制服
「翔太さん……遂に全員分、完成しましたよ……フヒヒ」
「おおお!ありがとう!見せてもらっていい?」
コタツでぬくぬくしていた俺に声を掛けて来たのは魔族のアデルミラという女性だ。
歳は20代半ばで、黒く長いの前髪は目だけでなく、顔のほとんどを覆っている。肌は病的なまでに白く痩せ気味の体型だ。
今はリリムの武具錬成士と対になる防具錬成士の職業に就いてはいるものの、かつてはそこそこ名の知れた呪術師だったらしい。
この少し怖い引き笑いも、長い髪も、恐らくその名残だろう。
「今持ってきますね……フフフッ」
にしても、この話し方、全然なれる気がしねぇ。
「殺しますか?」
「あのな、そういう事、家族相手には絶対言うな。お前、そういう所あるぞ」
「すみません……」
突如現れたかと思えば、尻尾をしおれさせて去って行くクハク。あいつ人を見下す癖がなかなか抜けないんだよな。そりゃ聖獣にとって人間なんてのは小さな存在かもしれないけど、一緒に生きていく以上対等でありたい。
家族に様付けさせてるお前はなんなんだって?知らん。俺は悪くないもん。
クハクと入れ違うようにして戻ってきたアデルミラは魔法袋を左手に持っていた。ちなみに言うと、白ブリーフなのは俺とペトラとリシアだけ。他のみんなのやつはちゃんと高そうな生地のちゃんとした袋である。
「どうぞ……」
俺の真横に座ってきたアデルミラは袋からワンセット制服を取り出す。どうでもいいけど、この人距離感めっちゃ近いんだよね。喋る時とか顔めっちゃ近いの。
ともあれ、制服だ。
見た目は割と派手だった。黒色のジャケットのようなもので、ヨーロッパの軍服を思わせる。貴金属でできているであろう装飾は全てペトラが創造したものらしい。
「というか、素材もペトラさんが狩ってきたものなんですけどね……なんでも、言うことを聞かないバイコーンがいたとか、いないとか……クケケ」
なんかよくわからんけど、俺がいない間にペトラも随分とアグレッシブな行動をしていたらしい。
「これは全員分あるのか?」
「はい。女性陣は多少デザインが違いますが、スカートとズボン、どちらか選べるようにしてありますので……ヒヒッ」
「う、うん。そっか。じゃあ、みんなを集めて着てみよっか。うん。そうしよう。だからさアデルさん、少し顔を離してもらっていいかな?」
鼻の先にアデルミラの前髪が当たる。
そんな距離だ。さすがに顔が見えない相手との間には桃色の雰囲気は生まれない。
「お、おーし、家族会議するぞー!全員集合!」
──〇〇〇〇──
そういえば、俺が学園から帰ってきた時、家族が6人増えていた。全員が獣人族。多分、全員彼女が拾ってきた子だろう。彼女というのは獣人族の子で、15歳のケーラという盗賊の子だ。
同じ境遇の子を見捨てられない、とのことで、しょっちゅう獣人族の新しい家族を拾ってくる。そして、お小遣いは奴隷購入の為に貯金。
盗賊という職業でありながら、正義感に溢れた彼女の行いを偽善と切り捨てるのは余りにも酷だろう。
「よし、全員揃ったな!んじゃあ、家族会議を始める!」
俺は隣に座るアデルミラに目配せをしてから、もう一度みんなの方に向き直る。
「実は、前々からアデルさんに頼んでいた俺たちの制服が完成しました!はい、拍手!」
俺がぱちぱちーと手を鳴らすと、みんなもつられるようにして拍手を始める。
「で、俺の制服がこれ!どう?カッコイイだろ?みんなはスカートとズボン選べるみたいだから、各自、アデルさんから制服を受け取ったら、着替えてまた集合!」
俺は端的にそう伝え、地下一階へと上る。
みんなの着替えが終わったらキノが迎えに来てくれるらしい。昔は誰よりもサボる奴だったのに、今では下の上くらいまで上がった。因みに下の下はカロリーヌ。奴はガチニートだ。
なんて事を考えながら制服に着替えていると、しばらくしてキノが階段を上がってきた。
「あるじー、みんな着替えたみたいですよ」
そう言った彼女もまた、着替えを終えていて、漆黒の軍服に身を包んでいた。赤いネクタイがよく映える。
「キノはスカートにしたのか、似合ってるぞ」
「ありがとうございますー。主も似合ってますよ!」
キノはニコリと微笑むと何故か少し急ぎ足で階段を下っていく。
「サンキュ」
俺はその背中に声を掛けてから、再び階段を降りると、彼女達は全員が綺麗に整列していた。本当に軍隊みたいだ。スカートとズボンの割合は7対3ぐらいだ。
