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ヲタッキーズ77 影の政府を叩け

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。


ヲトナのジュブナイル第77話「影の政府を叩け」。さて、今回はアキバ特別区の市長選で得票数に不正操作の疑惑!


関係した統計学者らが次々消される中、黒幕として浮上したのは、人類を裏から支配する謎の委員会…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 さよなら金髪メイド


真夜中の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地が良くなり常連(僕も含むw)が溜まって困ってるw

ところが、今宵は正午(午前0時)が過ぎると、僕と僕の推しでメイド長のミユリさんだけとなる。コレは神様が僕の背中を推して…


「ミユリさん!じ、実は、僕は…」

「おかえりなさいませ、お嬢様」

「え。」


金髪メイドの御帰宅だwメイドバーにメイドの客だと?


「レテル?池袋の御屋敷に移ったって聞いたけど」

「ミユリ姉様、突然ごめんなさい。実は…最近一緒に働いた人が相次いで3人も死んだの」

「亡くなった?」

「恐らく口封じのためだと思う。きっと殺されたンだわ、姉様、私も殺されちゃう!」

「ちょっち待ってレテル。亡くなった方の死因は?」

「ソレが複雑で…今はお話出来ません」

「警察へは?」

「ダメょ!もぉ誰も信じられない…」

「じゃ何しに来たの?」

「ミユリ姉様は、メイドの最後の駆け込み寺です。もちろん、姉様のTO(トップヲタク)も信用しています。えっと、ヘンリー少尉サンでしたっけ?」


違うけど、金髪メイドの憂える瞳に免じて許そうw


「わかった。明日一緒に万世橋(アキバポリス)を訪ねよう。アキバの警察はヲタクの味方だから」

「ホントですか?じゃ証拠の書類をお持ちします!だって、何も悪くナイのに殺されて…」

「レテル。大丈夫なの?」


レテルは振り向き、力なく微笑むと…走り去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「リケジョカフェ"アルケミスト"にいたレテル・ロトンです。でも、彼女は少し…」

「変わってる?まぁ理系だからな」←

「彼女はモノホンのリケジョでした。バークレー校で博士号を取得した才媛。激務の中、夜だけ好きなメイド服を着て、息抜きをしていました」


残された僕とミユリさんで少し話す。


「ヲタクだったンだ。じゃ仲良くなれるね」

「専門は人口統計学です」

「才媛とメイドは紙一重だ。往々にして陰謀は変わり者が発見スル。でも、誰も信じナイだけだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


全裸のレテルが仰向けに寝ている。


「レテル・ロトン。死因は心停止。体内から大量のアセトアミノフェンとヒドロコドンを検出しました。処方薬の大量摂取による"故意の死"と思われます」


夜明け前のパーツ通りで発見された金髪メイドの死体は、万世橋警察署の検視ルームに運ばれる。

異次元人反応が出、事件は警察とSATOの合同捜査となり、ヲタッキーズも万世橋(アキバポリス)に出動となる。


「彼女は、怯えて動揺していたわ。興奮もしていたけれど…決して自殺じゃない」

「ムーンライトセレナーダー。彼女は、2年間セラピーに通っていたそうです」

「セラピーに?何で?」


ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿で、ハデなヘソ出しセパレートの白いコスプレなんだが、ルームに馴染んでる。アキバだから。


「鬱です。雇用先の記録によると情緒不安定とのコト」

「検査はしないの?」

「一応、調べますが、恐らく何も出ないでしょう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバには国宝級の超天才がいて、その名をルイナ。

今日も思いの丈を方程式にして黒板にぶつけてたら…


「ルイナ。来たわよ」

「スピア!待ってたわ。さぁどうぞ…あ、身体検査は必要なさそうね」

「いいえ。規則ですので」


ルイナは国家的な超天才なので、特殊部隊が護衛につく。

ラボのゲートには武装兵の立哨がついて全員を身体検査…


スル規則だけど、スピアはスク水←


「でも、ルイナ。期待しないで。どーせ、また大学に入って勉強しろって話でしょ?…え?スク水も脱ぐの?」

「だって…スピアのような人向けの特別なプログラムがあるの」

「ファンタジーゲームマニアの高卒社会人向けプログラム?」

「従来の教育プログラムから落ちコボれた天才向け、ね」

「ナイスな言い方。でも、私にアキバ工科大学は無理ょ。テストの成績は最悪。コミュ障で教授センセとロクに口も聞けやしない」

「あら。今、話してるじゃないの?」

「え。ルイナもセンセだったの?メイド服なのに?」


あ、ルイナは趣味でメイド服を着ている。

だから、コレはスク水とメイド服の対話。


違和感はナイ。ココはアキバだから←


「私にわかるのは、ファンタジーリーグやシミュレーション

ゲームの結果の統計と予測だけょ」

「その予測に天才のヒラメキがアルの。ソレだけで十分。さらに今後の学び次第で、何だって出来るわ…え。あ、コレ?さっきテリィたんから頼まれて…」

「1000万分の1?」

「そーなの。2週間以内に同僚4人が死ぬ確率ょ。1人は知り合いで、今朝遺体を確認したンだって。あ、ちょうど良かった。検算してくれる?」

「OK…しかし、ヒドい話ね」

「ミユリ姉様の話だと、口封じのための殺人らしいわ」

「え。あの2人、昨夜も一緒だったの?!許せない!メラメラ…で、リストに印がない人は?」

「未だ生きてる人。ちょっと電話してみよっか?もしもし…ロバト・レラズ博士をお願いします。私は、首相官邸の首席アドバイザー、ルイナ」

「博士は、もうおられません。御遺族にお繋ぎしますか?」

「あ、いえ。結構です」


電話を切ったルイナは、スピアと顔を見合わせる。


「ルイナって…いつもこんなお仕事をしてるの?」

「テリィたんから頼まれた時だけ。ところで、ねぇスピア、2週間以内に5人、同僚が亡くなる確率は?」

「7億分の1ね」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「特に基礎疾患を持たない20〜40代の5人の男女が2週間以内に死亡した?しかも、学者センセばかり?」

