主人公とラスボスの出会い
「ねぇ、そこのお姉さん、ちょっとお茶してこうよ」
リシアに声をかけたのは見るからにチャラそうな男。
俺は即座に鑑定眼を開眼させる。
クーモリヤ 人族
称号:ナンパ師
一応ステータスも見るが、はっきり言って雑魚だ。
リシアが殺意を持ったデコピンを繰り出せば、多分首がもげるレベルの貧弱さ。
リシアがやらかす前に助けてやらねぇと、クーモリヤくんが死んじゃう!
どうしてナンパ師の方を庇わないといけないか、そんな自問自答を繰り返しながら2人に近付こうとした時──
「やめないか!」
そのタイミングで、赤い鎧を纏った一人の男が間に割って入った。
ん?誰だ?俺の役を盗ったのは。
聖澤 優斗
称号:火の勇者
名前に聖とか優とか、如何にもって感じ。そしてイケメン。
爽やかな笑顔、そしてイケメン。
オマケに火の勇者だ。戦隊モノじゃレッドなんてゴリゴリのリーダーじゃねぇか。そしてイケメン。
女神様にチートスキルを貰った上に、聖剣にも選ばれてやがる。そしてイケメン。
しかも、多分俺と同い年くらいだ。そしてイケメン。
傍にはびっくりするほど美人な女騎士とお淑やかそうな聖女様を連れてる。そしてイケメン。
なるほど、こいつがこの世界の主人公か。
常々考えてはいたのだ。
この世界は今、誰を中心に回っているのだろうか、と。
きっとどこかに主人公がいて、そいつの為にこの世界は回っているのではないだろうか、と。
リシアの身に訪れた『お決まり』でさえ、彼の為のものなのかもしれない。
「へぇ、そうか、お前だったのか」
いつの間にかクーモリヤくんは逃げていた。
「大丈夫だったかい?」
火の勇者が光の勇者に話し掛ける。
「え?あ、はい」
ん?……あれ、リシアって人見知りだったっけ?
めちゃくちゃ挙動不審なんだけど……。
ものすごい勢いで目が泳ぎ出したかと思えば、ぷるぷる震え出した。
「そっか。良かった。こんな暗い時間に1人では危ないだろう?家まで送るよ」
おい、聖澤だっけ?こいつ頭大丈夫か?まだ昼だぞ?
「いえ、街を散策してるところなので」
「なら、僕たちの家に来るといいよ。今日はもう日も暮れてるし、また明日にした方がいい」
おい、こいつの方が余っ程ナンパ師じゃねぇか。
「でも、私家族と来ているので!それに知らない男の人の家には上がれません」
爽やかな笑顔を見せるイケメンの誘いを断るリシアを見て、少しばかり心がモヤつく。
デートの邪魔されるって、意外とイラつくもんなんだな。
これが恋人同士のデートだったなら尚更だろう。
ただ、どうにもリシアの様子がおかしい。
どこか彼を怯えているような……待て、怯えてる?
そう言えばこいつ、男が苦手なんだった……。
出会ったばっかの時も、そんな事を言っていたし、そもそも黒の方舟が俺以外みんな女性なのも、リシアが男を嫌がっての事だった。
こんな世界でも村の娘がある日突然勇者になれる訳じゃないんだ。そんなこと、俺が1番わかってたはずだ。
彼女だって、勇者である前に一人の少女なのだ。
力があったって、心が勝手に追いつくわけじゃない。
俺だって、狂化スキルに頼らなければ人を殺せないような奴だった。
「ったく、俺は半年間、リシアの何を見て来たんだ……」
ホント、馬鹿な自分が嫌になる。
「別に怖がる必要はないさ。きっと楽しい夜になるよ」
聖澤は紳士的な態度で、乱暴にリシアの腕を掴む。
「痛っ……やめてください」
「…………ぶっ殺す」
「……はっ──────」
身体強化による踏込み。からの右ストレート。
顔面へモロに拳を受けた聖澤は空中で7周程回転した後、嫌な音を立てて地面に落ちた。
俺は勇者に詰め寄ると、胸ぐらを掴み持ち上げる。
「おい勇者。俺の女に何してくれてんの?」
『称号:ラスボスを獲得しました』
ブックマークありがとうございます!!
今日は評価も頂きました!
超ウルトラハッピーです!!!
リシアさんの男嫌いに関しては何回か触れてたはず!です。結構初期の方ですね。
次話もよろしくお願いいたします。




