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「暁? 平気…?」
「うん…。仲間にも食わしてやりたかったなって思ったらつい……」
少し声が震えていたかもしれないけど、紫雫もわざとなのか、気にした様子はない。
「そっか…、仲間かぁ。どのくらいいるのかな…?」
「紫雫は1羽で生きてたけど、俺は3人の一族と、近くに住んでた狐3匹と仲良く暮らしてた……。山を離れる前までは…」
「そうなんだ…。だったら畑荒らさないとか、約束守ってくれるなら呼んでもいいよ。どうせうちの所有の山だし…」
「約束……」
さっきまでうっとりとしていた紫雫が、カタカタと震えだした。以前した。指切りを思い出したらしい。
紅葉さん曰く、少し行った先に観光地になりそうな大きな滝がある為に、山を開放しているらしい。
その通り道に、かつて開きたかったカフェを開店したようだ。
「危なくない? こんな人気の無い所に女の人1人で…?」
「ん…? 今までは近くにある叔父さん一家のうちで寝泊まりしてたから。いつか住もうと思ってたけど、男手いないと流石に危ないからって、許可でなかったの。でも君達保護した事にしたら、大丈夫かなってここに何日かお泊りしてるけど…。あはは」
「……そういう問題なの…?」
呆れつつ俺が言うと、あははははーと笑って誤摩化された。解せぬ。
「影山くん、って…、ホントは紫雫くんって言うんだっけ、カラスになって、暁くん…? の仲間探せないのかな?」
「皆がどこまで行ったかによるけど…。まだ近隣を、彷徨いてるやつだけなら可能かも…」
顎に手をあて、考え込むようにして紫雫は言う。
「確かに紫雫なら、アイツラも警戒しないかも…」
「ご飯をあげるから、畑を荒らさないとか、人に迷惑かけないとかいい含めてくれるなら、暁くんの仲間の狐さんの小屋作るよ。紫雫くん、しばらくの間、暁くんの仲間探しお願い出来るかな?」
「いいよぉ…。その代わりまたマヨネーズ食べさせて……」
普段のやる気のない姿から一変、熱い眼差しでそういう紫雫に、紅葉さんは笑いを零した。
「面白い子だね、紫雫くんって…」
そうぽそりと囁く、紅葉さん
「普段はコイツ、こうじゃないんですけどね…」
俺はそう返した。
いつもより近い距離のせいか、ほんのり甘く香るラベンダーの香りに、心做しか鼓動が早くなったのは気のせいだ。




