ライトノベルと一般小説の違い
ライトノベルと一般小説の違いとは何か?
一般的にライトノベルの定義は次の通りである。
・表紙や挿絵に可愛い女の子などのキャラクターが描かれている。
・魔法や超能力といった非常識的な内容が多く盛り込まれている。
・読み手の対象年齢が小中学生および高校生といった若年層である。
・出版社がライトノベルとして販売している。
そして現状は、それらすべての要素が重なり合ってライトノベルとして区分されている。
ライトノベルと区分される過程はこうである。
まず出版社が本文の内容からライトノベルとして販売しようと決める。ライトノベル枠での販売決定に伴い、若年層に購読してもらえるよう表紙や挿絵には可愛い女の子などのキャラクターの絵が起用される。そしてライトノベル枠で発売されるため、自ずと書店でもライトノベルの棚に置かれ、その書物はライトノベルとして認知される事となる。
また、一般小説として区分される過程はこうである。
まず出版社が本文の内容から一般小説として販売しようと決める。一般小説枠での販売決定に伴い、一般の人々に購読してもらえるよう表紙や挿絵には当たり障りのないイラストが起用される。そして一般小説枠で発売されるため、自ずと書店でも一般小説の棚に置かれ、その書物は一般小説として認知される事となる。
それ以外にも、以前はライトノベルとして販売されていたものを、表紙や挿絵を変更して一般小説として再販している例もある。それらの例を踏まえると、ライトノベルと一般小説の区分けは出版社の判断によるところが大きいと言わざるをえない。
しかし、それらは上辺の話である。
ライトノベルと一般小説の本当の違いは、対内的でもっと深い場所にこそある。
ライトノベルと一般小説の違いは、おおよそ次の通りである。
《一般小説》
・堅実な文章にて物語が書き表されている。
・地の文は正しい文法であることが求められる。
・文体が硬くやや難解で文章に慣れていない者には読み辛い。
・内容はおおよそ現実的で科学的根拠に則っている必要がある。
《ライトノベル》
・簡易な文章にて物語が書き表されている。
・文法などに多少の問題があっても読み手に伝わればそれで良い。
・文章は簡単で口語体も多く若年層にも読みやすい。
・内容は非現実的で非科学的でも良い。
剣を持ち、互いに切り合っている二人の男がいるとしよう。
一般小説は振り下ろされる剣の速さや切っ先の軌道、男の身のこなし、受けた傷の度合いや男の死に様の描写が書き連ねられ、その様子が表現される。
しかしライトノベルは、
キンキンキンッ、ザクッ、「ぐわっ」男は死んだ。
このような文章でも容認される。
一般小説は描写文によって読者の想像をある程度コントロールしているのに対して、ライトノベルは情景の想像を読者に委ねてしまっているのだ。
小説とは書かれた文章より情景を思い描く『連想の書物』である。
しかしライトノベルは、描写文が簡略的であったり省かれている場合が多く、読者が何の根拠も無く勝手に幻を想像してしまうことも多いのだ。
一般小説において、筆者は情景を読者に伝えるべく堅実な文章を書き連ねる。制作の重点は文章に置かれている。しかしライトノベルは、文章よりも作者の思い描いたイメージそのものに重点が置かれている。文章はイメージを伝える通過点に過ぎない。
その重点の違いこそが一般小説とライトノベルの決定的な違いなのである。
一般小説は、文章にて情景を表したもの。
ライトノベルは、文章を通して情景を表したもの。 ――なのである。
また、非現実的で非科学的で良いため物語の自由度はライトノベルの方が圧倒的に高い。
人が空を飛んでも良いし、炎が熱くなくても良いし、鉄やコンクリートが人の手で砕けてしまうほど柔らかくても良いし、宇宙が空気で満たされていても良いのだ。
作者が思い描いた世界や様子をそのまま物語に投影してしまって良いのが、ライトノベルなのである。
文章も通過点に過ぎないため、意味さえ通じれば多少文法が間違っていても許容される。それはつまり、文章に不慣れな素人でも良いということを意味している。その間口はとても広いのだ。
一般小説を書くには膨大な知識や経験や技術が必要となり、書ける人は限られる。
しかしライトノベルは、誰もが自由に思いを綴り、好き勝手に想像を広げ、心に思い描いたイメージをそのままぶつけることができる。
その大きな自由こそが、ライトノベルと一般小説の違いなのである。
――故に、私は思う。
本書を読んで頂けた方々よ。もしその心の内に押し留めている物語があるのなら、形にこだわることなくどんどん吐き出して欲しい。
ライトノベルという枠であれば、自由に書き綴って良いのだから。
そして世間が、今以上に心躍る作品で溢れ返ることを、私は心より願っている。