エンディング③ 鳥船 ジパング
あれから、鳥船の番組撮影の中止が、畑中さんを通じて通達された。
迷惑料代わりなのか、涙金程度の報酬は受け取ったが……あれだけ散々な目に遭った後では全く割に合わない。
しかしそんな事よりも、鳥船の気がかりはミカの事であった。
「……つーかミカ、本当に良かったのかよ? アイツらと一緒に逝かなくて。
あの村……もう無くなっちまったけど、お前の故郷だったんだろ?」
『……えっと、そのう……その話なんですけど……』
ミカはもじもじしながら俯き、気恥ずかしそうにしている。幽霊のくせに頬に赤みが差す。柄にもなく、鳥船はごくりと唾をのみ込んだ。
「おい、まさかとは思うが……俺の傍を離れるのがイヤだったから、成仏する絶好のタイミング逃したとか、そーゆーベタな話じゃねーだろーな?」
『……あ、いえ。そういうんじゃなくて』
呆気なく否定され、鳥船は安心したようなガッカリしたような、複雑な気分になった。
『……あの人たち、まるであたしの素性を知ってるような素振りでしたけどぉ……
あたしの方では全く身に覚えがないというか……ぜんぜん知らない人たちでした』
「おいィ!? 何だよソレ! なんかこう……もっとあるだろ!?
キイチやタケル、それにちとせだって、村と何がしかの縁があってやってきてたんだ。俺もひょっとしてミカ繋がりで何かあんのかと……」
『いや~ごめんなさい。話のノリ的にそんなカンジだと、色々繋がっていいストーリーかなぁ、とは思うんですけど。
もしかしたら、ホントに生前知り合いだったのかもしんないですけどぉ。今ここに至っても、まったくちっとも全然記憶が戻らないんです。ひょっとしたら他人の空似とか、そういうパターンなんじゃないかなぁ……』
何とも肩透かしなオチだったが、結局真相は闇の中。
鳥船の肩には疲労感だけが、ずっしりとのしかかる。
『とまあ、そういう訳ですんでぇ……ふつつか者ですが、今後とも宜しくお願いしますねぇ天さん』
「何がよろしくだ! ふつつか者っつーのは謙遜して言うワードだっつーのに、お前のおっちょこちょいっぷりはふつつかとか通り越して、一生の不覚レベルだろォ!?」
『え~ひどい! 今回あたし、ちょっとは役に立ったじゃないですかぁ! あんまりパワハラが過ぎると、あたしショックで首括っちゃいますよ!?』
「おうおう勝手にやれ。幽霊が今更首をくくったぐらいで死んだりしねーのぐらい、分かってんだからなコラ」
傍から見れば、虚空に向かって悪態をついている怪しい中年男という、何とも近寄りがたい絵面。
結局今後も、鳥船の日常は変わらないのだろう。アルバイトで食いつないでは、たまにTVの仕事を受け――心霊現象めいた事態が起きる度に、豆腐メンタルな幽霊が悲鳴を上げる。
『でもあたし、今回の事件でちょっと自信をつけました。今まで怖くて引きこもってましたが、これからは少しはみんなの前に顔を出そうかなって』
「お前幽霊の自覚ある? 是非ともやめてくれなさい」
前言撤回。今後はもっと余計なトラブルが増えそうだ、と――鳥船は深々と嘆息した。




