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【幕間】樹の冒険。

なんだかんだで1年放置した挙句 本編に関係ない幕間描きやがりましたよこの作者。

「もうっ、なんで樹は、いっつもそうなの!?」

「いつもじゃないもんっ、今日が初めてだよっ」

「うそつき。………………この前も、私のお饅頭食べようとしたじゃない」

「あれは、おもしろい形だったからじっと眺めてただけだもんっ」

「………………むう、まぁそれはいいとして」

磨穂呂がいったん引き下がる。

「私のとっておきの、プリンを食べようとしたのだけは、ぜったいにゆるせないっ」

あ、磨穂呂が怒った。

「冤罪だよっ、これも珍しいからじーっと見てただけ」

「見るためだけに冷蔵庫から出す!? それに、スプーンまで持ってきて………………」

「………………ほうじ茶プリンなんて珍しいからちょこっと食べてみたかったの」

「ほらやっぱり食べる気だったんじゃない!! 」

次の瞬間、磨穂呂のゲンコツが降ってくる。ごちん。

「い、いったいよぉっ!? うわーーんっ、磨穂呂のバカぁっ」

泣きながら磨穂呂の部屋を出て、自分のお部屋に逃げ帰る。………………うぅ、磨穂呂のゲンコツいたいよぉっ

(磨穂呂のおばかぁ!! ゲンコツするなんてぇっ………………ちょっと食べようとしただけなのにぃ)

ベッドに突っ伏して足をじたばた、ばたんばたん。頭はたんこぶがずっきずき。いたい。

「まほろのバカぁ!!」

そうやってじたばたじたばたしていると、なんだか疲れてきたからバタバタするのをやめて枕にぎゅっと顔を埋めることにした。


それからずっとそうしていると、なんだか喉がかわいてきた。

(お水がほしい………………)

手をついて起き上がろうとすると、なんだか身体が軽くて。それに、立ち上がろうとしても足が言うことをきいてくれない。むしろ、四つんばいのほうが楽な気がして、

(なんだか身体がおかしい………………)

精いっぱい手を伸ばしてるのに、見える世界はぜんぜん高くならなくて。

ベッドから降りて姿見をのぞきこんでみると、

(ね、ねこ………………さん?)

そこに映っていたのは、真っ白で小さな白猫さんで、『私』の姿はどこにもない。………………ってことは………………

(わ、私、ね、ねこさんに、なっちゃった………………)

下を向いてみると、お手手は白い毛皮に包まれた前脚になってて、顔を撫でるとまんまるな顔におひげがちょこん。ミミは頭の上にぴこぴこ。

(な、なんでねこさんになっちゃったんだろう………………)

とりあえずとことこと歩いてみると、扉に頭をごっつんこ。

「うにゃっ」

話すことまでねこさんになっちゃったみたい。

(どうやって外に出よう……? )

後ろ足でせいいっぱい立ってみてもドアノブには届かないし…………そうだ、ねこさんなら。

ちょっと後ろに下がって、おもいっきりジャンプ。届いた。そのまま体重をかけてレバーを下げて、ぶら下がってゆらゆら。少し空いたドアからするりと抜け出して廊下に出る。

(こんな狭い隙間も抜けられるなんて、ねこさんはすごいのです)

変なとこで感心していると、後ろから悲鳴が聞こえてきて。

「△○%$€∑!? 」

振り向いてみれば、私の後ろでへたりこんだ人が居た。な、なんて言ってるのかわかんないけど、とりあえず逃げたほうがよさそう。4つの足でたったかとっとこ走り出すと、周りの景色がどんどんと後ろに流れていって、

(これはおもしろいのです)

調子に乗って前も見ないで猛ダッシュ。壁にごっちんして目の前にお星様がくるくる。

「$£γOπ∬!? 」

相変わらず何言ってるか分からないのです……

ぐるぐる回るお星様に惑わされながらも階段を降りると、また一目散にとっとこ駆け出して、何とか寮の玄関を抜けた。

(ここまで来れば大丈夫、なのです)

ほっと一息ついてトコトコと歩き出すと、今まで知らなかったことが見えてきて、

(あ、こんなところにお花が咲いてるのです)

ちょこんと座って匂いを嗅いで、飛んでるちょうちょに手 (足?) を伸ばして逃げられて。

(ねこさんの生活も楽しそうなのです)

ちょうちょを追いかけていくと、いつの間にか中庭の開けたところにたどり着いちゃった。

(ここは…………いつもねこさん達がいる所だ)

ひくひくと匂いを嗅ぐと、おひさまの匂いに混ざって色んな香りがする。

(ひなたぼっこも、おもしろそう)

足を畳んで伏せると、なんだか気持ちよくて眠たくなってきてあくびをひとつ。すると、

「おい、そこでなにしてるんだ」

突然の声にびっくりすると、

「あっ、三毛猫さんだ」

中庭でよく見る三毛猫さんが、私のことを見下ろしてた。

「お前、見ない顔だな? どこから来た? 」

「えっと、あっちから」

寮の方を前足で指すと、

「そうか、ならここの掟を教えてやろう。おれさまはここのボスだ。ここで暮らしたかったらおれさまの言うことを聞くんだな。そうだな、ここに居させてやる代わりに、週に一回ニボシを持ってこい。それが家賃だ」

「えっ、家賃がいるの? 」

「そうだ、おれさまはここのボスだからな」

ねこさんの世界も大変なのですね……

「うーん、なんとか探してみるのです」

「おう、待ってるから…………ん? 」

急に三毛猫さんが振り返る。かと思えば一目散に逃げ出して…………うわぁっ!? 何かが来るのですっ!?

