乗り込んで。
「さて,改めてお互い自己紹介といきましょうか」
「は,はい……」
現在私たちは,さっきの応接間にてメイドさん3人と机を挟んで対峙している。その後ろにも10人ぐらいメイドさんが勢ぞろいしてるけど……みんな,顔が笑ってない。
「まず私がメイド長です。名前は……置いておきましょう」
「矢本さんでしょう,ここに来るときガードマンさんが口にしてましたよ」
間髪入れずにエリカが切り返す。
「おやおや,全く門番は不用心なことをしてくれたもんで」
一瞬すぅっと目が細くなったかと思えば,また元に戻る。うぅ……帰りたいよぉ……
「メイドその1,ということで。あぁ,後ろに並んでるのは右からメイドその2,その3,以下省略で」
「……ラスルシャ。ラース・ルーシア・ヤオ」
メイド長さんのあとにぶっきらぼうなメイドさんと,これまたぶっきらぼうなラスルシャさん。
「おい,こっちが名乗ったんだ。さっさとそっちも」
「ラスルシャ?」
「………ちっ」
「申し遅れた。エリカ・フォン・シュミットだ」
「し,四条,磨穂呂,です」
正直なところ,名乗るだけでもすごく大変で。雰囲気に負けて気絶しそう。
「さて,お互いの素性もわかったことですし,それでは本題に移りましょうか。……あなた方は,樹お嬢様に害を為さんと。そういうお考えのもと来訪したと?」
「そ,それはっ」
「違いますっ」
ソファを蹴ってエリカが立ち上がると,すかさず背後に居たメイドさんに肩を掴まれてそのまま座らされる。
「違う?何がですか?あなた方は樹お嬢様を強制的にでも連れ戻しに来たのでしょう?それ即ち樹お嬢様の,ひいては椎原の家の害になるのです。それ故にこうして対峙していると」
「……全く話が読めないんですが」
「知るか」
「ラスルシャ」
「へーい」
「あ,あのっ」
思わず私からも声を上げると,部屋中の視線がすべて集まる。ひ,ひいっ!?
「わ,私たち,突然樹が居なくなったから……どうしたのかなって,様子を見に来ただけで……その,連れ戻すとかは,考えて,ない,です……」
「……つまり,顔さえ見て,樹お嬢様の言葉で答えを聞ければそれでよいと?」
「……できれば,一緒に帰りたい。けど,樹は,きっと,私たちとは,一緒に来ない。でも,会いたい,そして,……一緒に,また,お勉強とか,お風呂とか,したい」
……こんな時でも,うまく話せないのが,もどかしい。
「へっ,よく言うぜ,樹お嬢様にさんざっぱらひでぇことして追い返したくせによ」
「わ,わたしたちが……?」
「待て,それはどういう」
「しらばっくれんなよ,お前らが樹お嬢様を虐めて,出血させたり,服脱がせたり,焦げたモン食わせたり,寄ってたかって乱暴したりしてたんだろっ」
「いや待て,何が何だか」
「ラスルシャ,あなたが話すと話がまとまりません。……それではひとつづつ尋問していきましょうか。まず,樹お嬢様は二人に服を脱がされたと聞いていますが?」
「あぁ,それは……樹に初めてのモノが来た時のこと,かな……」
「ふむ……そうすると血が出たというのも」
「おそらくそれです」
「じゃ,じゃあ焦げたモン作って食わせたって」
「それも気になってました。制服に焦げた跡があったので」
「い,いつき,科学部で見たカルメ焼きが,気に入っちゃって,面白がって,放課後になると,自分で作ってたから……」
「お,お嬢様が自分で調理を!?」
部屋全体がざわつき始める。あ,あれ……?
「……最後に訊きますが,この前まできれいだった制服が,樹お嬢様が帰ってきた時にはかぎ裂きや汚れができていましたが,それは?」
「あー……」
「うん……」
二人で顔を見合わせる。多分それは,
「……樹は気になるものがあるとひとりでどこまでも追いかけてくから……」
「星花の中庭で,ネコとよく遊んでるから……カギ裂きは,ネコのツメ,かも」
「あと藪の中にもよく突っ込んでたよな」
「……十分よくわかりました,そして」
メイド長さんが頭を抱えたかと思えば,
「ラースールーシャー!?」
「な,なんだよっ,あたしはただ」
「貴女の所為でお嬢様の大事なご友人を危うく永遠にたたき出すところでしたのよ?」
「だ,だって……」
その時,今まで黙っていたメイドその1さんがケラケラと笑い始める。
「なっ,なんですかもうっ」
「言ったでしょうチーフ,この子たちは悪い子ではないって」
「と,とは言えですね……」
「全くもう……さて,待たせてごめんね。これでお互いの誤解はある程度解けたんじゃないかな。特に四条さん,あなたと樹ちゃ……お嬢様のことは下の妹から聞いてるよ」
「い,もうと?」
そういえば,なんだか見覚えのあるような……?
「あのお転婆は元気にしてるかい?」
「もしかして…………八千流の?」
「あたり。一番上の姉貴でーす」
……え,ええと,何がどうなってるの……?




