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いや、知らん。


「ご主人様〜おかえりなさ〜い」


「いや、誰?」


 昨日は日が沈んでしまったので、ルーと宿に一泊してから家に帰ることにした。そのお陰で色々スッキリしたのだが、そんな俺を見知らぬ人が出迎えてくれた。


 色素の薄い肌に、ゆるふわお姉さん系の顔。目じりのホクロがぱっちりとした瞳を強調させる。ふくよかな身体付きをしており、髪の毛は優しいウェーブがかかった白髪で、前髪の一部が赤く染っている。


 新しいメンバーだろうか?

 いや、その割には既に馴染んでいるような……。

 俺は鑑定眼を起動すると、そこにはネギまと表示された。


「うぉ!ネギまか!」


「は〜い。ネギまですよ〜。ご主人様はなんでもお見通しですね〜」


 ネギまは右手を頬に添えてふふふと笑う。


 いや、鑑定眼使わなきゃわかんねぇよ!


「どうしてでしょうね〜。人型になれたのはいいのですが、上手く喋れなくて〜」


「確かに語尾が伸びてるな」


 その語尾が溢れ出す聖母感を増長させる。


「元の姿ならそんな事ないんですけどね〜」


 まぁ、元の姿コケーしか言わないしな。


 けど、丁度いいな。


「なぁ、ネギま、今暇か?」


「はい〜。暇です〜。ものすごく暇です〜。ご主人様の為に時間開けときま──」


「よかった。この子の面倒見てくれないか?」


「コケっ!?」


 いや、人型なのにニワトリの声になってるぞ……。

 

 ネギまは一瞬固まるがすぐに復活して、肩を落としながらこちらを上目遣いで見つめる。


「暇かなんて聞くので一瞬期待しちゃったらじゃないですか〜。けど、ご主人様はそういう人でしたね〜」


 俺はしがみつくルーの頭を撫でて、怖いお姉さんではない事を伝える。


「ご主人様ひどいですよ〜」


「ごめんごめん」


「ネギまといいます〜。よろしくお願いしますね〜」


「えっと……ルーです」


 簡単に自己紹介を終えた二人。

 俺はルーにペトラとミリィを紹介することにした。

 歳の近い子がいた方が安心するだろうしな。


 俺はそのまま階段を降りて地下3階に顔を出す。


「えーっとミリィは……いた! ミリィ! ペトラちょっと来てくれ!」


 俺が声を掛けると、真っ先に俺に抱えられたルーに目がいったのか、不思議そうな顔でてこてこと歩いてくる。


「新しい家族?」


 目がキラキラしてる。やっぱりミリィも歳の近い子がいてくれた方が嬉しいようだ。


「こっちがミリィで、こっちがペトラだ」


 俺は2人を紹介しながらミリィの頭を撫でる。

 何故かペトラがミリィを羨ましそうに見ていたので、ペトラの方も撫でてやると目を細めて気持ち良さそうに笑う。


 か、可愛いじゃねぇか……。


「この子はルーだ。足が不自由で上手く歩けないから考慮してやってくれ」


「「はーい」」


 うん。いい返事だ。


「じゃあ、俺は昼飯作ってくるからネギまに身支度してもらった後はこの子達と時間つぶしててくれ!」


 俺はルーにそう告げて階段を上った。

 



「なぁ、リリム。お前、うちの家族が店開いたり勝手に貴族になってたりしてるの知ってた?」


「ギクッ!!」


 おい、まさかお前も……


「その……貴族に仕える料理人を育てるお仕事の方を……」


 いや、聞いてないー。


「リリムって家庭料理だけじゃなくて貴族料理の方もいけるのか?」


「まぁ、一応。一応ね。齧ったばっかりで、正直まだまだなんだけど、慣れればそれなりに形になるというか、なんというか……」


「じゃあ、リリムは料理人の上級職に就けば王宮で働く道もあったってわけか……」


「そ! そんな事しないよ! 私はあくまで黒の方舟の武具錬成担当なんだから! ただ、人に指導する立場はいずれ、戦う時にも役に立つかなって思ってね?」


「お、おう」


 異様に興奮した様子で詰め寄ってきたリリム。

 俺たちのことを大事に思ってくれるのは嬉しいけどな。

 包丁持ったまま動き回られると怖いです。


 ただ、リリムは殲滅戦の際はリーダーとして分隊長として配置されるので、理に適ってはいるかもしれない。


「翔太君……怒ってる?」


「いや、別に怒ってはねぇよ。ただ一言相談してほしかった」


「えへへ、そっかぁ〜」


「ん? 何笑ってんだよ」


「笑ってないよ!」


 いや、笑ってただろ。

 ったく、調子狂うなぁ。


「先に料理運んどくからな」


 俺は何となく居心地が悪くなったので、逃げるようにその場を離れた。


 ルーはまともな食事を摂っていなかったらしいので、今日からは存分に食べてもらいたい。

 そんな想いで作ったのはたこさんウィンナー。


 ──何故かそのうちのひとつと目が合った気がした。


「なんだよ……お前まで俺を笑うのか?」


 たこさんウィンナーに喧嘩を売るなんて、バカのする事だ。それくらい自分でもわかってる。

 ──わかってるけど、やっぱり目が合った気がしたのだ。


「がおー、俺が直々に食ろうてやる!」


 そのうちのひとつを摘み口に含もうと摘み上げると──


「嗚呼、さすがは主様。敬服の至に存じます」


「…………」


 たこさんウィンナーが喋った。

 どうやら、キツネが混ざっていたようだ。

 何してるの?こいつ。


 とりあえず俺は摘んでいた親指サイズのキツネちゃんを手のひらの上に置く。


「あ! てっ……てってれぇー! ドッキリ大成功!……でございます」


「…………」


 柄にもなく高いテンションでそう言ったクハク。

 無表情の俺。


「何言ってんだおめぇ」


「理沙様がこれを言っておけば粗相は全て許してもらえると……」


 よし、あいつとは少しお話が必要みたいだな。

 きっと長いお話になるだろう。

 今夜は寝かさねぇからな。


 俺はしょんぼりとするクハクを一旦置いて、料理を運ぶ。


「で、お前は俺に何の用だ?」

 




 

ブックマーク、評価ありがとうございます!!!

累計500ポイントいきました。

ゆっくりではありますが、ちゃんと増えてます!!

いえい!

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