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盲目



「きょーは天空の孤島にいきます!」


「どこだ?カロ、知ってるか?」


「……はい。確かおとぎ話に出てくる伝説のひとつです。古い神殿がある孤島で、何でもその島は空にあるのだとか」


 なるほど、ラピ〇タか。


「伝説なんかじゃないよ!ペトラ前に行ったもん!」


「へぇ」


 色々とツッコミたいところはあるが、ペトラに関しては何でも有りなのでそこはもう放置。


「ねぇ、翔太。私も連れて行ってもらえないかしら?」


 後ろから声を掛けてきたのはオリヴィア。

 急いで階段を上がってきたのか少し息が切れている。


「悪い、今回はごめん。もう少しオリヴィアが強くなってからだな」


「……私の実力が足りないって言いたいわけ?」


「そうだ」


 オリヴィアが努力してるのは認める。

 彼女の芯の強さも認める。

 けど、ここから先は命に関わる。俺がキッパリと突っぱねて置かなきゃいけない。

 かつて、俺がされたように。


「オリヴィアさん?だっけ?リシアにけーこしてもらいなよ!それで強くなったら一緒に行こ!」


「あの子は私より強いと言いたいんですか?」


 まぁ、光の勇者だしな。

 この反応を見るに、リシアの正体を知らない所か、年下だと思ってるらしい。


「そうだな。オリヴィアよりも強い」


「それは……信じられないわ」


「オリヴィアさん。はっきり言いますが、貴女の実力で敵う方は我が家には一人もいません」


 カロリーヌがそう言い放つと、流石に折れたのかオリヴィアは2歩下がって頭を下げた。


「やはり……素直に認めたくありませんわ。ですがカロリーヌ様が言うのならば、やはり私の実力は足りないのですわね。分かりました。今日はリシアさんに稽古をお願いしてみますわ」


 おい。俺への信頼はゼロか!?



「じゃあ!行こっか!」

 爪を弄っていたペトラはそう言って──


 ジャンプ!



──〇〇〇〇──



 はい。着地です。


 ダンジョンにやって来ました。

 メンバーはペトラさんと翔太さん、それから私の3人です。


「俺、何だかんだでダンジョン入るの初めてなんだよな」


 開幕早々、翔太さんは間の抜けた声で魔法を放ちながらそう言いました。


 さすがは伝説級のダンジョンといったところでしょうか。

 どこを見ても魔物で溢れ返っています。


「危機感知スキルは絶やさないよーにね!」

 

「おう!」

「はい!」


 私の仕事は……正直あまりありません。


 道中に遭遇する魔物はかなり質が高いはずなのですが、それ以上に二人が強過ぎるのです。


 無詠唱では考えられないような威力の魔法を放つペトラさんも、間合いを無視した斬撃を繰り出す翔太さんも、最早人間の領域を越しています。


 一方の私も、人間の中では上位であることは間違いありませんが、所詮は人間です。


 私の武器はリリムさんが作ってくれた毒属性付与の双剣です。少し禍々しいオーラを放ってはいますが、性能は抜群です。ちなみにこのガスに つつまれると インドぞうも 2びょうで たおれる。らしいので、使ってる側も結構緊張します。


「ハッチーは私の背中を守ってください!」


 そして今タイガービーストを滅多刺しにしたのが私の従魔の女王蜂であるハッチーです。私が名付けました。


 翔太さんは女王らしくないと言っていましたが、働き蜂にはちゃんと慕われているようです。


「しょーた!そっちからくるの全部おねがい!」


「OK!【十炎(トモ)】!!!」


 改めて見ると、本当に2人とも化け物です。


「でも、負けたくないと思う自分もいるんですよね……」


 私もステータスだけならば翔太さんに勝っています。

 しかし、あの目を奪うような斬撃も舞のような足取りも、私にはないもの。


 足りないものはわかっているんです。

 わかっているからこそ、遠い。

 

「っ!あれは!!!!……って、そうですよね」


 今目の前に現れたサラマンダーという亜龍種はかつて私のいたルーザス王国で五千人もの死者を出した魔物と同種のものです。


 それを翔太さんは気にも止めず、真っ二つに両断しました。


 本当に馬鹿らしく思えます。

 あの時散っていった命は何だったのでしょうか。



「……ああ、そうでしたか。結局、兵士達(あいつら)の怠慢だったわけですか……」


『いいか?弱さは罪だと思え。そして罰を受けるのはお前が守りたかったモノだ』


 リシアさんは新人が泣き言を言う度にこの言葉を聞かせます。そしてどんな言葉よりも私に刺さる言葉。



『すまなかった。私に力が無いばかりに』


 これは私が国を捨てた日、父が私を抱き締めながら言った言葉です。

 いつだって力強さと自信に満ち溢れていた父が最後の最後には己の弱さを嘆いたのです。


 父は偉人でした。その父が何故私に謝らなければならなかったのか。


 悪いのは……戦争に負けた無能な兵士達です。

 あの方達にもっと力があれば父は国を失わずに済みました。


 彼らが日頃からもっと鍛錬をしていればこんな事にはならなかったはずです。


 翔太さんだって、私が初めて出会った頃はサラマンダーを両断出来るほどの力はありませんでした。

 あれは並々ならぬ努力の賜物。

 特別な才能も、能力も持たない彼が日々の積み重ねだけで届いた極地なのです。

 

 しかし、父が抱える兵士にはそこまでの努力をした人間がたったの一人もいなかった。

 本気で強さを求めた人間は、国を守ろうとした人間は、一人もいなかった。


 無能な兵士達は罪。そして罰を受けたのは父。

 そんな事、絶対に許せません。あってはならない事です。


「返してもらわなければなりませんね……」


 国を守るはずの兵士が使えないというのなら、有能な従魔(味方)を従え、私が戦えばいいのです。


「私の国は私の手で……」

 


 

ブックマークたくさんありがとうございます!

評価もめちゃんこ嬉しいです!!!


今回のテーマは郷土愛?でした。


カロリーヌさん、ちょっとヤバめ( ¯-¯ )


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