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8歳差も48歳と56歳って聞くと広く感じない



「……っ!」


 口の中に広がる酸味。噛む度に溢れる甘み。


 やばいわ、これ。人生で1番美味しい!


「おねえ!それ俺も食っていいのか?」


「ねぇ、お姉ちゃん。私も食べたい!食べちゃうよ!」


 そう言って三女のニーナが小さな口においなりさんを頬張る。


「おいしー!みんな、これすっごく美味しいよ!早く食べなよ!」


 その言葉を皮切りにみんなが皿に手を伸ばす。


「美味しい!」


 程なくして、おいなりさんはその場から姿を消したのであった。


「あんなうめーもん、誕生日にも食ったことねぇよ」


「んね!いままで食べた中で1番美味しかった」


 腹を満たした兄弟たちは口々にそういった。


「また食べたいねえ、お姉ちゃん」


「うん……そうだね」


 この子たちの笑顔を守るために、わたしは姉として、何ができるだろうか……。



──〇〇〇〇──



「結論は出ました?」


 1日経って再びアズリの所へ向かった俺は結論を聞く。


「はい。それがお稲荷様の導きとあらば」


 おいなりさま? そんな美味しかったのか。


「それにこの子達の怪我も治りました」


 そう言って視線を下げる。


 ニコニコと、笑う子供達が俺にお礼を言ってくる。


「ただ結論を出す前に2つ、質問を許して貰えますか?」


「どうぞ」


「まずあのおいなりさんという食べ物なのですが……」


「狐と言えば油揚げ、ですよね。うちの家族の狐ちゃんもおいなりさん大好きなんですよ」


「いえ、そうではなく、どうやってあれを手に入れたのですか? もしかしてお稲荷様と関係が?」


 いや、普通に俺の手作りなんだけど。


「なぁ、兄ちゃん。おいなりさんの正体は魔物なのか?」


 でっかい方のちびっ子少年がそう聞いてくる。


「え? 魔物? あれは魔物じゃないよ?」


 どう見ても食べ物だろう。


「嘘だ! お姉ちゃんは昨日、おいなりさんと戦ったんだぞ!」


 そう言ってちびっ子共が騒ぎ出す。


「剣で!こうやってカキーンって! お姉ちゃんがおいなりさんを倒したんだ!」


「へぇ〜。お姉ちゃんかっこいいね!」


 とりあえず子供達に話を合わせておく。


 アズリに笑いかけると何故か顔を赤くして、顔を伏せた。

 イマイチよく分からん。


「2つ目の質問は?」


「わたしがついて行ったとしたら、この子達はどうなりますか? わたしはこの子達が生きていけるのなら奴隷でもなんでもする覚悟です。……ただこの子達にはこれ以上辛い思いをさせたくない」


「あー、仕事内容ですが、実は今、俺の家族が経営してる保育園の先生を探してるところなんです。この子達はその学園の生徒になります」


「保育園?」


「はい。6歳ぐらいまでの子が通う学校だと思ってくれればいいです。もしくは孤児院みたいなとこですかね」


「学校? わたしはそこで先生をするんですか? 無理ですよ! わたし狩りとお祈りしかできません!」


 何でもする言うたやんけ!

「その辺に関しては気にしなくて大丈夫ですよ。子守りは得意そうですし」


「はい。……まぁ、子守りはそれなりに」


「どうします?来るならおいなりさん毎日食べれますよ?」


「ほんと?お兄ちゃん!」


「ああ、ほんとだ。だから一緒にお姉ちゃんを説得して?」


「僕、お兄ちゃんの言うことを聞くべきだと思う! お兄ちゃん、多分悪い人じゃないよ! 口臭いけど」


「俺もそう思う! ついて行こうぜ! 口臭いけど」


「あたしもそれがいいと思う。口臭いけど」


「さんせ〜口臭いけど」


「今日は念を入れて歯磨きしてきたっつーの!」


 子供って、悪意がないから余計心に刺さるよな。





 まぁ、それに比べて我が家の子供たちは可愛いけどな!


 あの後、俺はシレーナにアズリ達の手続きを任せて、先に家に帰った。

 学園での準備が必要なのは俺やアズリだけではない。

 ミリィやルーもまた、色々と学ばなくてはならないのだ。



「はい。では転入生のお二人は、自己紹介をお願いします!」


「このたび、4年Cクラスの生徒になりました。ミリィです。よろしく、お願い、します! みんなと、仲良く、なりたいです!」


「同じく。名前はルー。よろしくお願いいたします」


「ハイカットー! だいぶ良くなってきたぞ! ただ、ルーはもう少しだけ笑顔を見せた方がいいかな!」


 今、俺が2人に課しているのは学園でのあらゆる場面のシチュエーション管理だ。


 2人の入学は来週の月曜日から。

 初等部4年のクラスに配属される予定だ。


「次は友達を作る練習だぞ! シチュエーションその1、初めての授業だ!」


 二人には友達というものがいない。

 更には保護者がいない環境というのも2人にとっては親しみのないものとなる。


 ならばこそ、あらゆる状況に対応出来るよう2人をサポートするのが、俺の役目だ。


「ミリィね、今日学園に来たばかりだから、まだ教科書貰ってないんだ。見せてもらってもいいかな?」


「教科書見せて欲しい。机、寄せてもいい?」


「OK!完璧だ!」


 個人的にはルーのセリフが高ポイントだ。

 これを俺が言われたら間違いなくドキッとしちゃうね。



 まぁ、そんな感じで、あらゆるシチュエーションを2人に叩き込んでいった。


 これで二人の学園生活も安泰だな。


「よし、ラスト! 男子生徒にからかわれた時のシチュエーション!」


「ごめんね。ミリィ、弱い男に興味はないの」


「遊んで欲しいなら、まずは忠誠を誓え。君は運が良いね。今日はそんなに靴が汚れてないよ」


「いや、辛辣で草」


 俺だって小四の頃は女子をからかったりしてたけど、そんな返しが来た事はなかったぞ?


 そのくらいの年齢の男の子は、みんな女の子を意識し始める頃だし、多分何人かは2人に心を折られるだろうなぁ。


 けどまぁ、その他は及第点だろう。

 人見知りするタイプのルーはともかく、ミリィはその性格も相まって、いい友好関係を、築けるはずだ。多分。


 やっぱり、ミリィの種族に関する問題ばかりは、通い始めてからでないとわからないしなぁ。


 どうか二人の学園生活が、楽しいものであらんことを。



ブックマーク、評価、ありがとうございます!

励みになってます!

長々と同じようなくだりを、繰り返しましたが、ようやくお話しが学園の方へ移ります!

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