「YES。テレキ・サング、情報科学者。オルテとチェバは統計学者。政治学者のロバト・レラズ」

「死因も心臓発作に呼吸不全。みんな事故死や薬の過剰摂取を偽装スルのに最適な死因ばかりです」


SATOとの合同捜査なので、ヲタッキーズも詰めている。白いコスプレのムーンライトセレナーダーとメイドが2名だ。


「ラギィ警部、レテル・ロトンの検視は?」

「やり直させるわ、ムーンライトセレナーダー」

「5件の偶然死ナンてあり得ない。一刻も早く確証を得ナイと…マリレ、何か異動の話?」


ヲタッキーズのマリレは、1945年の陥落寸前のベルリンからタイムマシンで脱出した"時間ナヂス"。国防軍だけど。


「ミユリ姉様。実は、南極の地下要塞"アガルタ"派遣の話があって…打診されましたが、辞退するつもりです」

「ホントに?」

「はい」


マリレは、少し複雑な表情だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SATOは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直属の軍事組織で"南秋葉原条約機構"の略。

秘密組織だったジャドーを発展的に改組、引き続きレイカが司令官だが、彼女の月面出張中はマデラ代理が指揮をとる。


マデラは、複数の博士号を持つ学者肌の指揮官だ。


「ルイナ。殺されたレテルが描いた論文ょ。最近は何を研究してたのかしら?」

「知りませんが…実に多くの論文を発表してます、マデラ司令官代理」

「1回、学会のセミナーで会ったわ。独創的な考え方をスル人だった。ホントに残念ょ」


心底残念そうなマデラ。


「ねぇ。彼女は何か脅迫を受けてたンじゃナイかしら。例えば、水利権訴訟で証言して原告の恨みを買ってるとか…あ、そー言えばヤタラとルイナが推してたファンタジーゲームが得意な女子ハッカーは?アキバ工科大学への特別入学を検討してたでしょ?」

「YES。でも…入学しないかもしれません。自信がナイらしくて」

「誰だってそうょ…ルイナ以外は」←

「どーゆー意味ですか?」

「あのね。秋葉原に来るヲタクは普通みんな自信がナイの」

「司令官代理。自信のないヲタクにつける薬を教えてください」

「得意分野で難題を与えるのが1番ね。廃人になるまで夢中になれば不安も感じナイ。彼女の得意分野は?」


ルイナは、長い長い溜め息をつきながら1言。


「スク水と…テリィたん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、捜査本部には続々と情報が集まる。


「ラギィ警部。レテルの部屋に家探しをかけましたが、証拠書類は見つかりませんでした」

「何かあるハズょ。鑑識、現場から何か上がった?」

「レテルの遺品の中に面白いモノがありました」

「面白いモノ?何?」

「スパイの七つ道具みたいな…このペンですけど」


ビニ手の鑑識が万年筆のキャップをクルクル回す。


「ICレコーダーです。6時間ぐらい録音が可能」

「産業スパイだったの?そのペン以外に何かある?」

「鍵とか、アヒル型の人形にも仕掛けがありました」

「アヒル型?私も欲しい!」

「でも、警部。やはりスパイの七つ道具の定番といえば…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナが万世橋(アキバポリス)での捜査会議を会議アプリでモニターしていたら、フラッとスピアが遊びに来る(スク水+ジャージで)。


「ルイナ。5人が死んだ事件、その後どーなったの?」

「やっぱり秘密を知り、口封じのため殺された臭いわ」

「ヤバい事件だね。もう音波銃で撃たれるのは御免だわ」


スピアは、過去に狙撃されたコトがアル。


「あら、スピア?ちょうどよかったわ。貴女、ハッカーだからこーゆーの詳しいでしょ?」


アプリを通じてラギィ警部が話しかける。


「え。警察のお仕事は御免ょ。今、帰るトコロだし」

「警部さえよければ、私としては、スピア氏にも協力を要請したいわ」

「スピア氏?誰?」

「貴女!」


会議アプリのアッチとコッチで同時に指差されるスピアw


「レテル・ロトンの遺品ナンだけど」

「お。流行りのフラッシュメモリだわ。裏蓋をみせて…そう、そこ。そこを開けて…次はUSBケーブルを」

「コ、コレですか!違う?…おい!UFOケーブルって何だ?」


捜査本部で刑事達が大騒ぎの果てにオンラインw

腕時計型フラッシュメモリの内容がSATOに届く←


「うーん何かの統計の生データだわ。でも、私には即座に何かはワカラナイ。スピア、わかる?」

難しそう(タフ)だわ」

「解いて、スピア。貴女だけが頼りょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そのママ、捜査会議は夜にモツレ込む。


「レテルも他の死亡者も、みんな統計分析の専門家だわ。こーゆー人達は、プロジェクトごとに高給で雇われるフリーランスらしいわ」

「彼等を雇うのは、企業や政府機関、選挙陣営などです」

「警部!死んだ5人中3人の接点が見えて来ました!」


捜査本部のモニターに初老の紳士の顔写真。


「エベレ・タトル。職業は…億万長者?」

「ヘッジファンドの経営者で慈善家で、3人は彼の会社で仕事をしていたようです」

「投資家は統計学者を雇いますからね」


ソコへ、白衣の監察医が飛び込む。


「警部。レテルの検視結果が出たわ!」

「何か出た?」

「せっかちな犯人ね。致死量のアルコールと薬物も出たけど…死因は窒息ょ」

「窒息?方法は?」

「肺から綿繊維が見つかった。恐らく枕かタオルで抑えたのね。危うく見落とすトコロだったわ」

「コレで5人のうち1人は他殺確定だわ」

「他の被害者も検視をお願い」

「直ぐに取り掛かるわ」

「5件の連続殺人になるカモ。でも、手がかりはナシか」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜更けにラギィがギャレーに逝くとカップ片手の先客。


