意思疎通できる相手の名付けって結構緊張する
「よろしくお願いします。ご主人様」
「うぉ、喋った!」
「それはテイマーのスキルね。使い魔との意思疎通ができるようになるの。私たちにはコケコケ言ってるようにしか聴こえないけどね」
へぇ、便利だなぁ。
「とりあえず、ペトラ。この子の治療してあげてくれないか?」
赤いはずの顔がみるみるうちに青くなっていく。このままじゃ死んでしまうかもしれない。
「うん。わかった!【ヒール】」
ペトラが呪文を唱えると段々と怪我がなくなっていく。流石は魔王。なんでもできるなぁ。
「うわぁ、詠唱なしでこの回復量なのね。ちょっと引くわ」
「そう言えば詠唱ってなんのためにするんだ? 無詠唱の方が便利だろ?」
「主に威力や効果を上げるためね。ペトラちゃんレベルになると無詠唱でもポンポン高威力の魔法を撃てるの。さっき詠唱したのは、むしろ力を抑えるためね」
なるほど、詠唱のある世界観か……俺、詠唱は苦手なんだよな。何年か前の自分に戻らなきゃいけないみたいで少し恥ずかしい。
さっきのペトラの詠唱だって、天だとか闇だとか、魂だとかさぁ。
全身がむず痒くなるんだよな。
「翔太も魔法使いを目指すなら詠唱は考えといた方がいいよ」
「え、あれって自分で考えるの?」
「もちろん。詠唱の内容が魔法使いの腕に直接関係するといっても過言じゃないからね」
それって、つまり中二病のお披露目大会ってことだよな?
自分で考えた詠唱を他人に聞かせるとか、まじで考えられん。
恥ずかしくて死んじまうわ。
「魔法使いは14歳頃に覚醒する人が多くて、あまりに強力過ぎる魔法使いは眼帯や包帯で溢れ出す魔力を抑える人もいるみたい」
「ぐはっ……」
「しょーた大丈夫?」
「ダメかもしれん」
「心配しなくてもいいと思う。確かに宇宙人には強力な魔法使いは少ないけれど、なんとなく翔太ならいける気がするの!」
俺はサムズアップするリシアをジト目で見つめる。
俺が心配してるのはそんなことじゃない。
そりゃ、日本人に魔法使いはいないだろうよ。いや、まあ特殊な条件下で30歳を越すと魔法使いになるなんて話もあるけどさ。
俺たち日本人にとっては魔法使いは強力であればあるほど、社会的には弱者だからな。
もういい。魔法のことは後回しだ。
「ニワトリ、怪我はもう大丈夫か? ごめんな」
「いえ、いきなり襲いかかったのは私の方ですから、こちらこそすみませんでした」
そう言ってぺこりと頭を下げるニワトリ。
ああ、なんだろう。久しぶりに普通の会話をしたような気がする。
普通じゃないことがあり過ぎて普通がとても心地いい。
まあ、会話してる相手がニワトリって時点で普通ではないんだけどね。
「ねぇ、ペトラを仲間はずれにしないで。ペトラもお話したい」
「ごめん、ごめん。でもペトラじゃ何言ってるのかわかんないだろ?」
「おお! 確かにそうかもしれない! ニワトリさんお名前はなんて言うの?」
「私に名前はございません」
「名前はないって」
「あれ? そうなんだ。じゃあ、しょーたが付けてあげなよ」
「え? 俺?」
「うん。きっと喜ぶよ!」
俺は確認の意を込めてニワトリの方を見る。
「ご主人様に名を頂けるのならこれ以上にない幸せにございます」
なんかこいつテイムされた瞬間従順過ぎないか?
テイムには洗脳みたいな効果でもあるのだろうか。
ちょっとやだな。
それにしても名前か……ニワトリにつける名前って言われても難しいよな。
俺は参考がてらにニワトリの特徴を確認する。
見た目は白くて、顔は緩いイラストみたいな可愛さで、でかい。鉤爪はするどくて、翼からは炎を撒く、か。
んー、手羽先じゃあ、可哀想だよなあ。特徴にはあってるけど、少し残酷な気もする。
てなるとつくねとか? 燃える鳥だから焼き鳥。そっからの派生でつくねだ。我ながらいいセンスではないか?
あー、いや、でも俺、
「ネギまの方が好きなんだよなぁ」
「こ、コケー」
ん?なんだ?
「ご主人様が好きだとおっしゃるなら、私はネギまと名乗ることにします」
おっと、どうやら声にでてたみたいだ。
「本当にネギまでいいのか?」
リシアはこいつ有り得ねぇ、みたいな感じでこっち見てるけど。
「ええ、ネギまがいいです。わたしはこれが気に入りました」
「そ、そうか。わかった。ならこれからよろしくなネギま!」
「はい!ご主人様! 」
こうして俺の眷属1号はネギまと言う名になったのだった。
もうすぐあけましておめでとうですね!
予定より少しはやかったんですけど、投稿させて頂きました。
来年もよろしくお願いします!




