表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/329

お前が悪い

リーシャ視点のお話です


 レナード様はオリヴィア様に話す隙を与えず、唯ひたすら彼女を責め立てる。


 ほとんど噛み合っていないレナード様とオリヴィア様の会話はいつしか一方的な罵倒へと変わっていき──



「俺はオリヴィア・カサンドル・ヴァシュラールとの婚約を破棄する!」


「──っ!」


 私はオリヴィア様が驚きに目を見開く様をレナード様の隣で見ていた。


「リーシャは君よりも強く。そして優しい」


「……」


 私はどんな顔をオリヴィア様に向ければいいのだろう。

 自然と顔が俯く。


 私がオリヴィア様より優しい?


 ふざけるのも大概にして欲しい。貴方がオリヴィア様の何を知っているというのだ。私の何を知っているというのだ。


 私はただ保身に走るだけの臆病者だというのに。


──〇〇〇〇──


 この場において、まず私という存在について、いくつか開示しようと思う。


 まず、私の本当の名前はリーシャではなく理沙だ。年齢も16歳ではなく本当は14歳。いわゆる転生者だ。


 元々はこんなに可愛らしい顔もしていなかったし、こんな可愛らしいフリフリなスカートも似合うようなタイプじゃなかった。


 私は登校中にトラックに轢かれて、気づいた時にはこの学園のリーシャという女性に転生していたのだ。


 いや、そう言えばここに来る前に同性の私ですら見蕩れるほどの美しい女性から特別な力を貰ったのだったか。


 それから伝言で『汚いカバがお似合いの王子様が迎えに来てくれるまでは主人公らしい振る舞いを……』と言われたのだ。


 どうやら私は白馬の王子様には助けて貰えないらしい。


 主人公らしい振る舞いを、の意味はすぐにわかった。

 多分乙女ゲームの主人公だろう。

 お姉ちゃんに借りた事があるので大体はわかる。


 私の身分は平民で、他の平民が1人もいないことから、状況もすぐに察せた。


 ここは乙女ゲームの世界。

 私は平民でメインヒロイン。

 ベタ中のベタ。


 私の役割はレナード様と結ばれる事だ。

 やたらとグイグイくるこの王子と私が結ばれることで、多分元の世界に戻れるのだろう。そう信じて行動していた。



 そして今──目の前で断罪イベントが行われている。


 静まり返るホールの中で主役は3人

 レナード様、オリヴィア様そして私。


 まさか、レナード様に婚約者がいたなんて……。

 余りにも予想外だった。


 というか、婚約者がいた上で、こんなにも私にグイグイ来ていたのかと思うと虫唾が走る。


 私だって必死だ。全寮制で、時々しか外に出られない閉鎖された空間で、誰よりも劣った私が生き残るには彼に媚びるように振る舞うしかなかった。


 けど、これはあまりにも……


 私はオリヴィア様を誰よりも慕っていた。

 いつも明確に先を見通せていて、指揮を執るのも上手い。高い身分でありながら、私とも会話してくれる。


 部活のキャプテンでありながら、後輩との関係に四苦八苦していた私からすれば、まさに理想の人。


 そして、私を友達と言ってくれた唯一の人だった。


 その憧れが今、私のせいでレナード様から罵倒を浴びせられている。


 取り巻きからも嘲笑う声が聞こえる。



「あの、レナード様……」


「君は心配しなくていい」


 レナード様は私の頭を撫でると笑みを零した。


 こいつは何を言ってるんだ?

 お前のせいだろうが。


 ふと、視線の先に1人だけおかしな行動をする男を発見する。みんながこの光景に目を奪われている中、たった1人食事に手を付け続ける男……。


 あの人は!


 赤髪に黒目。

 しかし、あの顔立ち!間違いない、日本人だ。

 隠しても隠し切れようのないあの引き締まらないニヤニヤ顔、正しくカバに乗った王子に相応しい!


 きっとあの人がオリヴィア様を救ってくれるに違いない。

 私が乙女ゲームの正式な主人公だというのなら、彼は間違いなく悪役令嬢を救うためのもう1つの物語の主人公に違いない。


 ──そう思っていた。


 今か今かと彼の出るタイミングを伺って──


 結局彼は動くことなく、オリヴィア様が部屋を飛び出すことでこのイベントは終了した。


「行こうか、リーシャ。これで俺と君を阻むものは何も無い。正式な婚約はまた後日ということにしよう」


「……」


 あの男──許さない。


 そしてお前もだ、レナード。

 私の友達を傷付けたお前も許さない。

 わざわざ人前で見せびらかすように婚約破棄するようなクズに、女がなびくと思うなよ。



 けれど、それでも一番許せないのは最後の最後まで動けなかった自分自身だ。


 情けない。


 保身に走った。


 恩を仇で返した。



 こうしてオリヴィア様が咎められているのも全部私のせいだ。なのに……謝ることも、傷付く彼女を支えることもできない。


『人任せにするのは良くないわ。けれど、人を頼るのは悪いことじゃない』


 不意に届く美しい声。

 久しく聞いていなかったが、忘れることのない声。


『貴方も(翔太)もよく頑張ってる。それを咎めちゃダメよ。例え自分自身であっても』


 けれど、事実オリヴィア様は私のせいで──


『だから、そんな時は誰かを頼りましょう。貴女の願いを聞かせて?』


 女神様の声は優しく包む母のようで、自然と気持ちが安らいでいく。


「はい。私の願いは──」



ブックマーク登録ありがとうございます!


感想やメッセージもよければ書き込んでくれると嬉しいです!(((必死



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