第2話
少年の格好はこの世界の物ではなく、困った顔で両手を上げて固まっている。
その姿を見たイェンスは目を丸くし、ミアはフーッ!と毛を逆立てて警戒した後、主人の方に飛び乗った。
「イェンス様、異世界人ですよ!しかも何です?あの構えは!」
「ふふ、あれは降参のポーズなんだ、警戒しなくても大丈夫さ。」
普段あまり表情を変えないイェンスがクスッと笑った。
「なあ、そこのローブの人。イェンスでいいのか?教えてくれここは何処なんだ?英雄だ何だと聞こえたらいきなりここに飛ばされて、俺にはさっぱり状況が……。」
「ああ、申し遅れてすまない。僕は魔導士のイェンス、肩に乗ってるのは使い魔のミア。混乱するのは当然さ。ここは君が居た世界とは別世界だから。」
「へ?流石に冗談だろ?いや、俺夢見てるのかな?」
イェンスは結論から先に述べた。
結果:いきなり突拍子もない現実を突きつけた為さらに混乱させた。
「おかしいな?混乱させてしまったみたいだ。ミア、後は君に任せるよ。」
「ちょっと待ったあ!!説明が面倒だからってすぐ丸投げするの辞めなはれや!?」
パシイッ!!
ミアの猫パンチ!(クリティカル)
しかしダメージを与えられない!
イェンスはほっこりした。
「ボソッ……後で特上ニボシあげるから。」
「ニボシ!?……いいの?エッフン!分かりました承りましょう!」
一体何の茶番を見せられてるのか?と思いながらそれを眺めている少年。
そこに尻尾を立てたミアが猫らしい身軽な歩きで近づいてくる。
「そこの少年!」
「お、俺は少年じゃない!コウだ!」
「ではコウ!今からニボシに免じて、このミアが直々に説明してあげるからよく聞く事!いいね?」
「わ、分かったよ。」
それから怒涛の如く喋る猫による説明が始まった。
要約すると、攫われたお姫様を助けるついでに、世界を滅ぼしかけた魔狼の子孫をボッコボコにする為、旅をするらしい。
その為にこの世界の英雄の生まれ変わりを召喚したら、何故か異世界人である少年が呼ばれました。
By魔導士と一匹
魔導士と一匹は、コウの方を「これで分かったよね?」という顔をして見つめている。
「俺がこの世界の英雄の生まれ変わり?いや既に異世界に来た時点で俺は混乱してるんだけど?」
「チッ……。」
「面倒くさいなって顔しながら舌打ちしないで!?」
すると何やらイェンスとミアはそそくさと距離を取り、こしょこしょ話を始めた。
「どうしますイェンス様?肝心の勇者ポジションがあれだと、格闘家あたりも呼んだ方がいいのでは?」
「却下、これ以上召喚に魔力使うのは僕が疲れる!」
「じゃあ旅人のギルドにでも行って(半ば強引に)確保しますか?」
「そうだね、それで行こう!」
コウが先程の舌打ちを引きずっていじけている間に、サクッと恐ろしい結論が出されているのであった。
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