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女神様の神託




「じゃあちょっと待っててくれ。お祈りしてくるから」


 俺はみんなにそう伝えると教会の中へと足を踏み入れた。


「痛っ!」


 どうやら床が抜けたようだ。


 かなりボロいな。


 老朽化してるわけではないれど、手入れのされていない家が、天井に穴の空いた状態で雨雪に曝されてればこうなるのも仕方ないか。


「気をつけなよ?」


「おう!」


 俺はリシアの声を背に教会の中へと入って行く。

 ちょうど誰も見えなくなったところで、俺は蹲ってスネをさすった。


 何故俺があそこで平然を装っていたのかといえば、ネギまの主としての矜恃である。

 テイマーとして眷属に恥ずかしいところを見せまいとするプロ意識だ。



「やべぇ、バカいてぇ」


 にしても痛い。スネはあかんよ、スネは。


 俺は一通りスネをさすってから立ち上がった。


 教会の中にあったのは先程見たよりもひと回りほど大きな女神像だった。

 こちらは翼が片方折れてしまっていたが、その美しさだけは折れようもないようだった。


 俺はそこに跪き祈りを捧げる──


『何? あなたもう寂しくなっちゃったわけ? 私も昨夜辺りに声掛けてあげようと思ってたんだけど私ってほら女神だし? 忙しいし? まぁ、生憎今はちょーっとだけ時間割いてあげられるからお話してあげてもいいって言うか?』



 聞く方が疲れる長ゼリフ。

 なんでいちいち語尾が疑問形なんだ?

 

 それに何故かやたらと馴れ馴れしい。

 クラスにこんな感じのギャルとかいたな。9ヶ月前の話だけど。


「女神様、俺はただ挨拶に来ただけなので、もう失礼しますね」


『は? え、あ、ち、ちょっと待ちなさいよ! 何よ! 少しぐらい付き合ってくれてもいいじゃない! あなた昨日すごい幸せそうな寝顔してたから夢の邪魔しちゃいけないかと思って声掛けられなかったのよ? 私を散々待たせておいてその仕打ちは酷いんじゃないかしら?』


 要するにどういうことだ? ここで少し話していけばいいってことなのか?

 話が長すぎてよくわかんないや。


「女神様はお仕事大丈夫なんですか?」


『別に今は平気よ!』


 ここで「あなたの仕事は日本人の案内だけで基本暇人でしょう」なんてツッコミを入れたりしない。

 俺は空気を読める男だ。

 姉さんに殴られてきたことがちゃんと今の生活に活きている。


「そう言えば女神様との会話って普段もできるんですか?」


『なに? あなた私ともっとお話したいの? 本当に寂しがり屋さんなのね。うふふふふ。』


「質問の答えになってません」


『あら、ゴメンなさいね。ついはしゃいじゃって……それで、質問の答えだけど、回答はノーね』


 へぇ、どこでもできるってわけじゃないんだ。


『基本的に女神と人が交流できるのは教会だけって決まってるの。昔は信者が多かったから朝から晩までたくさんの聖女と会話をしたわね。今は長く続いた戦争のせいで神を崇拝する人達も減ったし、私と会話できるほどの崇拝者はあなただけね』


 んー。

 俺は別にこの女神様を崇拝してるわけではないんだけどな。


『本来は夢に出ていくのもいけないことなんだから! 私と話したければ教会に来なきゃいけないんだからね? これまでのはサービスよ、サービス! ゼーベストがどこで聞いてるかわかんないし──』


 最後の一文に俺の耳は過剰なほどの反応を見せる。


 恐らくだが、ゼーベスト、そいつが俺の敵で女神様を監禁してる輩と見て間違いないな。

 彼女はその名をうっかり零したことには気づいていないようだ。


「では、女神様。仲間を待たせてるのでそろそろ行きますね」


 目標が明確になれば俺も遊んでばっかりという訳にはいかないだろう。


『待ちなさい! あなたは今日からここに住むの!』


「え?」


『こーこーに! すーむーのー!』


 神より授かりし神託はまさかのボロ教会への移住だった。






ブックマーク件数また増えてました!

ありがとうございます!


これからも頑張っていきますので、今年もよろしくお願いします!

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