「ラギィ。他殺確定は1件だけ?」

「あら。ミクス次長検事?でも、きっと5件は関連してるわ」

「わかってると思うけど、起訴には動機と証人が必要ょ。3人はタトルの会社にいたんだって?」

「どんな人物なの?」

「卑劣なビジネスマンょ。証券取引委員会も法務大臣も起訴に失敗した。その後、有力な証人が2人も消えてる」

「消えてる?」

「正確には1人は富津岬で発見されたけど…」

「タトルが殺したと?」

「疑惑はあるけど確証がナイ」


ラギィは、ミクス次長検事に声をかける。


「タトルから話を聞いてみるけど、一緒に来る?話だけなら殺されナイでしょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


豪邸だ。


神田練塀町に付近の中小ビルとはスケール感が異なる豪邸がそびえ立つけど、その狭い裏庭で薪割りをスル偏屈爺さん…


「私がエベル・タトルだ…離してやれ」


ラギィとミクスを、それぞれ3人がかりで囲んでいた屈強のボディガードが、一斉に1歩引く。だが、去る気配はナイ。


「薪割りは、最高のひつまぶしだ」

「ひつまぶし?」

「あ、間違えた。暇つぶしだ」


偏屈爺さん、明らかに動揺w

慌てて体勢立て直しを図る。


「良い運動だし薪も手に入る。一石二鳥だ。金を払って通うジムではこうはいかない…万世橋が何の御用かな」

「御社の3人の従業員について、お話を伺います」

「ユーネックス何々?」


眼鏡をかけ、ラギィから渡された書類を見る。


「サムチ・ウバスはリサーチャーだ。他の2人は知らん」

「彼等もリサーチャーです」

「お嬢さん。申し訳ないが、全員を覚えてはいないょ」

「3人とも、この2週間で亡くなったのです」


すると、偏屈爺さんは明らかに大袈裟に天を仰ぐ。


「気の毒に!」

「彼等は、どんな業務をしていたのでしょう?」

「わからん。調べさせよう」


書類を振るや、6人のボディガードがまるで餌を投げられた池の鯉のように殺到、手にした1人が意気揚々と持ち去る。


ココでミクス次長検事が1歩前に出る。


「レテル・ロトンを知ってるか?」

「知らない」

「アンタの職業は何ナンだ?」


失礼な物言いに残る5人のボディガードに囲まれるミクスw


「ヘッジファンドの経営をしていた。1年前に引退したが…今はフィクサーしかやってナイ」

「フィクサー?ソレだけでガチで怪しそうw」

「そ、そうか?…何かを引き起こし、何かに手を回すだけナンだが…あ!もちろん、コロナ救済にも寄付している。全ての医療従事者に愛を。ウクライダに平和」

「慈善活動に統計や情報科学の専門家は不要でしょ?ましてや、死人は!ねぇアンタ!裏で何やってんの、そもそも…むぎゅ!」


瞬時に5人のボディガードに押し潰されるミクス次長検事。


「離してやれ…株の研究だ。未だに株で大儲けスル夢を諦めきれんのだ」

「もぉ実現してるだろ!この豪邸を見ろ!」

「金はいくらあっても、十分過ぎるコトはナイのだょ」


そう告げ、再びタトルは薪割りを始めて、会見は終わる。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SATO司令部のラボ。ソファに並んで座るルイナとマデラ。


「で、ルイナ。スピアは捜査に協力的なの?」

「YES。でも、アキバ工科大学の入学には消極的ナンです。せっかくの才能を伸ばすチャンスなのに。どう説得すれば良いのやら…マデラ司令官代理、何かお考えは?」

「科学の頭で考えちゃダメ。こーゆー時は、宣教師になったつもりでね?異教徒を改宗させるワケ」


ソコヘ異教徒スピアがやって来るw


「ルイナ!ちょっと良い?」

「ホラホラ。噂をスレばょ?あ、私を気にせず話を続けて、スピアさん」

「こんにちは、知らない人…さっきのデータ、規則性を探るため項目を抜いて印刷してみた。でも、結局規則はナイんだけど、不思議な特徴が見えてきたの」


際限なく数字が羅列されたペーパーだw

普通の人なら見ただけでウンザリだが…


「素晴らしい着眼点ね!異様に7が多過ぎる!」

「3も多いわ…ねぇ改竄されたレポートって、3と7が多くて1と2が少ないの。知ってた?スピア…さん」

「いいえってか貴女、誰?…私は多分、4が多いカモ」

「でしょ?何の数字か分からなくても、嘘って見抜けるの。じゃ私は仕事に行くわね。出発進行!」


あ、SATO司令部は前身のジャドーから引き継いで、パーツ通りのゲーセン地下に秘匿されている。

その関係で、メンバーはコスプレ店員に偽装してルンだけどマデラはロマンスカーEXの車掌さんだ。


因みに、ルイナは趣味のメイド服。スピアはスク水←


「誰だか知らないけど、とても良い人だね!」

「数学、物理、天文学の博士号を持ってる。彼女は、SATOのマデラ司令官代理ょ」

「マジ?」

「話しやすい人でしょ?…じゃこのデータ、メタデータを扱う時の意味不明な数字を分析するソフトにかけてみるね」「データの正体がワカルかな?」

「レイチが殺された理由までわかっちゃうカモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日の捜査本部。


「タトルって、陰謀論の黒幕役にピッタリだったわ」

「どうして?」

「だって、3人の元従業員の死を伝えても、ホトンド無関心ナンだモノ」


タトルの事情聴取から戻った2人にミユリさんが加わる。


「まぁ。悔やみの言葉もナイの?」

「全くナイのょやーね。で、唯一興味を示したのが…」

「自分自身の話?」

「YES。典型的なA型。行動様式が反社会性を帯びてる」


ソコヘ分析担当から新情報だ。


「警部。死亡した5人の内4人は選挙に関わってました。ソレも高度な投票分析の専門家としてです!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻のSATO司令部のラボ。


