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語るに落ちる




「とりあえず1番近い町に出発しよう」


 俺たちは今後の方針を立てるにあたって、まずはこの場を離れることを選んだ。

 この場には食料も寝場所もないのだから1番の優先事項だろう。


 ちなみに、リシアには鎧を捨ててもらって俺の持ってきた無地のトレーナーを着てもらっている。


 ペトラには自身の魔法で創造した村人っぽい服装をしてもらった。


 無論、2人が勇者と魔王であることを悟らせないためである。トレーナーはちょっと目立つだろうけどな。


 リシアの聖剣はどうするか迷ったのだけれど、とりあえず俺のリュックに突っ込んだ。


 全部入り切らないせいで少しはみ出てるが聖剣とバレなればいいので、このまま運ぶことにする。

 


「それじゃあ行こっか!」


「れっつらごーーー!」




──〇〇〇〇──



「この世界ってステータスとかってあるのか?」


 道中、暇つぶしがてら、この世界の仕組みについて聞いてみることにした。


 町までテレポートできればいいのだけれど、俺はそのスキルを習得していないため、渋々3人で歩く事になったのだ。


 ちなみに、リシアやペトラが俺を掴んで全力で走るという案もあったのだが、この世界に来たばかりの俺が2人の速度に合わせて動いた場合、風圧に耐えきれず肉塊になるらしい。


 ご都合主義って知らないのか?


 いや、知ってはいるのか。現に俺、この世界の人達と会話出来てるし、何故か文字も日本語だし。


 勇者と魔王が仲間になったし。


「ステータスはあるよ。宇宙人は基本的にステータスは低いけど、スキルの方が結構強かったりする感じかな」


「おぉー! すごいね、しょーた!」


 目をキラキラさせるペトラの視線が痛い。

 俺はその肝心のスキルを貰い損ねたんだよなぁ。

 そのうち覚醒したりしないかな?


 まあそれはいい。早速ステータスを確認するとしよう!


 俺は左手を腰に当て右手を突き出す。


「ステータス」



「……」



「……」



「ステータスオープン!」



「……」



「……」



 あっれー?



「翔太さっきから何してるの?」


「しょーた不思議だねー! すてーたす!」


 ペトラがまるで俺を馬鹿にするかのように同じ動作をする。おい、リシア笑ってんじゃねぇ。


「あのね、翔太。ステータスを見るためには魔法陣と血が必要なの」


 へえー。面倒くさそー。


「今は紙がないから地面に描くけど……」


 リシアは適当に拾った木の棒で小さな陣を書く。

 これは複雑なものでもなくて、誰でも描けるような簡単なものだった。


「ここに血を1滴垂らしてみて」


 俺はこの前姉貴にフォークで刺された傷跡のカサブタを捲る。

 そこから滲み出てきた血を人差し指で拭って、何回か指を振ったところで、落ちた血が波紋のように広がり地面を揺らした。


 ──瞬間、地面が光ったと思うと魔法が変化し、文字が形成されていく。



 おお!ファンタジー!

 俺はステータスを確認する。なるほど。多分弱いわ。



 名前:春野 翔太

 性別:男

 種族:人族

 称号:宇宙人 女神の眷属 視線を潜る者 虎の威を借る者

 

 Lv:1

 HP:21

 MP:0

 攻撃:16

 防御:8

 敏捷:7

 知力:160

 魔力:0

 幸運:42

 固有スキル: なし

 通常スキル:剣術Lv7 料理術Lv2 威嚇耐性Lv8 体術Lv6



「この、固有スキルと通常スキルってのは何が違うんだ?」


「通常スキルは職業レベルを上げたりスキルポイントを支払ったりして得られるスキルで、固有スキルは個人に応じて設置された条件を満たすことで得られるスキルって感じかな」


 うん。よくわからん。


「やっぱ、俺ステータス低いか?」


「いや、そうでもないと思う。普通翔太ぐらいの歳の人は一般人でもレベルが20ぐらいなんだけど、レベルアップで増えるステータス値を引いて逆算していくと、そこまで低くないと思うよ? この世界だと中の下、宇宙人の中だとかなり上の方じゃない?」


「へ、へぇーそうなんだ」


 あんまり嬉しくないし、反応にも困るし、いいとこなしである。


「この、スキルのレベルとかは?」


「え? もうスキル覚えてるの? スキルは最大レベル10で、スキルポイントを注ぎ込むか練習とかでレベルが上がってくの」


 どうやら、他人のステータスは見れてもスキルまでは見れないようになっているらしい。


「じゃあ、俺の剣術Lv7はまあまあ使えるのか?」


「すごいよそれ! Lv7は並大抵の努力じゃたどり着かないもん」


「そうみたいだぞ?俺ってもしかして優秀物件?」


「うん。普通になかなかだと思うよ? ステータスが上がっていけばそのうち騎士団に入れちゃうかもね」


 おお!すげー、のかな? でもなんかやる気出てきたわ。


 昔から親父に稽古を無理やり付けられていたのがここにきて活きてくるとは!


