表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/28

リレー ⑱ LED

 事態は最悪だった。これは現実の出来事なのか?

 巨大な触手を持つ化け物が現れ、女の子――ちとせを飲み込んだ。

 今までのゾンビや心霊現象も奇怪極まりなかったが、今起きている事はそれらも超越し、鳥船の理解の範疇から外れていた。


 為す術がない。鳥船は除霊師ですらない、ただの三流手品師だ。そんな非力な人間ひとりに、一体何ができるというのか。


 マッチョ幽霊たちの計画通りなのだろう。生贄? 時代錯誤もはなはだしい儀式。

 罪もない人間を犠牲にするなど間違っている。心の中ではそう思ったものの……圧倒的な恐怖を前に、鳥船はまったく動けずにいた。


 化け物に異変が起きた。

 生贄というからには、本来であれば清らかな処女でも捧げるべきなのだろう。

 だが今回喰われたちとせは、おおよそ清純とか純粋といった言葉とは無縁の存在。己の性欲に忠実である、という一点においてはまっすぐと呼べなくもないが。


 生贄に相応しくない供物を食したら、一体どうなるのか?

 化け物の悲鳴に似た咆哮が、地底湖全体を震わせる。腐った食物を腹に入れれば、腹痛を生じる。それと似たような事が今回は起こった。


 マッチョ幽霊の阿と吽だけが、この事態を予測していた。

 ただの非処女では、そもそも口に運ぶ事すらされず、怒りを買う。不埒な神使は土地神の逆鱗に触れ罰を受けただろう。

 だが今回は違った。ちとせはただの非処女ではなく、この土地に馴染み深い神使たるタケルの「一部」を体内に取り入れた存在なのだ。

 だからこそ誤魔化せた。数百年に渡って飢え続けた土地神は、もはや餌の質を吟味できるような理性を、持ち合わせてはいなかったのだ。


 体内の異変に気づき、七転八倒の苦痛にのたうち回る土地神。

 人間ですら、ずっと飢えた状態で大量の食事を摂れば、胃痙攣を起こして死に至るという。

 阿吽はほくそ笑んだ。長い年月を生き続けた化け物の事だ、この程度で死にはすまい。だが異物を取り込んだ反動で、ただでさえ弱った力はさらに減じるだろう。あわよくば力づくで息の根を止められるかもしれない。そうなれば晴れて自分たちは自由の身だ。


 身動きの取れない鳥船。倒れたタケル。操られたキイチ。先ほども言ったように、彼らに為す術はなかった。


 が――苦し紛れに暴れ回る土地神の触手は、彼らの想像を遥かに越えて振り下ろされた。

 弱るどころか、力強い一撃。無軌道に見えて、「それ」は明らかに狙いすましたものだった。

 しかもこの地底湖は、本来干渉できないはずの霊体にすら物理的な影響を及ぼす。


 自由と解放を夢見た邪悪、阿と吽。彼らの頭部は、猛り狂った神の洗礼を受け――この世はもちろん、あの世からも消し飛んでしまっていた。

 ある意味、彼ら長年の悲願は今この瞬間、達成されたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