「サッカーくじの当選番号を調べてみようょルイナ」

「下がって、スピア!」

「え。」


スピアの鼻先をかすめ、黒板を裏返すw


「例の事件で新情報ょ!」

「え。じゃ変数を変えなきゃ」

「YES。万世橋(アキバポリス)によると、死んだ5人の内4人のリサーチャーが選挙分析に携わってたらしいの」

「ソレは、つまり…世論の動向とか政治献金額を予測スルとか?」

「ズバリ、得票数ね。レテルのデータと実際の開票結果を比べてみない?」

「面白そう!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「おかえりなさいませ…あら、スピア」

「ミユリ姉様、ただいま。テリィたんも。今回はいつまで地球にいるの?もう、姉様とココで同棲しちゃえば?」

「もうしてる。今は、シェアハウスって逝うんだぞ」←

「夫婦で寝室が別々のイメージ?」

「え。あ、うーん」←


僕は、会社初の宇宙発電所長を拝命してるので、休暇で地球に還って来る時以外は軌道上。究極の単身赴任をしているw


「その折角の休暇を、いつもココでミユリ姉様とベッタリ!他の居場所とかプライバシーとか欲しくナイの?」

「え。コレが僕のプライバシーだけど」

「バカは死ななきゃ治らない!」


最後はルイナ。とは逝え、ルイナがココまで飲みに来ると護衛に戦闘ヘリが出撃スル騒ぎになるのでオンライン飲みだw


「ねぇ!レテルのデータは選挙がらみょ。地方と全国の選挙結果を独自のアルゴリズムで比較解析したみたい」

「というコトは…データ狙いの他殺?」

「可能性はアル。姉様、レテルは姉様のメイド仲間だったの?産業スパイとかやってたの?」

「え。まさか…つきあい自体は古いけど。あぁ異次元人絡みで殺人現場を見慣れたせいか、衝撃が薄れるわ。被害者が知り合いなのに自分が嫌になっちゃう」

「同感です、姉様」

「アキバに疲れた腐女子2名かw」


実に的を得た僕の発言に2人は異口同音←


「腐ってません!」


全く疲れてナイらしいw


第3章 影の政府…の影←


翌朝、ルイナが捜査本部の会議にアプリで割り込むw


「ラギィ!タイヘンょ!レテルの解析データと開票結果が一致したわ!」

「何処の選挙の開票結果?」

「先月の"アキバD.A."の市長選!」


"リアルの裂け目"が開き、異次元人との交流が始まったアキバは"秋葉原特別区"となり首長は"市長"と呼ばれる。

ワシントンD.C.に倣った"市長選"は先月行われ、在秋異次元人も含めた選挙戦の結果、ブラヤ市長が選出されている。


「当時、劣勢とされてたブラヤ候補が辛勝したけど、レテルのデータを読むとブラヤの総得票数に操作が加えられた痕跡がアル」

「総得票数の操作?不正があったの?」

「レテル自身が直接操作してたワケじゃナイけど。正確には、彼女は不正操作のためのアルゴリズムを描いていた」


早朝の捜査本部は大騒ぎになる。

ミクス次長検事の興奮した音声。


「エベレ・タトルは、市長選ではブラヤ陣営で最大の献金者だったわ!」

「レテルはブラヤの選挙運動に参加、人口学的な分析を担当しました。先の4人も、それぞれ雇用先はブラヤ陣営と契約しています」

「やっと5人がつながったわ」


ラボからスピアも口を挟む。


「この5人の死が相互に無関係である確率は、地下司令部にいる私達が雷に打たれる確率に等しいわ。ソレも晴天の日にね」

「やはりタトルだわ。ね?ミクス」

「そうね。しかし、今回試験的に導入された電子投票機の5%は、抜き取り監査がされてるハズなの」


捜査本部の刑事が監査結果にアクセス。


「タイヘンだ。電子投票機の予備監査で指摘された矛盾は、最終報告では抹消されていますw」

「監査員の気まぐれ?」

「当時の監査員を探し出して!事情聴取ょ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ストレッチャーに載せられた遺体が搬出されるw


万世橋警察署(アキバP.D.)、重大事故班のラギィ警部ょ。御苦労様」

神田消防(アキバファイア)、救急小隊長レスカです。119番通報があり駆け付けたら…心肺停止してますが、死亡確認のため"外神田ER"に搬出します」

「マンションの風呂場で溺死?いったい誰が気づいて通報したと言うの?」


ラギィ警部は地団駄を踏む。


「コレは事件なの。悪いけど救急は全員出てくれる?」

「了解です。おい、全員外へ出ろ。練塀208、撤収するぞ」

「みなさん、下がってください!立入禁止です!」


ラギィの部下が野次馬を押し戻す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のモニターに死体の顔写真が映る。


「アバン・カスバ。電子投票機の監査員でした」

「証拠はナイけど、恐らく他殺ね」

「秋葉原D.A.市長選で殺人事件が発生とは」


長年タトルを追うミクス次長検事のパトスが溢れ出すw


「秋葉原D.A.の市長は"リアルの裂け目"のアッチとコッチ、合わせて200万人を代表する権力者ょ。予算だって何千億に及ぶコトだってアルわ」

「その利権を狙ってタトルが選挙で不正を?」

「そのようね。新電子投票機の安全性を確認しないと」

「しかし、あらゆる証拠がスゴいスピードで死者と共に次々と消える」

「だから!生きた証人を探すの。"誰か"より先に、何としても探し出さなきゃ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「生存スル証人を見つけて欲しいの!」


ミクス次長検事が吠える。アプリの先にルイナとスピア。


「わかった。組織論で調べてみるわ。組織を数学的に分析してみる。今回、追加する変数は機密性ね」

「ルイナ。その分析で証人の発見は可能なの?」

「うーんブラヤ陣営とタトルの関係者を調べ、不正に必要な人物を炙り出すって感じ?」

「ソレなら万世橋(アキバポリス)でも出来るカモ」


ココでスピアが割り込む。


「でも、私の方が早いわ。コッチに任せて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ではソッチはSATOに任せ万世橋(アキバポリス)は重要人物から事情聴取w