「△✕〒※〜」

こ、これは…………おっきなかおり先輩!? と、とにかく逃げるのですっ!?

必死に走って、走って、おもいっきり走って、なんとか安全なとこにたどり着いてほっと一息。ふぅ、危なかったのです…………ねこさんから見るとあんなに怖く見えるのですね…………今度からねこさんは追いかけないようにするのです…………

そして一息ついてから分かったのは、いつの間にか木の上に登っちゃってたということで……

(ゆ、ゆらゆらしてて怖いのです…………)

「にゃー……にゃー……」

助けてーと叫んでみても、声に出るのは全部にゃーにゃーだけ。ど、どうしよう…………

「あれ、ねこ、さん? 」

聞き慣れた声に下を向くと、

(まほ、ろ……? )

なんで私、まほろの声は分かるんだろう? 他の人のは、なんて言ってるか分かんないのに……

「降りられないの? なら、こっち、飛び降りて。受け止める、からっ」

手を広げてこっちこっちと合図するまほろ。し、信じても、いいんだね? ……えいっ。

「わっ」

「にゃっ」

べしん。目測を誤って拡げた腕の中じゃなくて、まほろの顔にダイビング。

「わわ、わっ」

あたふたするまほろ。そのままコケちゃったけど、私のことは離さない。

「よかった、無事、だね」

「にゃあ」

(ナイスキャッチなのです)

寝っ転がったまほろの胸に抱っこされて、上から顔を見下ろすと、

(あれ、泣いてた? )

目がなんだか腫れぼったくて、

「…………ねこさん、わたしのこと、分かるの? 」

まほろの問いかけに短く「ニャ」と答えると、そのまま歩いてまほろのほっぺたを舐める。

(もう、まほろはいっつも泣き虫なのです)

「あはは、もう、くすぐったい、よっ」

まほろは起き上がって私のことを抱っこし直すと、

「あれ、ここ、ケガしてる……まってて」

と、ポケットからばんそうこうを出して私の前足に貼る。なんだかむずむずするのです……

「…………きみ、なんだか、いつきに、似てるね」

私の事をじいっと覗き込んだまほろが、そんなことを言う。

(あれ、まほろは、気づいてるのです? )

「って言っても、分かんないよね。 …………いつきはね、私の大事なお友達、なの。ちょっと危なっかしくて、すぐどこか行っちゃうの。…………今も探してるん、だけど、見つからないの…………どこ、行っちゃったんだろ……」

(あ、やっぱり気づいてないのです)

まほろの不安そうな顔を見上げると、今にもまた泣き出しそうで、

「プリンのことで、あんなに怒んなきゃ、よかった…………プリンなんて、また買ってくれば、いいんだし……隠さないで、一緒に、食べればよかった…………いつき…………どこ……なの…………」

またぽろぽろと泣き始めたまほろのほっぺたを、ぺろぺろと舐めて慰める。

(まほろ、心配しないでほしいのです。私はここに居るのです)

「…………帰ってきたら、いつきに、謝りたいのに…………私の、せいで…………」

…………もう、まほろは心配性なんだから。私がいないと、ほんとに泣き虫。私よりとてもおっきいのに、なんでこんなによく泣くんだろう?

(でも、そんなまほろも可愛いし、大好き)

チョイと前足をまほろの胸にかけて背伸びすると、まほろのほっぺたにチュッとキスする。

……あ、あれ、なんだかゆらゆらするのです…………?




「…………つき、い…………き…………いつ、き……」

…………ん、あ、あれ…………? ふかふか……?

「いつき、おきてっ」

あれ?

「まほろ? 」

目を開けると、そこには心配そうに覗き込むまほろの顔。

…………あれ、私はねこさんになったんじゃ…………あ、あれ? おてても普通だし、人間の身体だ…………

(夢、だったんだ…………)

「いつきっ」

「わっ」

ま、まほろ、抱きつくのはいいけど、苦しいのですっ…………!?

「よかった…………布団に突っ伏して、ずっと寝てたから、…………もう、心配で……」

そっか、あのまま寝ちゃったんだ…………

(それにしても、不思議な夢だったのです……)

今でも前足の感覚は覚えてるし、まほろに抱っこされた時の柔らかさも覚えてる。

「…………もう、まほろはやっぱり泣き虫なのです」

頭をなでなでする為に手を伸ばすと、ヒラリと何かが落ちる。ベッドの上に落ちたそれは絆創膏で、まほろの持ってたやつと似てて。

…………まさか、ね。

「ほらまほろ、濡れたタオル持ってくるから早く泣き止むのです。そんな顔じゃ、プリン買いにいけないよ? 」

「いつき……」

「まほろの好きなほうじ茶プリン、買ってあげるのです」

「いつきぃ…………」

また泣き始めちゃった…………もう、ほんとにまほろは、しょうがないのです。

これがいつのことかは皆様のご想像にお任せします。

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