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旅費



「ナンシーさん。なんかドバーッとお金を稼げる仕事ってあったりしません?」


 俺は王都にある冒険者ギルドで、手頃な依頼を探していた。無論、旅費を稼ぐためである。


 その場の勢いで、全員分奢るって言っちゃったけど、よく考えたら馬鹿にならない量のお金がかかる。

 何せ家族は50人もいるのだ。宿代だけでいくら飛ぶ事やら……


 ちなみに、ナンシーさんは俺を黒の方舟の人間と知っている数少ない人間だ。他にはオリヴィアとミラしかいない。


「貴方、毎度違う女性を連れてきますけど、それは嫌がらせですか?」


「いや、そんなんじゃないですけど……」


 この前来た時は、ケーラとプリシラレベッカと理沙とペトラがいたが、今日はネギまとクハクがいる。

 ナンシーさんが言った女性とは、人化した2人の事だろう。


 今日のメンバーが、こうなったのもちゃんと理由がある。

 もし、他の家族を連れてきたら報酬を山分けしないといけないけど、ネギまとクハクの場合は、部下の物は上司の物(お前の物は俺の物)って言い張れるからだ。


 俺はとてもよく頭が回る。


「そうですね……今、貴方が受けれるクエストなら、馬鹿の討伐でしょうか」


「却下!」


 馬鹿の討伐なんて、聞くだけで鳥肌が立つ。


「その前に、貴方冒険者ランクいくつなんですか?」


「ん?いや、登録してないですよ?」


 俺は冒険者になりたくなくて、誘拐犯になった男だ。

 当然登録だってしていない。


 ナンシーさんは目を丸くして、フリーズした後、何かお説教みたいなのを始めたので、とりあえず聞き流す。


「正式な冒険者でないとなると、薬草摘みくらいしか受けられませんよ」


「そこをなんとかしてくださいよ! 俺は今すぐお金が必要なんです!」


 情けない事この上無いが、家族に醜態を晒すよりは断然マシだ。


「いえ、そんな事を言われましても……」


「一生のお願いですよ〜」


「はぁ……なら、今回は特別に裏技を教えます」


 ナンシーさんはキョロキョロと周囲を見渡し、視線がないことを確認するとちょいちょい、と手招きする。


 俺はそっと顔を近づけると、ナンシーさんは小声で裏技について語ってくれた。


「これはあくまで裏技です。バレたら私の首まで飛びかねませんので、他言無用でお願いします」


 そう言って語ってくれたのは、冒険者の規則の穴を潜る方法。


 低ランクどころか、そもそも冒険者登録さえしていない俺が受けれるクエストは薬草採取のみ。

 しかし、その最中に、高ランククエストの魔物と()()遭遇し、()()討伐し、()()依頼をこなしてしまった場合、その高ランククエストの報酬も得ることができるということだ。


「今、このギルドに届いている依頼の中で、1番高い報酬が支払われるクエストは陰亀の討伐です」


 インカメ?

 なんだそのダジャレみたいな名前の魔物は。


「いくら支払われますか?」


「大金貨30枚です」


 3000万円か。

 随分と高額だ。


「ギルドでは素材の買い取りもしているので、プラス10枚と考えていいと思います」


 なるほど、合計4000万円か。

 旅費全部を賄うには少々足りない気もするが、一日でそれだけ稼げるのなら万々歳だ。


「ありがとうございます!その依頼を受ける事にします!」


「分かりました。貴方なら心配は要らないと思いますけど、気を付けて下さいね。一筋縄で行くような依頼ではありませんから」


「了解です!肝に銘じておきますね!」


 ナンシーさんは少し心配そうな顔で俺を見送ったが、俺の方は問題ない。


 ネギまだってクハクだっているのだ。

 何も心配は要らない。


「よっしゃあ!頑張ろうな!」


「お任せください、ご主人様〜」


「成長したネギまの勇姿をご覧下さいまし」


「よーし!ジャンプ──



 ──着地」


 はい。沼地に着きました。

 実際には、ネギまの背に乗って来たんだけど、久しぶりに乗ったからか、ネギまがはしゃいだせいで着くのに時間がかかった。


 まぁ、楽しかったから良いけどね。


 普段は家の中に入るため小さくなっているネギまだが、本来のサイズに戻った時のふかふか感は世界一だ。



 まだ昼間だと言うのに、何故かこの沼地は薄暗く、少し不気味な雰囲気だ。


 こんな所でインカメで自撮りしても絶対映ない。


「陰亀は〜影を司る亀なので薄暗い場所を好むのです〜」


 なるほどな。あくまで陰亀であって、inカメでは無いということか。


「おらー、亀ー出て来いや!!!!」



 ──2時間後


「ゴブリンしか出てこない……」


「本当にここにいるんでしょうか〜」


「先輩は主様をお疑いになると?」


「こらこら」


 ちょっとギスって来た。

 これ以上ギスギスする前に一回帰るか。


 ゴールデンウィークまでに金を貯めればいいだけで、別に今日すぐじゃなくていいのだ。


 俺がそんな事を考えた時、後ろからおぞましい鳴き声が聞こえてきた。


「ギギィ……グギィ」



 俺はゆっくりと振り返って──




「いや、ゴブリンやんけ」

お読み頂きありがとうございます!

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ふと、思ったんですけど、この物語、女性の読者様はいらっしゃるのでしょうか。

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