「君達。選挙違反の調査は済んでる。そもそも投票機は、監査済みのモノだけを使うコトになっている」

「ブラヤ市長、万世橋警察署のラギィ警部です。タトル氏との御関係は?」

「竹馬の友」


背広姿がヤタラ立派なブラヤ市長とは、式典直後のホテルのカフェで会う。周囲を屈強な黒服ボディガードが取り囲む。


「近場の友?」

「セリヌンティウスだ!走れメロス」

「殷浩伝かと思いました」


虚しい蘊蓄合戦w


「市長。この女性を御存知で?」

「知らない。美人だが…地下アイドルか?」

「市長選の時に、市長の陣営で働いた後、殺害されました」


ギョッと身を引くブラヤ市長。部下を振り返る。


「彼女には会ったコトもナイ。何ナンだ!私の選挙運動のために殺されたとでも?」

「え。その可能性がアルのですか?」

「まさか。言いがかりだ!次から弁護士を通せ」


立ち上がるブラヤ市長。去り際に…


「横暴なやり方には徹底抗戦だ。警視総監は親友だ。君、名前は?」

「セリヌンティウス」

「何!」


カッと目を見開き、ズカズカ歩き去る市長。

ラギィは、耳に手を当て無線に呼びかける。


「ミクス?」

「聞いてたわ。ラギィ、オヤジ転がしが上手ねクスクス」

「タトルの共犯かしら?」


ミクス次長検事から即答。


「違うわ。肝っ玉が小さ過ぎ」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


続いて新型電子投票機を発明したスタートアップCEO。

コチラは、市長よりも小者なので万世橋(アキバポリス)に呼びつける。


「ドカスCEO。事情聴取に応じて頂き、恐れ入ります。貴方は、御自分の意志で署にお見えになった」

「私の会社では、高度な安全性を誇る電子投票機を納入している。電子投票機は記録も残るし、紙での投票よりも遥かに安全で効率的だ」

「選挙中の投票機の警備体制は?」

「機械は、封印倉庫で厳重に管理され、ハードドライブにもロックがかけられる」

「ハッキング対策は?」

「マシンは、万が一のハッキングを想定し、単体(スタンドアローン)でも機能スルよう設計されてる」

「前回の市長選で異常はなかったと言い切れますか?不正の疑いがアルのですが」

「何があったにせよ、マシンは正常だった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「もしもし?ラギィ?ルイナょ。あのね、得票数の不正をスルには2種類の人が必要だと思うの」

「あら。誰かしら?」

「1人は人口統計学者ね。選挙の統計分析を担当スル人。投票区にも精通してるとbetter」

「そっかー。で、もう1人は?」

「天才的なプログラマー。ハッカーが望ましい」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィは、最後にエベレ・タトルを署に呼びつけてみたら…何と大人しく出頭して来る。ヤメ検の弁護士が一緒だけど。


ミクスが同席スルと何と検察の先輩←


「ミクス君。私の依頼人の不正行為を示す証拠はあるのかね?」

「先輩の依頼人は、目下、重要な捜査対象です」

「私は、ヘッジファンド時代から何度も検察の取調べを受けたが、全て誤解だった」


ラギィは鼻先でフフンと笑う。ミクスと畳み掛ける。


「アンタの株屋時代の話はどーでも良いの。ね?ミクス次長検事」

「検察としては、貴方とブラヤ陣営との関係を徹底的に調べ上げる方針です。あらゆる接触が捜査対象となります」


ヤメ検弁護士が直ちに反論しようとスルのを制してタトル。


「私は、24社とその子会社を所有し、15社の取締役を務めている。秋葉原の4大法律事務所も味方だ。アンタ達がドンな手抜き捜査をしたとしても、かなりの重労働になるだろうな。ま、せいぜい頑張れ」


タトルにウィンクされて、顔面蒼白となるミクス。

弁護士と席を立ち取調室から去るタトルを見送る…


が、彼等の姿が消えるやクスクス笑い出す。


「脅しが大分効いたようょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ほどなく捜査本部にルイナの声。


「該当人物が割れたわ。2人ともアルゴリズムが特定した」


捜査本部のモニターに2枚の顔写真が並ぶ。


「解析チームのリーダー、オステ・パカーとセキュリティ担当のジェン・アリア」

「警部。2人とも先週から行方不明です」

「もう驚かないわょ」


部下の耳打ちにラギィは腕組みして答える。


「レテルのスマホの通話記録を見ると、殺害される前日に、この2人に電話をしてますね」

「警告したんだわ」

「警部!昨日の夜半、パーツ通りの裏でパカーのカードが使われてます。恐らく身を隠して逃走中かと」

「マンションを捨てて車に住んでルンだわ。私も経験がアル」←

「レンタカーを使ってるならすぐ見つかるのに」

「調べてみましょう。カードの使用履歴から居所を推測出来ます。普段は行かないトコロでも割り出せる」


ラギィがモニターを指差す。


「で。コッチの彼女がプログラマー?」

「月曜に戻ると妹に言い残したママ失踪。コチラは電話もカードの使用ナシ」

「慎重なのね」

「既に消されてるからカモ」←


ラギィは、長い長い溜め息をつく。


「わざわざ強調スルのは気が引けるけど、パカーが秋葉原、最後の希望だわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


メイド通りの3本裏通り。


時折通る車に怯えながら、トランクを閉める男。

ブレーキ音に恐れおののき新聞片手に車に乗る。 


「まだニュースにはなってないな…」


その時!


