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最下位と再開



 鍋パ誘われなかったくんの妹の起きれなかったちゃん。

 彼女は俺の正体を知っていた。


 俺は今、彼女に連れられたお店でゆっくりお茶をしている。当然、俺はかなり焦っているのだが……


「そそそそそれで? 君は僕の事を黒の方舟のメンバーだと言いたいようだけれど、はて? なんの事かなぁ〜」


 できるだけ平然を装ってスマートに決める。

 リシアと違って、俺は嘘だってつける。


「さっきまでと一人称変わってますよ……。別にとぼけなくていいんです。誰にも言ってませんから。もちろんお兄さんにもです」


「そうか。絶対誰にも言うんじゃないぞ!」


「手のひら返しが早い!」


 バレてるならしかたねぇよ。

 誤魔化せるなら嘘をつくが、この目はもう確信している奴の目だ。


 けど、どうしてバレてしまったのだろうか。

 そんな要素ありましたっけ。


「武器ですよ。武器。貴方、黒の方舟として活動している時も、あの大太刀を使っているらしいじゃないですか。……その、私、黒の方舟のファンでして──」


 色々と調べたらしい。

 それで今日見た俺が黒髪だったから、カマかけてみたら、自滅したんだってさ。


 やっちまったぜ。

 リシアっちまったと言うべきか。


「それで? 俺を脅迫して何をするつもりなんだね?」


 何かしら用がなければ、わざわざ話しかけてきたりもしないだろう。


「魔術の事です」



 そう言って語ったオキちゃんの話を要約すると、どうやら、起きれなかったちゃんも鍋パ誘われなかったくんも魔術の実技においては、かなりレベルが低いらしい。

 特に、ナベーパくんにおいては、ゴールデンウィーク明けの実技テストの結果によっては留年の危機だとか。

 

「ショータ先輩……いえ、ショータ師匠! 私たちに、魔術を教えてください!」


 なるほど、そういう事か。

 レナードをも上回る実力を持つ俺に魔法を教えて貰うことで、兄の留年を阻止しようとしているのだな。

 お兄ちゃん思いの良い妹じゃないか。

 確かにあの学園の評価項目には実技も含まれていた。ナべーパくんのあの実力じゃ突破は難しいかもしれない。うんうん。よき兄妹愛だな。


「まぁ、そんな面倒くさい事、やんねぇけどな」


「え!? えええ!? この流れで!?」


「うん。俺、ゴールデンウィークは家族旅行に行く予定なんだよね。ごめん、俺も珍しく忙しいんだわ」


「そんなぁ……。これじゃあ、ショータ師匠が黒の方舟のメンバーだって事、学園中に言いふらさないといけないじゃんか〜」


「で? 君は一体いつ暇なんだい?」


「また手のひら返した……」


 俺の正体がバレるとオリヴィアにも迷惑が掛かる。あいつは真っ当に生きてるし、変な事で巻き込みたくない。


 俺が再び手のひらを返したのは、脅迫に屈したからではないぞ。あくまで、オリヴィアの為だ。


 ……クソ、やっぱり友達なんて作るんじゃなかった。

 弱点が増えただけじゃねぇかよ。


「実はもう、学園の方は今日からゴールデンウィークに入っていまして。お兄さんの方も、多分時間はあると思います」


「そっかそっか! じゃあ、ナベーパくん連れてきてよ。俺が君達に教えられるのは座学だけだ。紙とペンさえあれば十分だよ」


「待って下さい! 私たちが教わりたいのは実技です! 座学に関してはお兄さんも私も問題りません」


「いや、別に俺は魔術学園の教師じゃないし。魔術の勉強を教えるつもりはねぇよ?」


「じゃあ、どうやって……!」


「俺が教えるのは化学と厨二病だ」




 〜2時間後

 

