表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/329

2時間かけて得たものは



 夜が来た。


「ペトラ、そろそろ行くか」


「うん!行こう!」


 俺はいつものように魔法袋に入って転移する。


 日本人が入り浸っていると言えど、この世界の夜は暗い。

 冬の夜は空気も澄み切ってはいるが、それでもペトラが砕いた月の明かりが地を照らすことはほとんどない。


 街の方は魔力灯という街灯のお陰で多少明るくはなっているがちょっと路地裏にでも入ればそこは漆黒。何も見えない闇の世界だ。


 ()()()()


 しかし今だけは例外。流石は敗戦国と言うべきだろう。

 リールドネス連邦国の兵士らしき人達が明かりを灯しながらあっちこっちうろちょろしている。


「なぁ、ここ王都だぞ?こんな深くまで兵士が入り込んでてルーザス王国は大丈夫なのか?」


「多分ダメだと思うよ? リールドネス連邦国の主要人物のうちの一人に魔族の四天王がいるんだけど、その子かなり容赦ない子だったもん。特にこの宗教国家みたいにきのこを神聖視してる人達にはね。多分この国のほとんどの人達が箱詰めにされて奴隷として連邦国に運ばれることになると思う。()()()()()は虐殺かな」


 俺からしたら、きのこでもたけのこでもどっちでもいいって思うけれど、この世界の人達は至って大真面目だ。

 きのこを神聖視する程に。

 月初めに必ずきのこを食す程に。

 きのこの絵を踏めない程に。


 きのこで踏み絵ってシュールだよな。足コ……


「しょーた見て!」


「あー。なるほどなぁ」


 たった今200メートル程先で生命反応がひとつ消えた。

誰かが死んだと言うことだろう。

 俺は千里眼を持っていないのでその様子までは見えなかったがペトラには多分見えていた。


「きのこ派かたけのこ派ってそんなに大事なのか?」


「わかんない。ペトラはどっちも食べたことない」


 お前、一応たけのこ派のトップだろうに……


 ちなみに我が家にはたけのこ派の子も何人かいる。

 1人だけ獣人族の子がいるけれど、後はみんな魔族だ。


「まぁ、それだけ酷い扱いになるなら好都合だ。こっちの誘いにも乗ってき安くなるだろうし」


「そだね!誘拐はお誘いが肝心だもんね」


「そうだ。今日はあくまで優秀な人材の確保だ。厳選して集めよう」


 とは言っても、いつも俺の方が多く確保しちゃうんだよな。ペトラの採点は結構厳しい。

 なんてったってリシアと互角の戦力をもったアイスエレファントが漏れるくらいなんだから。


 俺は鑑定眼を起動して街を歩く。



「……」



「見つからないね」


 ペトラは疲れたように両腕をぶらんぶらんと脱力させ、前屈みになりながらそう零した。


 結局、2時間程歩いたがめぼしい人材は見つからなかったのだ。

 時々ガラスの割れる音とか女の人の悲鳴とかが聞こえてくるから居心地もかなり悪い。


 というかこの状況で外をほっつき歩いているのなんてリールドネス連邦国の兵士ぐらいのものだ。


 その中には多少強そうな人はいても将来有望とは言い難い。強い人は長年の訓練を積んでいるが、若さもまた俺の求めるものだ。


 仮に神を降すと仮定して、それが何年後になるかわからない。

 その時になってからもう歳で動けません。では困る。


 それにリシアには男を連れてくることを禁止されているのでそもそも論だ。

 彼女は男を毛嫌いしている。もしかしたら、俺と一緒にいることも、彼女にとってはストレスなのかもしれない。


 俺自身は嫌われてはいないと信じたいが、やはり根本的なところで男に対する苦手意識はあるようで、家に連れ帰る人材は女性である条件が与えられている。



「今日はもう帰るか?」


 ペトラも唇を尖らせているので、そろそろ諦めて家に帰ろうとした時、ガサガサと路地裏から音がした。


 俺は瞬時に剣を抜き臨戦態勢に入る。


 ペトラが魔法で生成した明かりを灯し、路地を照らすとそこにいたのは──



「わふぅん」



 汚い野良犬だった。






ブックマークありがとうございます!

ついに二桁いきました!

嬉しい!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