お風呂あがりには。
「さて、とっ。………………マホロ、服ぐらいは自分で着れるか? 」
「ま、まぁ、それぐらいなら………………」
「ん、ならそっちは自分で頼む。………………さすがに、誰かの服を着させるのは私にはできない………………」
「う、うん、わかってる、よっ………………」
マホロがちょっとだけ拗ねる。でも、お風呂上りでほんのり湿って火照ったほっぺただと、照れてるのかどうかなんて、見ただけだと分かんない。
「………………それだけ動ければ、大丈夫かもな」
「かもねっ。…………………それにしても、さっきまであんなに調子悪かったのに、今はちょっとだけフラフラするぐらいだし………………さっきのは、一体何だったんだろうね? 」
「ん、………………始まる前は、少し不安定になるって聞いたことある。特にマホロは、昨日もぐっすり寝てないでしょ? だから、ちょこっとだけバランスが崩れたのかも」
「ちょこっと、かぁ………………だと、いいんだけどなぁ………………」
マホロが自分のお腹をさすりながらつぶやく。お肉のあんまり付いていない真っ白なお腹、日焼けしてないおへその下へと目を移せば、対照的にそこだけ『黒』い世界がひろがって
「………………エリカのえっち」
くるんと後ろを向かれた。………………いや、私はお腹を見てただけで………………
「………………エリカのへんたい」
「む、へんたい、って………………失礼だな………………」
「………………自分にもあるでしょ? なんで私のなんかジロジロみるの………………?」
「じ、ジロジロだなんて………………人聞きの悪い………………」
マホロはじぃっと疑いの眼差しを向けてくる。………………むぅ、なんだよその目は………………
「………………………………でも、ありがと。私のとこ来てくれて、お風呂も手伝ってくれて」
「手伝ってって言っても、ほとんど自分でやったじゃないか。私なんて、ただ押しかけて図々しくも風呂を使っただけだぞ? 」
「ふふっ………………なら、そういうことにしておこっか。」
その時、マホロのお腹からかわいい音が聞こえてきた。
「あぅ………………き、聞こえちゃった?」
「………………いや、なーんにも?」
「………………気を使ってくれるのはありがたいけど………………お、おなかすいた………………」
「そっか、お腹すいたか。」
………………もう7時前だもんなぁ、そりゃお腹も………………って、あぁっ!?
「も、もうっ、びっくりしたぁ………………どうしたのっ、急に大声出して………………」
「………………ごめん、イツキのこと忘れてた………………今、マホロのために料理つくってて、その見張りをイツキに頼んでたんだけだ………………うぅ、マホロとのお風呂が楽しすぎて、すっかり忘れてたし………………」
「え、エリカって料理できるの?」
「それなりに、な。………………と、とにかく行って来るっ。」
髪を乾かすのもそこそこに、猛ダッシュでキッチンへと向かう。嫌な予感がしてキッチンに駆け込むと、何人かがキッチンの前でたむろしてて、
「はいちょっとごめんよ………………イツキ、戻ったぞ。」
「じー………………あ、エリカおかえりっ。」
「おう、ただいま。………………それで、スープのほうは………………っと、ちょっと煮込みすぎたか。」
お玉ですくってちょっと味見。………………うん、味が濃すぎる。
「イツキ、もういいぞ。お風呂行ってこい。」
「わかったー。」
とてててーっとかけていくイツキを軽く目で追うと、まずは煮詰まったスープを水で薄めていく。マホロは薄味が好きって言ってたし、とりあえずはこれぐらいで………………
「あ、あのぉ………………」
「………………………………ん?」
声をかけられて振り向くと、そこにはフルートを握りしめた子と、鼻をひくひくする子。………………あれ、どこかで見覚えが………………
「ねぇねぇさっきから何作ってるのー? ひーちゃんにも教えて? あとおいしそうだから食べさせてっ!!」
「ちょっとっ………………もう。………………そ、その、フルートの練習をしていたら、どこからか美味しそうな匂いが流れてきて………………」
「知代ちゃんのお腹もさっきから楽器みたいに鳴りっぱなしだもんね。」
「ちょっと緋咲ちゃんっ!?………………それを言うなら、緋咲ちゃんもこっそり味見しようとしてたじゃない………………」
「ぎくっ」
「あーそっか、匂いが漏れてたか………………ごめんな、お腹空かせちゃったか。」
「そーですよっ。私達なんか匂いがきになって宿題ほっぽり出して来たんですから!!」
二人の後ろからポッチャリした子が力説する。………………いや、あなたの場合は宿題よりシューマイの方が好きそうだけどね………………
「………………それは失礼したな。だけど、このスープはまだ完成じゃないんだ。………………………………そうだな、迷惑かけちゃったし、味見してもらおうか。」
私は、鶏肉を取り出してから、スープを小皿に取り分けて居並ぶ人たちに配り始めた。