 ナベーパくんが合流した。


「えっと、あの……また僕を殴るんですか? お願いします。妹だけは見逃して上げて下さい!」


「お兄さん。情けなさ過ぎ! もっとシャキッとして!」


 人聞きの悪い事を言い出す兄、キレる妹。


 打ち合わせくらいしといてくれよ。

 ナベーパくんへにゃへにゃじゃんか。


 ちなみに、俺は今帽子をかぶって髪の色を誤魔化している。ニット帽なので、多分見えてないはずだ。


「ちなみに、オキちゃんの得意な魔法の属性は?」


「私は火が得意です。火炎属性の方のスキルレベルも上げてます」


 ふむふむ。なるほど。

 余談だが、火属性魔法は初級魔法。火炎属性魔法は中級魔法と分類される。

 俺は初級魔法しか覚えてないので、火炎属性のスキルは覚えてません。


「ナベーパくんは確か風だったよね。火はどうなの?」


「ぼ、僕も火が一番得意です。ただ──」


「私と属性が被ったのでお願いして変えてもらいました」


 こいつら何してんだよ。

 我が家もネギまとクハクで属性が被ってるけど、ちゃんと仲良くしてるぞ?


「じゃあ、次の質問、毒属性の魔法は使えるか?」


 化学を利用した魔法構築をするのなら、毒属性はかなり重要になる。


「使えません」


「僕は使えますけど、スキルレベルは1です」


「なら今すぐに習得してくれ。これが使えなきゃ何も始まらん。ナベーパくんは今すぐ余ったスキルポイントを毒の方にぶち込んで下さい」


「そ、そんな! 後2ポイント貯まれば風属性魔法のスキルレベルが6になるのに!」


「ガタガタ言ってねぇで突っ込めや」


「そ、そんなぁ……」


 べそをかき始めるナベーパくん。

 予め理由を説明してない俺も悪いけど、これしきの事で泣くやつはもっと悪い。


「いくつになった?」


「3です……」


 うん。及第点だな。

 オキちゃんにも、毒属性魔法を習得し次第、直ぐにポイントをぶっ込んで貰うことにしよう。


「んじゃあ、改めて化学のお勉強を開始する。今日教えるのは君達が初級魔法のみでも爆炎属性(火の上級)魔法並の火力を出す方法だ」


「できるんですか?」


「できるよ。ちゃんと2人とも話を聞いてくれるなら」


「聞きます! ね! お兄さん」


「う、うん」


 そうか。なら教えてやろう。酸素について。


「2人とも、水の中で呼吸をしようとした事はあるか?」


「あります」

「私も」


「できた?」


「いえ」

「出来ませんでした」


「なんで出来なかったかわかるか?」


「空気がないから……ですか?」


「そう。正解だ。ただ、厳密に言うと、俺たちに必要なのは、酸素というものなんだ。酸素は──」


 



 2人は俺の話を真剣に聞いてくれていたようで、講義が終わる頃にはそれなりに理解してくれた。


「じゃあ、最後だ。実際に見せるからな」


 俺はコクリと頷き息を飲む2人に両手を晒す。


 まず、無詠唱魔法で指先に小さな火をつくる。


「はい、オキちゃん。これはどうして燃え続けることができるんだっけ?」


「魔力を燃やし続けてるからです」


「うん。正解。今、この火は魔力を流す事で良くも悪くも安定した火力を保ち続けている」


 しかし、魔力を燃やす方法ではその人の実力によって、火力が変わってしまう。ならば──


「毒属性魔法で作った酸素を燃やし、火力を上げればいいんですね!」


 おお!ナベーパくん流石だ。

 実技がからっきしでも、座学だけでどうにか留年を間逃れてきただけはある。


 酸素は人間に対して有毒故に、毒魔法で生成できる。

 ちなみに、純水なども毒魔法で生成できた。

 どんなものも、考えようによっては毒になりうるわけだけれど、定義については曖昧なようで、生み出せないものもたくさんある。

 いつか研究してみたいな。


「流石に危ないから、店内ではできないけど、今度やって見るといいぞ! ただ、自分の家とかダンジョンでやれよ? 加減を間違えると大変なことになるからな!」


 最初は結構まじで危ない。

 命の保証はしないけど、まぁ頑張ってくれよって感じだ。


「これで化学は終わりー」


 いよいよだ。こっちが本題。


「君達には世界で一番痛い病気……厨二病になってもらう」




 


ブックマーク、評価ありがとうございます!

高評価貰えました!


次のお話し終わったらいよいよ、家族旅行ですので、新章に入ります!

彼らは旅行を無事に楽しむ事ができるのでしょうか!

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