「だ、誰だ?女?」

万世橋警察署(アキバP.D.)です。助けに来ました」

「頼んでない。出てってくれ!」


勝手にドアを開けて乗り込んで来たラギィに狼狽える男w


「レテルから電話があり、警告されましたね。秋葉原D.A.市長選の件で」

「その選挙のせいで、こんな目に遭ってルンだ!」

「貴方の役割は?」

「…激戦が予想される投票区の一覧表づくり」

「何ソレ?大切なのは総得票数でしょ?」

「ソレが…俺の作った一覧に載ってる全ての投票区で、ブラヤが勝った」

「激戦区の全てで勝つ?あり得ない…そうか!接戦なら不正操作が発覚し辛いという読み?」

「恐らくYES。しかも、投票機の監査は確かに入ったが、その監査員は…」

「死んだ。…ねぇ貴方の供述を取らせて」

「嫌だ。アンタらが起訴スルまでは一切協力しない」

「何を恐れているの?私達には、証人保護プログラムがアルわ。今まで何人も証人を保護して来た」

「あのな!連中は、桜田門(けいしちょう)だって、市ヶ谷(ぼうえいしょう)だって、官邸だってハッキングしてルンだぞ!」


パカーは、メガネを外し頭を掻きむしる。


「とにかく!アンタらは裁判まで持ち込め!そうすれば、証言も考える」

「起訴のために証言が要るの!ねぇ黒幕は誰なの?」

「ブラヤは単なるバカだ。タトルだろうな。以上だ!車から降りろ!今すぐ!」

「貴方を保護スルわ」

「俺に安全な場所ナンかナイ!」


絶叫するパカー。


「…また来るわ」

「もう来るな!無駄だ!俺の車から降りろ!」

「…」


やむなく降車するラギィ。唇を噛みスマホを抜く。


「車両の追跡と保護を要請。ナンバーは…」


その直後、車が大爆発!裏通りに赤黒いキノコ雲w


第4章 人類ポ完計画のシナリオ


「警部!警部、大丈夫ですか?」

「まさかロケット弾?全周防御!」

「参考人死亡!」


激しく焔を噴き上げる車の中の人影は動かない。

一斉に拳銃を抜き周囲を警戒するラギィと刑事。


「警部、爆発は車の下からでした。車爆弾です」

「遠隔操作?時限装置?」

「思いつく起爆方法だけで軽く10種類」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のモニターにブレーキングニュースが流れる。


「…九死に一生ょ。タトルの尋問直後にコレとはトホホ。しかも、パカーがコンビニに行ってる間に仕掛けられてるwどうやら私達、先を越されてるわ」

「犯人の手口も、偽装死から明らかな殺人へとアップグレードですw」

「残るはセキュリティ担当のジェン・アリア」


モニター画面の中で、パカーの車がメラメラ萌える。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ジェン・アリアの部屋でラギィの足元にじゃれつく仔犬。


「警部さん。姉の不在時に仔犬を預かってるの。姉の身に何かあったのですか?」

「捜査中です」

「仕事で出張が多い姉ですが、姿を消すなんて考えられナイ」


失踪中のジェン・アリアの妹、アリナ。流行りの紫の髪w


「貴女以外の家族か友人に何か連絡は?」

「多分ナイと思います。いつもは必ず両親に連絡スル姉でしたが」

「最後に話した時のお姉さんの様子は?」

「心ココにあらズって感じでした。まぁソレが統計ヲタクのキャラなのカモ」

「何となくわかります」

「仔犬の世話を頼まれたの。公園への散歩も。私は、快く引き受けたわ。だって、姉は仔犬を子供のように可愛がっていたンだモノ」


仔犬はラギィを見上げて喉を鳴らす。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その仔犬を真夜中の和泉パークで散歩させる妹。

ソレをつけ狙うかのようにフードを被る女の影。


「ジェン・アリナさん?」

「だ、誰?」

「ヲタッキーズのマリレです。安心して…確保しました」


アリナとマリレをキョロキョロ見上げる仔犬。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そのママ仔犬ごと?捜査本部に拉致されるジェン・アリナ。


「姉は、レテルからの電話を受けて、すっかり怖くなってしまったの。以前から何かおかしいと感じてたけど」

「警察に協力してください」

「でも、その後私はどうなるの?」

「恐らくタトルは、とっくに貴女を見つけているでしょう。しかし、我々には証人保護プログラムがあります。どーしても、起訴には証人が必要なのです」

「…ものすごく怖いの」


心底怯えてるアリナにラギィは切り札を切る。


「わかるわ…でも、貴女は同時に怒りも感じてる」

「え。どーしてソレを…YES。姉は統計ヲタク。私は、文系だけど、同じヲタクの血が流れてる。腐女子だって…生きてるの!怒らせたら怖いのょ!」


アリナの肩に手を置くラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃"潜り酒場(スピークイージー)"では…


「動機は絞られるね」

「権力と支配?いや、権力と富かしら」

「お金が全て!権力と金はラブラブの相関関係!」


SATO司令部から流れて来た(スク水のw)スピアを囲み、カウンターの中のメイド服のミユリさんも加わりダベってるw


「でも、こんな世界でも、理想主義者はいると信じたいな」

「テリィたんは甘いのょ…なぜ秋葉原D.A.の市長選が狙われたのかしら」

「いきなり国政だと、手に余るし準備も大変。秘密も守りにくい。ウォーターゲート事件みたいにさ」

「何?何ゲート?…ナノテクみたいに自己増殖性がアルのカモしれナイわ。重ねたグラスにシャンパンを注ぐと下のグラスに次々流れて逝くシャンパンタワーみたいに、1つの供給源から一気に広がるの」


僕は小声でミユリさんに耳打ちスル。


「やれやれ。もう1人、超天才が現れたぞ」

「ソコ!メイドさんと御主人様は少し離れて!つまり、陰謀は単一源から広がるってコトね」

「そうね」

「そうだ。僕もそう思う」←


僕は咳払いスル。


「アキバD.A.の市長は"リアルの裂け目"のアチラとコチラの両方に予算を持つ。さらに、両方合わせた人口は膨大で、不正に成功すれば影響は世界におよぶ。今や、アキバが世界を動かす時代ナンだ」

「ソンな秋葉原の市長をインチキ投票機に選ばせたら、トンでもナイ事になるわ」

「ソレだょ!タトルとか逝うオッサン、きっと、ちょっとした世界征服ヲタクなのカモな。ドンな顔してるの?」


スピアがスマホ画像を見せてくれる。


「あれ?どっかで見た顔だな…うーん誰だっけ?」

「誰でも良いわ。テリィたんみたいなヲタクが秋葉原の大統領になれば良いのに!立候補して!」

「恐らくメタバースの何処かには、ソンなパラレルワールドがアルかもな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「警部!例の電子投票機の製造元はトルポ社です」

「だから?」

「同社は、機械のアップデートも担当しています。使用マザーボードはAKβ48社のモノを使用」

「 AKβ48社の創設者は、起業家のポルプ・レスト氏。彼は昨年、タトルの買収話を断った直後、ボルダリングの事故で死亡してます」

「ソレ、タトルの仕業だわ。現在の会社のオーナーは?」

「結局、タトルの持ち株会社が買収してます」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜遅くまで"潜り酒場(スピークイージー)"で過ごした僕達は、翌朝、とりあえず、パーツ通りのSATO司令部に"出勤"するコトにスル。


