全く落ち着いていないですね。まあ、当然のことなのでしょうが。
さて、こんなときには~~
『まあまあ、まずは深呼吸してください。』
深呼吸~~!
やっぱりコレですよね。
「えっあっ」
『はい吸って~~』
「で、でも──」
『いいですから。ほら、吸って~~』
「……す~」
『はい、吐いて~~』
「は~」
『もっかい吸って~~』
「す~~」
『吐いて~~』
「は~~」
……少しは落ち着いてくれましたかね?
「ふぅ」
どうやら落ち着いてくれたようですね。
「落ち着いたかのう?」
「はい!」
「そうか。ならば今度こそ、落ち着いて話すのじゃよ。」
「わかりました。」
お、どうやらそろそろのようですね。
「桜台旅人様。」
おおう様付け。なんか病院の呼び出しを思い出しますね。
「よくなかったですか……?」
『いえ。あまり様付けで呼ばれたことがないので、少し驚いただけです。ああ、呼び方はそのままで大丈夫ですよ。』
「そうですか?」
『もちろんです。』
「…………(チラッ)」
「……相手が言うておるのじゃから、そのままでよいのではないか?」
「……はい。改めまして、……桜台旅人様。
この度は、私の行動のせいであなたの命を奪ってしまい、本当に申し訳ありません。」
『何故、僕は死んでしまったのですか?』
一連の出来事は神様から聞いていますが、しこりをなくすためにも、敢えてここは質問します。
おじいさんも何を言うでもなく見守っています。
「まず、私が直接地上に降りてしまった事で、時空間が歪み、時間が巻き戻ってしまいました。
そして、降りた場所が踏切の中だっため、心優しい人たちを心配させて、挙げ句旅人様に踏切に飛び込まさせてしまいました。
そのあと、時間が巻き戻ったことが原因で戻ってきた列車に跳ねられた事で、旅人様の命を奪ってしまいました。」
『何故、直接地上に降りたのですか?』
「それは、私の不注意です。
父や母に直接降りてはいけないと言われていたにも関わらず、私が言われていた事を忘れたのが原因です。」
おじいさんから聞いた通りですね。
『何故、忘れていたのですか?』
言ってることは厳しいのは自覚していますが、多少問い詰めておかないとこの子のためにもならないですからね。
「それは…………ッ、わ、わたしが……」
『怒ってませんから、ゆっくりお願いします。
聞き方を変えましょうか。
え~、忘れていたと言っていましたが、忘れてしまうようなことがあったのですか?』
「ッはい。ありました…………それは、私が地上を見るのが楽しみだったことです。前々から楽しみにしていたので、許可が出たときについ嬉しくなって、そのまま地上に…………。」
ふんふんなるほど。確かに一致していますが、少々気になるところがありますね。
『僕が死んだ理由はわかりました。』
「はい…………」
『許すか許さないかは取り敢えず置いておいて、最後に1つだけ、いいですか?』
「?はい。」
『では、最後に、あなたの言葉で、謝罪していただけませんか?』
「「!?」」
図星のようですね。
え?何で気づいたのかって?それはですね……
あっ、言わなくていい?
どーせ心の声に反応してないところだろって?
流石、ご名答です。
今回は解説なくてよさそうですね。
では、続きどうぞ。
「…ッ……ッ!……はぃ……ご、ごめんなさい……本当に……ッ!……ごベんなさぃ~~…………」
あらあら、泣き出してしまいました。
「……わしからも、済まんかった。このとおりじゃ。」
おおっとこっちは土下座です。
…………神様に土下座された人ってどのくらいいるのでしょうか。
数ある物語のなかでも神様に土下座させる描写したのこの作者が初めてじゃないですか?
(初めてじゃなかったらごめんなさい。)
キリシタンやムスリムに怒られそうですね。
まあ嫌だったら読まなかったらいいだけの話ですので、文句を言われる筋合いはないですが。
(多様性?ここで俺が一神教信者に合わせたら1つ多様性が失われると思わないかね。)
『許します。二人とも顔を上げてください。』
「えっ……?」
「…感謝する。」
まあ、元々答えは決まっていたんですけどね。
「……ほ、本当、ですか?」
『本当です。』
こんなところで嘘ついても仕方ありませんよ。
「あ、ありがとう、ございま、す。」
「重ね重ね感謝する。」
『ささ、二人とも顔を上げてください。ね?』
「はぃ……ッ」
「…………ほれ、いつまで泣いておる。」
「……ごめんなさい~~」
一件落着、めでたしめでたし。
「マリー!こんなところにいたのですか!」
「おかあさん!?」
とはいかないのが、この世界ですよね。
いや~この世界ってままならないですよね。