表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/329

魔王、拉致してくる




 俺が教会から出るとそこで待っていたのはリシアだけだった。


「随分と長いお祈りだったね? 30分も何を話してたの?」


「あぁ、その事なんだけど……あれ?ペトラとネギまは?」


「あの子たちは翔太が遅いからって言って狩りに出かけたの。ネギまちゃんもいるしレベル上がってるんじゃない?」


 んー。どうなんだろ。あのレベルアップの通知音、音量でかいからマナーモードにしちゃったし。


「いつ頃帰ってくるのかな?」


「さあ? なんならネギまちゃんに念話で帰ってくるように指示でも出したら?」


 テイマーって遠距離念話もできるのか! 優秀だな!

 

 俺はネギまとの繋がりを深く意識して声を飛ばす。


『帰ってこーい』


 果たして届いているのか? そんな事を思っているとしばらくしてペトラとネギまが空から降ってきた。


 ペトラって空飛べるんだ! あ ていうかコウモリっぽい羽が生えてるのめちゃくちゃかっこいい。

 こういうの見ちゃうと人族にも何かしら特徴があればよかったのにって思うよね。


「それで? ペトラが担いでるそれはなに?」


「九尾! 強そうだったからテイムした方がいい!」


 無邪気に笑うペトラ。その肩で悲しそうな瞳をする九尾。

 九尾は9つの尻尾を白銀の毛並ごと萎れさせてぐったりしている。


「ご主人様! 私は反対です! こんな女狐を仲間に入れる必要はございません! 今すぐ経験値にしてしまいましょう!」


 何故か猛反対してるネギま。


「この九尾? って魔物は火属性でそれもかなり強い……多分私一人じゃ勝てないほどね」


 リシアが勝てないほど? それってかなり強いんじゃ?

 確かに仲間にできれば心強いな!

 是非ともテイムしたいんだけど……ネギまはすごく嫌そうだ。

 同じ火属性同士気が合うと思うんだけどな。


「あの、でも、その……」


 やはり、どうしても煮え切らないネギま。

 何がそんなに気に食わないのだろう。


 俺は寂しそうに俯くネギまを観察する。


 ……あっ、そうか! なるほど、火属性同士だ。


 俺はあたふたしているネギまに近付いて両手を広げる。

 するとピタリと動きを止めたネギまが頭を下げてきたので俺はその頭に抱き付きながらよしよしと撫でるのだった。





──〇〇〇〇──




「九尾の方がネギまより強いみたいだね」


 ご主人様は私の顔を撫でながらそう言います。

 人という生物は体毛が薄いのでこうやって触れ合うだけで温もりを感じられるのだとか。

 今ばかりは自慢の毛も煩わしく感じます。


「……はい」


「属性、どっちも火だよね」


「…………はい」


「俺は九尾をテイムしたいと思ってる」


「……っ! ……はぃ。ご主人様がそう仰るのなら」


 女狐は私と同じ火属性で、私よりも遥かに強い存在です。

 ご主人様は気付いていないようですが、九尾は厳密に言うと魔物ではありません。


 聖獣と呼ばれる上位次元の存在で、私たちが雑草なら九尾は世界樹とも言えるでしょう。


 この女狐はまだ生まれて間もなく、20年くらいでしょうか?

 まだ子供ではありますがポテンシャルは私を大きく上回ります。


 そんな最強種である九尾をテイムするということはつまり私の価値がなくなるということ。

 たった数十分で私はお役御免とうわけです。


「ネギまはもしかして勘違いしてるんじゃないかな?」


「……勘違いですか?」


 勘違いなんてしてません。私はしっかり身の程を弁えてます。私はご主人様に相応しくない。それだけのことです。


「もしかしてネギまは俺に捨てられるとか思ってるんじゃないだろうな?」


 コケ……? それは当然だろう。属性が同じで更には大幅に劣る魔物を従えることに価値なんてないのだから。


「そんなわけないだろ? これから先、もしネギまより強い魔物をテイムすることになったって、どんなにたくさんの魔物を従えることになったって、僕の相棒第1号はネギまなんだから」


「……?」


「それに俺が求めてるのは強さだけじゃない。ネギまにはネギまにしかできないことがあるだろ?」


「私にしかできないこと……」


 果たしてそんな事あるだろうか。悔しいけれど、この女狐に勝てる要素がひとつも見つからない。


「例えばだけどさ、ネギま。九尾じゃ俺を背に乗せて空のお散歩にいけないだろ?」


「コケっ……!?」


 そうだ。そうだ。そうだ、そうだ、そうだ!

 この女狐は空を飛べない。背に乗せて飛べるのは私だけだ!

 これは私にしかできない事だ!



「ねぇ、翔太? 従魔とラブコメするのはまた後にして。この狐そろそろ死にそうだよ?」



 そ、そんな。ラブコメなんて……。

 そもそも私たちは主人と使い魔で、それ以前に人と魔物なのです。

 種族を越えた愛?



 そんなの……。



 あり寄りのありです!!!!



「許して……くれるか?」


「当然です。ご主人様がそこまで言ってくれるのなら私に文句なんてあるはずがありません」


「ありがとう」


 こうしてご主人様は九尾をテイムなさりました。

 私でも嫉妬するような白銀の毛並みを持つ2匹目の眷属に授けられた名はクハク。

 今日から私の後輩です。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