ロイヤルガールズトーク
「義姉様、実は……私レナード様に婚約破棄されてしまいましたわ」
正確には元義理の姉であるシレーナに、オリヴィアはそう零した。
「ええええ!!!そうなの?翔太からは何も聞いてないなけど?」
否、本当は聞いていた。
「彼なりに気を使ってくれたのでしょう。あの男はアホですけど、何かと優しい方でしたわ」
今ここにいるのはオリヴィアとシレーナの他にカロリーヌと理沙である。
4人は森の中にある泉のほとりでサンドウィッチ片手に語らっていた。
「ははーん。あんまり落ち込んでないと思ったらそういう理由だったのね〜」
シレーナはオリヴィアから漂う桃色の匂いに敏感な反応を見せる。
「まるっきり気にしていないと言えば、それは嘘になりますわ。事実、親に顔向けできないまま、春休みは家から出てきてしまいましたから」
「あら、そうなの?てっきり愛しの翔太君に会いに来たのかと思ったけど?」
「ななな、なにを言ってるんですの?そんな事ありませんわ!私はただリーシャさんに挨拶を、と」
シレーナはあまり弟であるレナードについては触れない。
彼女自身もレナードに対して思うところはある。
何せ、もう少しで死ぬところだったのだから。
しかし、そこでシレーナははて、と首を傾げる。
うちにリーシャなんて子いたっけな?と。
「リーシャは私です」
「あれ?貴女理沙さんじゃないの?」
この教会に来た時、理沙は既に理沙と名乗っていた。
しかし、学園にいた頃は転生者であることを伏せてリーシャとして名乗っていたのだ。
故に、今オリヴィアとシレーナの間では彼女の名前の認識に齟齬が発生している。
「あ、実は私転生者なんですよね。少し前まで日本人でした!」
「えええええ!!!」
オリヴィアびっくり。サンドウィッチの中に入っていたトマトの種がぴゅっと飛ぶ。
「失礼しました……」
オリヴィアは恥ずかしそうにハンカチで口許を拭う。
「黙っててすみません……」
「いえ、普通は皆、自分が転生者であることを隠しますわ。むしろ、教えてもらえてよかったくらいですわ」
オリヴィアは少し照れた顔で理沙に微笑みかける。
この顔を少しでも翔太に見せたのなら、翔太のオリヴィアへの評価も上々になるのではないだろうか。
「でもあのバカも勿体ないことしたよねぇ。義妹ちゃんほどの優良物件なかなかないと思うけどな〜」
「いえ、私なんて結局彼の期待にひとつも答えられませんでしたから。それに、私よりも優れた女性がいましたから」
オリヴィアは少し意地の悪い目で理沙を見つめる。
「その説はすみませんでした」
理沙はサンドウィッチを抱えたまま頭を下げる。
「なになにー?何があったわけ?」
「実は、レナード様はここにいる理沙と婚約する為に……」
「うぇっ!?義妹ちゃん、理沙ちゃんに寝取られたの?」
「ねとっ!?その言い方はやめてもらいたいですわね……」
「でも、うちの弟も理沙ちゃんを翔太に寝取られてるし、そんでもって義妹ちゃんは翔太に片恋中。いつの間にそんなドロドロ関係築いてたわけ? お姉さん大好物なんですが!?」
「で、ですから。ショータはそんなんじゃありませんわ!」
「またまた〜、強がっちゃってぇ〜」
顔を赤くするオリヴィアの頬をぷにぷにとつつくシレーナ。さすがのオリヴィアもシレーナ相手に強くは出れない。
「それじゃ、今日は存分に恋バナをしましょうか!」
盛り上がるシレーナ、顔を真っ赤にするオリヴィア、苦笑いする理沙。
カロリーヌは空気だった。
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今回のお話、短くてすみません。
次回、恋話になります。




