表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/87

カーテン・コール。

………………エリカと、お風呂。それも、私の部屋の、狭いシャワールームで。

………………最初に提案された時は、気恥ずかしさが大幅に勝った。けど………………私自身、寝汗でべとっとしてるし、それに………………ひとりぼっちは、寂しいから………………。

「ん、エリカ………………入るよっ」

一応断ってから扉を開ける。脱衣場には、私のバスタオルをちゃっかり拝借したエリカが待っていて。

「………………マホーロ、脱ぐの手伝う。」

伏し目がちにそう言って、服に手をかけてくる。それを遠慮がちに振りほどいてから、

「………………うん、まだ大丈夫………………。まだ、服ぐらいだったら自分で脱げそう、だから………………向こうで、待ってて?」

そう声をかけると、一瞬むっとした顔になって、後ろを向いてバスタオルを解く。立ち去り際に寂しそうに

「………………じゃあ、待ってるから。」

って言われたのが、心にズキンと響いて。………………私、エリカに悪いこと、してるのかな………………って。

地味な私服を解くと、オトナっぽい下着が顔を見せる。しっとりと汗の染み込んだ紺色の布地からは、むんわりとしたオンナノコの香りが漂って………………ここに洗濯機があったら即座に放り込んでタイマーをかけたいぐらい。最もそれは、隣にきちんと並べられたエリカの『抜け殻』にも同じ事が言えてっ………………

(………………湿ってる。………………練習、ハードだったのかな………………)

自分の着替えを並べるために、何の気なしに掴んでずらそうとして、その手を動かせない。………………同じ『汗』なのに、その手のひらに感じる『熱の残り香』は私と全く違って。

(………………って、そんなこと考えてる場合じゃなかった………………)

最後の一枚を両足から引き抜いて、ハンドタオルを胸に押し抱いてシャワールームの扉を押す。

「………………遅い、って言いたいけど、まぁ許す。」

一糸まとわぬエリカが、半歩歩みを進める。

「………………先に、頭と身体………………どっちから洗う?」

「………………んっと………………エリカのやり方に任せる。ただ………………プライベートなとこは自分でやらせてね?」

「わ、分かってるって………………」

………………………………なら、なんでそんなに残念そうなの? 怒るよ?

「………………ん、なら、背中から………………」

その言葉に背中を向けると、なんの予告もなくお湯が降ってくる。

「ひゃっ!? ………………も、もうっ、一声かけてよっ!?」

「す、すまないっ………………じゃ、じゃあ、始めるから………………マホーロは、自分の身体洗って?」

「う、うん………………」

ボディーソープをタオルに付けて、つま先からそっと汚れを泡に馴染ませていく。背中に時おり感じる、柔らかな弾力のことは極力頭の中から追い出してっ………………て、言うか………………エリカ、わざと押し付けてない?

「マホーロ、そんなに動くなって………………」

「だ、だって、くすぐったいし、………………おっぱい、当たってるっ………………」

「し、しょうがないだろっ………………せ、狭いんだから………………」

「樹と入った時ですらちょっと狭かったしね………………おっきな私達二人だと、身動きするのも難しい、かな………………」

エリカの手が止まって、タオルもずり落ちる。

「………………………………エリカ?」

その問いかけの答えは、私の胸に回された手。下から上へとスススと這い上がる。

「ひゃっ!? ………………も、もう、エリカ、悪戯しないでっ………………」

「だ、だってマホーロが………………樹のことを言い出すんだもの………………ちょっとだけ、嫉妬した。」

「あぅ………………ご、ごめん………………」

………………そ、そりゃあ嫉妬する、よね………………反省。

「………………マホーロ、ちょっとそっちにズレられる? ………………ふふ、私の背中もお願いしようかな。」

「あ、うん………………」

僅かに作ったスキマをかいくぐってエリカの後ろに回る。途中、お互いの『弱いトコ』がぶつかって変な声も出たけど………………なんとか気を確かに持って、エリカの背中にタオルを当てる。………………あと、さっきの仕返しにちょっとだけ胸も寄せる。

「………………マホーロ、タオルと胸とどっちかにしてくれ………………」

「せ、狭いから、無理っ………………」

そんなこんなで、お互いヘトヘトになりながら全身を洗い終わる。

「………………ふぅ………………さて、と。次は髪かな。」

エリカがそう言うと、自分の髪にシャワーを当て始める。すかさず私がシャンプーを泡立ててエリカの頭を丁寧に泡まみれにしていく。

「………………ん、その辺でいい。次はマホーロも。」

「ううん、先に泡流しちゃお?その方がいいでしょ?」

「そ、そうか? なら、お願」

「あ、エリカおでこになんか付いてるよ?」

「ん、ほんとか?」

「うん。」

そう言うと、おでこのゴミを取るふりをしてすかさず唇を奪う。少しの間ぽかーんとしていたエリカだったけど、

「………………そうか、ハメられたか。」

「ふふっ。………………さ、お湯かけるよ。」

「あ、待てっマホロ」

言い終わる前にざぁっとシャワーの雨を浴びせる。泡を残さないように丁寧に流すと、エリカが髪をかき分けて私のことをニヤリと眺める。

「やったな?………………ならこっちもお返し………………と行きたいところだが………………まぁいいか。さ、洗ってやるから頭貸しな。」

「ちゃんと返してよ?」

と、首を持って外す真似をするけど、真顔でシャワーヘッドを当てられた。………………ちぇっ、エリカ、つまんない。

「ん、洗い流すからな。」

ちょっと早めにシャワーを当てられて、私の視界が曇る。

「………………シャワー中だし、聞こえてないよな………………実は、『マホロ』ってちゃんと言えるけど、面と向かってちゃんと呼ぶの恥ずかしいから、今まで訛ってるフリしてた………………ごめん。」

エリカの呟きは、シャワーのカーテンの中でもはっきりと聞こえて。

「………………さて、終わりっと。」

「ありがと。………………『エーリカ』。」

「………………む、『マホロ』は真似しなくていいっての………………///」

そっと扉にかけた手が、『エーリカ』の手と重なり合って、二人で脱衣場への扉を開けた。

ほんとにここ最近いっつんが置物扱いされてる気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