樹を探しに。
「………………結局、樹は私たちんとこ帰ってこなかったね。」
「ああ………………………………なんだか、心配だな。」
私とエリカは、一年生の廊下を歩いていた。ほんとなら、私たちの間に樹がいて、両横から樹をなでなでするのが楽しみなのに。
「じゃあ、わたしはこっちだから。」
「ん。………………後で樹に、悪かったって言っといてくれ。」
「わかった。」
そう答えたはいいけど、私の中ではなんだかもやもやしたのが残ってて。………………そもそも、樹は今日は学校に来ないんじゃないか、そんな気がして………………目の前の、空っぽの樹の席をじっと見つめていた。
「おはよっ………………あれ、まほろんどうしたの?」
「あ、八千流おはよ。………………うん、ちょっと樹とケンカしちゃって………………」
「ふーん、ってかまほろんと樹なら圧倒的にまほろんの方が勝つでしょ。なーに気にしてんのさっ。」
バンと背中を叩かれて思いっきりむせる。
「けほっ、こほっ、い、いきなりなにすんのっ!?」
涙を浮かべなからじとっとした目で八千流を見る。
「大丈夫だって、樹のことだからきっとご飯食べれば忘れちゃってるって。そんなに心配しなさんな。」
「そ、そうかなぁ………………」
樹のことだから有り得そうだけど………………でも、なんだろっ、胸騒ぎが………………
その時、教室の外が騒がしくなる。
「お、なんだなんだ?」
八千流が教室の外を覗きに行く。
「ったく聞いてないよ………………こんな勝手なことされると困るんだけどなぁ………………」
と、担任の先生がぶつくさと文句を言いながら教室に入ってくる。
「きりーつ、れーい」
日直のテキトーな挨拶でホームルームが始まって、口を開いた担任の先生がいの一番に言い出したのは、
「えー、椎原さんですが、療養の為にしばらくお休みになります。」
「えぇっ!?」
思わず立ち上がって声を上げる。
「四条さん、まだ話の途中ですよっ」
「す、すいません………………………………でも、樹………………椎原、さん、はっ………………昨日、までっ、元気、でした、けどっ………………」
「………………とにかく療養するから休む、とだけ伝わってます。………………親御さんのご希望なんですよ。」
「はぁっ!?」
………………い、いつき、どうしちゃったのっ!?
その後のお昼休み、エリカを呼び出して状況を説明した。
「なんと………………イツキは、療養か………………妙だな。」
「エリカも、やっぱりそう思うよね。………………樹が怒って実家に帰っちゃったのかな、やっぱり………………」
「うむぅ………………とりあえずその辺のことは、イツキ本人に聞かないと分かんない、か。」
「どうする? 樹の家まで行ってみる?」
「それがいいだろうな。………………会ってもらえるか、いや、会わせてもらえるかは、分からないけど………………」
エリカが頭をかく。
「………………こんなことなら、イツキの家がどこにあるのか聞いておけばよかったな………………」
「………………エリカ、次の土曜日空いてる?」
「ん、まぁ一応………………………………ってマホロ、まさか………………」
コクリとうなづく。
「………………夏休みになったら遊びに来てって、イツキが書いてくれた地図があるの。」
「そうか、それを見れば………………」
「ただ、ちょこっと遠いし、行きづらいとこみたいなの。………………エリカは、覚悟ある?」
「覚悟? ………………あぁ、イツキに会う覚悟か。 そんなもん、とっくにできてるさ。」
「………………わたしも。」
手のひらをぎゅっと握りしめる。………………ずいぶんと自分勝手なのは分かってる、それでも………………樹に、まだ言ってないことが多いもん。直接、私の口から言いたいことなら、山ほどある。それを、樹に伝えに行くんだ。
「それじゃあ土曜日、昇降口のところで。」
「………………ああ。」
「………………なぁ、マホロ………………少し遠いとこで、行きづらいとは言ってたけど………………」
「う、うん………………私も、予想外だった………………」
………………まさか、樹のおうちがディスティニーランドみたいな大きなおうちだなんて………………
「と、とりあえず入ってみる?」
「………………いや、そもそもあの守衛が入れてくれるかどうか………………」
門のところで待ち構えてる警備員さんを前にして、私たちの心は早くもポッキリ折れそうだった。




