嘘をついたことの無いという嘘
冒険者なんかにはならねぇ! と、意気込んで啖呵を切った翌日、俺たちは冒険者ギルドに来ていた。
なに? 嘘つきだって?
勘違いしないでよね、別に冒険者になるためにここに来たわけじゃないんだから〜。
では、何をしに来たのかといえば、職業を鑑定してもらうためである。どうやらこの世界、生まれたと同時に職業が決まっているらしい。
一定数まで職業レベルをあげたり、特殊条件をクリアしたりすると転職やクラスアップが可能になるのだという。
ちなみにこの世界では普通職、上級職、超級職の3段階になっており、勇者や魔王などの職業は超級職に分類される。
上級職につければ一流、超級職につければ現人神だ。
ちなみに時間はもうお昼。
ペトラにとって、ちゃんとした睡眠は初めてだったようでベッドに取り憑かれてしまったのだ。
「では測定しますね」
リシアが地面に書いたのとは違い、複雑な魔法陣に俺の血を一雫垂らす。
「この前と演出は同じだな」
目障りな光とともに俺の職業が顕になる。
「翔太様は従魔士ですね。翔太様は剣術のスキルが3以上なので、今すぐに剣士へと転職できますがいかがなさいますか?」
事前に聞いた話では、この国でテイマーはハズレらしい。
ここらの地域に強い魔物はあまり多くなく、レベル上げが難しいのだとか。
逆に南の方にある帝国では剣士よりもテイマーを重宝しているらしい。環境によって適した職業もかわるってわけだな。
ともすれば、聞くまでもなく剣士だろう、答えは決まっている。と受付のお姉さんはそんな顔をしている。が、
「俺はテイマーのままでいいです」
「い、いいんですか?」
「はい」
「そうですか。わかりました」
俺はこの世界をテイマーとして生きることになった。もちろん、打算あっての事だ。転職が可能ならばこの職業に留まるつもりなんてない。
「なんでしょーたは剣士にならなかったの? 剣士かっこいいよ?」
「剣士って確か魔法覚えられないだろ?」
「うん」
実は転職するとステータスは下がるのだが、その際に獲得したスキルはなくならないらしい。
普通職の最大レベルは100。ちなみにレベル50で転職が可能だ。なので、そこそこレベルを上げてから転職すればその職業独自のスキルと大量のスキルポイントを、手に入れることができるのだ。
「とりあえず、従魔士、魔術士、鑑定士、創造者、僧侶のスキルを獲得してから剣士だ!」
この6つはチートスキルのない俺が最強を目指すには絶対に欠かせない職業だ。なんとしてもならなければならない。
俺が唯一もっているのは異世界ものの小説を読み漁って身につけた知識チートのみだ。
そこら辺にいる陽キャのさやわかイケメン勇者だけには絶対負けたくない。
「おおーしょーたが燃えてる!! かぁっくいー!」
「でも、そんなに経験値って集まるものなの? 私今レベル76だけど、光の勇者の称号で取得経験値が増加してる状態でもこれなんだけど? 」
確かに勇者になってから数年、リシアが渡り合ってきた敵の数は数え切れない量で、さらには強敵もわんさかいただろう。それでこのレベルであるというのは些かきついかもしれない。
あれ、もしかして結構時間かかる?
「あ、そうだ! ペトラが強い敵を倒して俺が経験値わけてもらえばいいんだ」
いわゆるキャリーってやつだな。プライドもクソもなくて情けない限りだが理にはかなってるだろ?
「あのね、翔太。経験値を貰うためには最低一撃は攻撃を入れなきゃいけないの。今の翔太のステータスじゃドラゴンが羽ばたいただけで吹き飛んで死ぬと思うよ?」
そっかあ、俺ただでさえ弱いんだもんなぁ。
さて、どうしたものかのう。
「でもさ、しょーたってテイマー? ってやつなんでしょ? だったら手下に攻撃させればいいんだから、しょーたは遠くにいればいいんじゃない?」
さてはペトラ、お前は天才か!
「流石魔王だ!」
「えへへ、ありがとう!」
ちょっと照れたようにはにかむペトラは控えめに言ってもとても魅力的だった。
やっぱり、綺麗な人の可愛い一面てグッとくるよな。
「じゃあまずは、眷属作りだな! 早速今から付き合ってもらっていい?」
「いいともー」
「仕方ないんだから、付き合ってあげる」
こうして、俺はいよいよ異世界っぽいことをするに至ったのだった。
「あ、あの、森へ行かれるのですか? でしたらひとつだけ忠告させていただきますと、最近になって何度か古龍の目撃情報が出ています。中には実際に戦闘になり亡くなった冒険者もいるそうです。十分気をつけてくださいね」
「わ、わかりました」
これあれだわ。100%遭遇するやつだわ。フラグだわ……
「気にしてもしょうがないでしょ? 私の傍にいれば守ってあげるから、安心しなよ」
あれ、なんだろう。最近リシアのことをポンコツ女騎士属性か?と 疑っていたからだろうか。その不意打ちにやたらとときめいた。
「任せるよ、俺の勇者様」
「ふん」
こうして俺たちは気を取り直して森へと向かう──はずだったのだ。
そう、俺がうっかりあの事を失念していなければ。
夜中にもう1話投稿するかもしれません。
ぜひ読んでください!