 そう言えば親父「お前が大きくなったとき、必ず役に立つ」って、言ってたもんなぁ。


 親父から直接教わってたし、絶対に大会にも出してくれなかったから自分の強さがどんなもんか知らなかったけど、もしかしたらそこそこいい線いってたんじゃないか?


 全く。親父のヤツ、まるでこのことを予想していたみたいだ。


 まさか、俺が小さい頃からここに来ることは決まってたり?


 ははっ、まさかな! うん……まさかな、そんなことねぇよな、ははは。


「どーしたの?しょーた、顔怖いよ?」


「悪い、なんでもないんだ」


 にしてもこの威嚇耐性って、絶対姉貴のせいでだろ。それしか心当たりねえし。


「ねぇ翔太のその称号見せてみてよ」


「称号? これのことか」


 宇宙人……日本から来た黒髪黒目の人族。この世界に大きな影響を及ぼす。

 付属効果:魅力UP(中)カリスマ性UP(大)


 へぇ、ちょっとした付属効果があるんだ。いいな。

 何かを成し遂げた時とかに勝手に付くらしいし、集めてみるのもいいかもな。


 女神の眷属……女神より使命を授かりし者。

 付属効果:女神との会話が可能になる。


 視線を潜る者……人知れず努力する者に祝福を。

 付属効果:人が見てないところでの能力補正(中)


 虎の威を借る者……弱き者の生きる術は如何に。

 付属効果:敵より強い者が味方にいる時のみ威嚇UP(中)


「翔太、私たちの力を盾にしてえばっても助けてあげないかんね?」


「お、おう」


「ねぇ、ペトラも自分のステータス見てみたい!」


「ん? ペトラも見たことないの?」


「うん! 見てみたい!」


 どうやら魔族にステータスを見る習慣はないようである。魔族は人と違い、強敵を嗅ぎ分ける力が優れているため、わざわざステータスを確認したりなどはしないらしい。



 名前:ペトラ・レミレ

 性別:女

 種族:ハーフヴァンプ

 職業:魔王

 称号:月砕きの魔王 残虐者 潔癖の女王 闇を纏いし者 ……

 

 Lv:6015

 HP:???????

 MP:?????????

 攻撃:???????

 防御:???????

 敏捷:???????

 知力:75

 魔力:?????????

 幸運:82

 固有スキル:????????????????

???????????????????????????????????????????????????????……


 通常スキル:?????????????????

??????????????????????????????????????????????????????????????????????……


「あんまりわかんないね。ちょっと残念」


「うん。とりあえずペトラが強いってのとスキルがいっぱいあるのはわかったよ」


  どうやらレベルが高くても知力と幸運は上がらないらしいな。

 ペトラより知力が高いと知ってちょっと安心した。


「リシアのステータスもこんな感じなのか? ペトラと引き分けるくらいだし」


「なわけないでしょ! 全部負けてる(・・・・・・) に決まってるじゃん!  勇者の称号のおかげで、魔族相手にはバフがかかるだけ。こんなのデタラメ過ぎだもん!」


「まぁ、確かにそうだよな。ねぇ、ついでにリシアのも見せてよ」


「嫌」


「いいじゃん」


「嫌」


「なんでだよ……あっ」


 ……そっか、こいつ多分ペトラより知力のステータスが低いって知られたくないんだ!


  さっき自分でステータスは全部負けてるって言ってたけど……それに気づかない程知力が低いんだ。きっとそうだ。


「なに?  何なの?  その目は! やめて!  そんな目で私を見ないで!  ペトラちゃんも何とか言ってあげてよ!」


「あのね、多分ね、しょーたは気づいちゃったんだと思うよ! リシアの知力がペトラより低いのを必死に隠そうとしてることに。だから、気を利かせてくれてるんだと思う!」


 それを本人に言っちゃダメだろ!!!


「ムキーッ! 顕現せよエクスカリバー!!!」


「馬鹿っ!シャレにならねぇって!」



 ペトラが全てを暴露した時、明らかに口角が上がっていたことを俺は絶対に忘れない。






こんばんは山田たりょうです。

本作品はストックが切れるまでは1日1話を予定しております。


何卒よろしくお願いします!

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