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夜目のあまりきかない紫雫は、暗くなってから喫茶店の接客の練習をし、俺は紫雫が探しに出てる間に料理の仕方や接客の方法を習った。
一度に教えた方が楽だろうに、紅葉さんは俺先行で教えてくれた。
ある日の事、珍しく早く帰ってきた紫雫が裏庭でカァカァと鳴く。
「紫雫、どうしたの? お前が騒ぐの珍しくない?」
そう言いながら、俺が声の聞こえる方へと出て行く。
「今日はお休みだから~」
なんて紅葉さんもついてくる。
「なに! あの狐さんたち、もふもふ可愛い!」
紅葉さんの視線の先を追うと、3匹の狐の姿が。焔、琥珀、銀と呼んでいた狐の姿があった。
彼らは何故人間の家の近くに連れてこられたのかわからずに、おどおどしていた。
それはそうか、人間に追い立てられるようにして、俺達は別れたんだから。
「焔、琥珀、銀! 無事で良かった…!」
そう言って彼らに駆け寄ると、何故人といるの? そんな戸惑いを感じつつ、ペロペロと俺を舐める3匹。
銀は、人に捨てられたのかわからないけど、俺が見つけて、群れに連れてきた銀色をした狐だ。
焔は俺と同じ、赤みがかった毛並みで、琥珀は名前の通り、金色とも薄茶色ともつかない、優しい色合いの狐だ。
彼らは俺達のように、妖ではない。
普通の餌を食べていかなければ、生きていけない彼らなのに、情に厚いのか俺達にも取ってきた希少な餌を分けようとする。
だから俺達一族は、彼らの生のために、俺達は別れを選んだのだ。
なのに、彼らのやせ細ってはいても、元気な姿を見ると言葉に詰まる。
「このもふもふくん達が、暁くんの言ってた仲間?」
後ろからついてきて、最初に喋って以降、無言で様子を窺ってた、人間の紅葉さんが口を開いたのだ。
警戒するなと言う方が無理か。牙を剥き威嚇音を上げる焔達…。
「この人は…、大丈夫だから…」
俺や紫雫が撫でながらそう宥めると、困惑した瞳で紅葉さんと俺らを見比べた。
ただ完全に警戒を解く気はまだないのか、尻尾が心做しか膨らんでいた。
「私は…、追々仲良くなれればいいよ~。また、ささみとか蒸したのがいいかな? それとも量取れる鶏の胸肉とか蒸す?」
「こいつらあんまり餌食べれてないだろうし、何でもご馳走だと思う…」
俺がそう言うと、紫雫が口を挟む。
「マヨネーズがあれば、なんだってご馳走になる!」
うっとりと紫雫が言うと、呆れたように紅葉さんも口を挟んだ。
「君はマヨラーかッ! てか野生動物に、マヨネーズってどうなのよ……? まぁいいや…。軽く塩振って蒸してくる…。その間お話してて…」
そう言うと紅葉さんは、室内へと帰って行った。