「結局、アリアの担当は株分析プログラムで、数値操作はお手のモノ。真面目な彼女は、疑問を感じつつも分析データの改竄を繰り返してたワケね」

「ヒドいな。で、アキバD.A.市長選との関係は?」

「ソレがチャートは、株も投票も数値の羅列で…」


スピアの話に適当に相槌打ちながら、夜明けの神田明神通りをミユリさんと並んで歩いていたら…スッと横に高級車がw


スモークガラスのパワーウィンドウがスルスル下がる。


「みなさん、お元気ですかー」

「タトル?しかも、昭和ジョーク?レトロね」

「あ。思い出した!」


通り過ぎて逝く車のパワーウィンドウが閉まる。

ソレを見送りながら、僕は確信スル。タトルは…


「彼は"人類ポ完委員会"の委員だ」

「何ソレ?みんなでポカンとスル委員会?テリィたんにピッタリね」

「…いいや。有史以来、人類を裏から操って来た"影の政府"だ」


ミユリさんが訝しげに僕を見る。その綺麗な瞳が「なぜ彼が委員とわかるの?」と聞いて来る。僕は答えねばならない。


「僕は…"人類ポ完委員会"の議長ナンだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「スピア!貴女までテリィたんと夜を共に…」


ルイナは怒ってイル。まぁ夜を共に、と逝っても飲んでただけナンだが…ソレもミユリさんのオリジナルカクテル(ノンアルのオリカク)をさw


「アリアは、カリフォルニア大学卒の才媛。怒れるパソコンマニアだ。妹のアリナは同じく怒れる腐女子」

「夜通し3Pの言い訳に全然なってナイ。あのね。アリアのプログラムは、電子投票機のOSに紛れてたと思うの」

「あら。ソレなら話は簡単。彼女が描くコードに似たコードを探せば良いわ。ホラ、コレは全部同じょ?あ。ココも…」


分厚い打ち出しをペラペラとめくりながら、直ちにアリアのソースコードのパターンを鮮やかに読み解いて逝くスピア。


ルイナが圧倒されてるw


「す、すごいじゃナイの…じゃ私はコードを探すアルゴリズムを描くわ」

「スピア。マデラ司令官代理に頼んでSATOの量子コンピューター衛星"シドレ"の使用許可をもらって来いょ。強気で交渉スルんだ」

「OK、テリィたん。"影の政府"から世界を救うタメだと言えば良いのね?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナがSATOのラボから捜査本部に呼びかける。


「ラギィ警部!」

「何?ルイナ…あら。ヲタッキーズもハッカーちゃんもみんなSATOに大集合?ガールズトーク?何か悪い相談でもまとまった?」

「ねぇねぇ!アリアのプログラムだけど、AKβ48社のOSに組み込まれてたコトがわかったの!」

「ホント?!で、そのOSって何?美味しいの?」

「数学的にも証明可能ょ!」

「だから、OSって…ソレに電子投票機が不正機だってコトなの?ソンな不正機が監査を通過スルかしら?監査がザルってコト?」

「警部。電子投票機の仕組みをこう考えて。説明書を読みながら戦車のプラモデルを作るとスルわね。違う戦車を作らせたかったら、説明書を描き変えれば良いわ」

「でも、その場合は説明書が改竄の証拠になって残るわ」

「YES。でも、説明書は変えずに、解釈だけを変えるコトも出来るワケ。例えば、説明書の1番を5番に読み替え、7番を2番に読み替える。ソレだけで、戦車の仕上がりは、初期生産型(プロトタイプ)から最終量産型へと変わる」

「なーるほど」

「同じコトが塗装でも起こるわ。カラーリングのOSに手を加えれば赤が緑に、緑が赤にと自由自在。量産型ザクがシャア専用に早替わり!でも、不正に改造するのはOSの中の言語だけ。コレなら証拠は残らないわ(警察が警部みたいなIT音痴ばかりならw)」

「(あ、何だか今バカにされたカモw)そのOSの操作だけで何でも可能なのね?じゃそのOS改竄をアリア…アリアが無理なら妹のアリナに証言させなきゃ。姉妹が2人共殺される前に」

「おぉ!(思ってたよりw)警部の頭の回転ハヤし」

「当たり前ょ!さぁ彼女を安全な場所(セイフティハウス)へ移送しなきゃ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署の地下ガレージのシャッターが開く。


パトカーがすれ違える広さの斜路を、ミニスカポリスに右と左を警護されたフードを被った女子が地上へと歩いて逝く。

一方シャッター出口の神田明神通り沿いの歩道では、赤いコーンで囲まれたエリアで男達が削岩機で路面を割っている。


削岩機の男は、横目でミニスカポリスを認める。次の瞬間!


「やっちまえ!」


削岩機を放り投げ腰のホルスターから銃口がラッパ型の拳銃を抜く!音波銃だ!工事中の作業員も次々と音波銃を抜く!


「コッチはヲタッキーズよっ!音波銃を捨てて!」

「何?スーパーヒロインだと?サイキック抑制蒸気!」

「食らえ!」


ミニスカポリスのコスプレの下は戦闘用のメイド服!ヲタッキーズのエアリ&マリレだ。そして、フードを被った女は…

ムーンライトセレナーダー!白のヘソ出しセパレート!作業員がM-24型柄付き手榴弾を投げ、一帯が蒸気に包まれるw


「コレでパワーは使えない。パワーさえなきゃスーパーヒロインも単なるコスプレ姐ちゃんだ!畳んじまえ!」

「あーらズイブンね!私達を忘れてナイ?」

万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!動くな!全員、手を上げろ!」


見上げると10F建て万世橋警察署の全ての窓から警官が拳銃を抜き、口々に逮捕とか手を上げろとか叫ぶw

走って逃げようとした男の前に、ラジ館の地下から飛び出したパトカーが歩道に乗り上げて逝く手を阻む!