お嬢様組はスカートかな?とも思ったけれど、以外にもシレーナはズボンを選択したようだ。なんでも、パンツが見えないように、だとか。
それを聞いてみると、確かに近接系の攻撃を得意とする職業に就いた子達はズボンが多いかもしれない。
スカートやズボンの丈長さはまちまちで長い子も短い子もいる。そして、全員がニーソだ。大事な事なのでもう一度言う。全員がニーソだ。
先程名前を挙げたケーラという子も、ホットパンツにニーソというかなり味の出るスタイルだ。いいセンスしてるぜ、まったく。
「よし、では制服も決まった事だし、そろそろ俺たち家族を表す名前でも考えようか」
「名前……ですか?」
俺の宣言に、何人かの子達が首を傾げる。
「なぁムム。俺たちが巷でなんと呼ばれてるか言ってくれ」
「……ドナドナ団……です」
弱々しいその声に、何人かの子達は「あ〜」と納得したような声をあげる。理沙はぷぷっと笑いを堪えきれず吹き出していた。
「そうだ。その通りだ。誘拐犯として活動しているうちはそれでもいい。けどさ、せめて昼のうちはもっと別の名で呼ばれてもよくないか?」
「それは、一理あります!私も大賛成です!」
「あたしも!」
「ウチも!」
よし、みんなも結構乗り気みたいだな。
ならばカッコイイ名前を付けたいところだ。
「どんな名前がいい?みんな意見を挙げてくれ」
俺の指示のもと、皆が頭を捻り出す。
俺も一緒に考えはするが、こういうのって凄い苦手なんだよな。昔からそうだ。
「ご主人様!不死鳥のきshi──」
「ダメだ」
ネギまが一生懸命考えてくれた名前も、大人の都合で切り捨てる。すまんな。その光景を理沙だけが、ぷぷっと笑っている。
「コケェ……」
「お兄ちゃん!ミリィはね、クロって入れたい!」
「クロ?なんでだ?」
「お兄ちゃんの髪の毛とお目目が黒だから!」
はい、即採用ですー。ほんと、愛いやっちゃの〜。
「分かった!採用しよう。それからミリィ、後で一緒におやつを食べような」
「うんっ」
ほんと、ミリィは最高に可愛いぜ!
「リシアとペトラは何かあるか?」
俺はミリィの頭を撫でながら2人に視線を向ける。
「私はこういうの苦手だからパスかな」
「ペトラはお肉がいい!」
「そうか。そうだな。うん」
初期メンバーとして2人の意見は聞きたかったんだけどな。
なんだよ、肉って。お前は3歳児か!
……3歳児だったわ。
「他に意見がある人〜?」
「…………」
やっぱりこういうのって難しいよな。特に最近来た子なんかは意見出しづらいだろうし。
「舟……方舟は如何でしょうか?」
そう提案して来たのは最年長エルフのアンジーさん。
「方舟か……なんか由来でもあるの?アンジーさん」
「はい。ここにいる者のペトラ様やリシア様を含め、ほとんどの人が主様に救われた身です。ですので、 救済を表す方舟が良いかと」
「ありがとう。いいセンスしてる。さすがみんなのお姉さんだね!」
「あ、主様!?あまりからかわないで下さい!」
「ごめんごめん」
俺はそんな大層な人間じゃない。
ただ、利用しやすい人間を集めているだけのこと。
俺の行いが誰かの救いになったとしても、それは結果論であり、俺の意思じゃない。
『いいじゃない。そんな悪ぶらなくても。貴方のしたいようにすればいいの』
そうですね。分かりました。
「よし、じゃあこれからは──」
「これからは黒の方舟と名乗ることにしましょう!」
「…………」
言われちゃったよ、エレナさんや。それ、俺のセリフ。
「今エレナが言った通りだ。これから俺たちは黒の方舟を名乗る。いいな?」
「「「はいっ!!!」」」
「よし、じゃあパーティーの準備だ!リリムと今日の料理当番は地下一階へ集合!後のみんなは片付け等の準備を!」
「「「はいっ!!!」」」
こうして、俺たちの一歩目が幕を開ける。
ブックマーク、評価いつもありがとうございます!!!
めきめきとポイントも上がって来ていて、作者も大興奮中です!
今回のお話には既に名前の判明している黒の方舟のメンバー全員が出てきたはずです!
(カロリーヌさんは名前だけ)
次回から本格的にお話が展開していきます。
もしかしたら、毎日更新ではなくなるかもしれませんが、最低でも週に3回は更新します!
これからもよろしくお願いします!