「あのね!アキバじゃ警察はヲタクの味方ょ!わかった?」


地面に膝を折り両手を頭の後ろにして降伏する作業員。

ラギィ警部が地面に落ちた音波銃を遠くへ蹴り飛ばす。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部は、一気にブラヤ市長の事情聴取へ突き進む。

ヤメ検弁護士を従えた市長は、ミクスとラギィと対峙←


「アリア殺害未遂容疑で異次元人傭兵3人を逮捕したわ」

「彼等を雇ったのは市長の会社。データ改竄もした。タトルと共謀し不正選挙に関与した」

「6件の殺人もね」

「捜査に協力するか、黙って死刑になるか…ふふん。未だ重大性をわかってナイようね」


ミクス次長検事とラギィ警部のツートップにヤイノヤイノやられ、直ちに反論しようとしたヤメ検弁護士を制して市長。


「いや、わかってる」


眼鏡を外し、こめかみを抑え、頭を振る。


「私は重大な罪を犯した」


顔を見合わせるミクスとラギィ。落ちた…のか?


「私は、市長を辞し、捜査に全面協力スルつもりだ」

「タトルの逮捕に?」

「NO。タトル氏は無関係だ」


呆気にとられるミクス。首を振る。


「全て私が計画し、部下に指示した」

「何?」

「タトル氏は、一切関係してない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。苛立つミクス次長検事。


「市長…いや、元市長は自白を撤回しないわ」

「囮に引っかかった傭兵達もタトルは顔も知らないと言い張ってる。恐らく、みんな家族や弱みを握られてるのね」

「自ら殺人罪を被るくらいの?終身刑になるカモしれないのに?」


ラギィは、長い長い溜め息をつく。


「ソレだけタトルは用意周到ってコトね」

「アリアさえ死ねば、少なくとも自分は不起訴(no case)だし」

「さもなくば、自分が罰を受ける」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌朝、タトルがタワマンから出て来て、屈強な黒服ボディガードに囲まれ、お迎えのレトロなセンチュリーに乗り込む…

ソコヘ!サイレンこそ鳴らさないが、赤ランプを回転させた黒SUVが突っ込んで前を遮る!ミクスとラギィが飛び出す!


「ミクス次長検事。ソレにラギィ警部かw秋葉原のイカれたツートップが私に何の用だ?既にリタイアした身なので、面会はアポを入れてくれ」

「不正選挙!陰謀!殺人!」

「予算も人員も足りない中で、容疑者を自白に追い込んだと聞いた。ありがとう、全納税者に代わって礼を逝う」


皮肉にアッサリとキレるミクス。

さすがアキバの瞬間湯沸かし器←


「アンタは嘘をついている!」

「解決済みの事件の捜査を、いつまで続けるつもりだ。不当捜査として訴えるぞ。そうなれば、秋葉原D.A.の議員達も警察に抗議スルだろう。検察&警察への市民の怒りは高まり、君達は孤立スル」

「孤立はしない。いつもアンタが一緒だから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。てっきりヤケ酒大会で大荒れにナルと思っていたら…


「ミクス!ラギィ!タイヘンょ!国営放送のニュースで秋葉原D.A.市長の不正選挙やタトルのコトをやってるわ!」

「え。どーゆーコト?」

「なぜ漏れたの?」


ナゼか処女…じゃなかった、諸嬢の視線が僕に集中w


「ぼ、僕がマスコミに事件をバラすワケがナイだろ?」

「じゃ誰が情報を漏らしたの?」

「私が…学会誌に掲載予定の論文ナンだけど…」


アプリでオンライン飲みのルイナだ。


「私が編集部に送ったゲラを読んだのカモ…」

「ルイナ!」

「待って!調査の詳細を論文にしただけ!」


ソレがマズいw


「ナンてコトしたの!」

「公的記録のみで描いたから問題は無いハズょ。組織論の切り口でタトルとブラヤの関係を考察してみた」←

「国営放送に持ち込み?」

概要(サマリー)をマスコミ各社に送った。今から出版妨害してもムダ。私には、学問の自由がアル。そして、学会誌に載るコトで、タトルは時間とお金を無駄にしたコトになる。同じ手が2度と使えないから」


無邪気なドヤ顔のルイナにgood jobとthumb upの常連。

しかし、全ては人類ポ完委員会のシナリオどおりなのだ←


ピンポン。


メイドバーに呼び鈴はナイけど、ココでスピアが御帰宅。


「おかえりなさいませ、御嬢様…あら、スピア?イエベ(黄色ベース)で逆算コーデとは気合い入ってるけど、国営放送のニュースは見た?」

「はい、ミユリ姉様。見ました!大騒ぎになってる。こんな気持ちになったのは初めてです。何て言うか、スゴい!とても重要な仕事ナンですね!」

「まぁ。今まではどう思ってたの?」

「今回は、方程式を使った悪者退治パワーを見せつけられました。ルイナ、貴女の思惑通りょ。私、アキバ工科大学に入学スルわ!」


御屋敷に大歓声が湧き、握手!拍手!乾杯!


「やれやれ。ミユリさん、また天才が増えそうさ」

「はい。でも、天才とヲタクは、いくら増えても困りませんから」

「ココを占領されるょ?」


カウンターの中のミユリさんは、少し考える。


「確かに…ソレは困りますね、テリィ様」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同じ時刻。マリレがメイド長をやってるノイズバー。


「マリレです。南極総統?…はい、閣下。その件については、良く考えたのですが、小官は辞退致します…ええ。ソレは、わかります…え。総統命令?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


この時、人類を裏から操る"影の政府"が動き出したコトに僕達は気づかない。

ソレに僕達が気づくのは、この後で、さらにいくつかの事件を解決してからだ。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"影の政府"をテーマに、秋葉原特別区の市長選で次々姿を消す科学者達、電子投票機スタートアップCEO、投票機の監査員、初代アキバD.A.市長、影の政府(謎の委員会)メンバー、彼等を追うスーパーヒロイン、敏腕警部、次長検事、超天才と超天才候補のハッカーなどが登場しました。


さらに、天才候補のアキバ工科大学入学の経緯、主人公が議長を務める謎の委員会と"影の政府"との関係などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、昭和通りにマックが復活した秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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