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雲行き。

「磨穂呂、今日のご飯はなんだっけ?」

「えーっとー、確か………………今日は、スパゲッティ、だったかな。」

「わぁいっ。スパゲッティだっ」

「もう、樹ったら。そんなにはしゃいで………………確か、だからね?違うものかもしれないよ?」

「むぅ………………………………違ったら磨穂呂のことたたくからね?特にお肉だったら磨穂呂にかみつくからね?」

「なんでっ!?」

た、叩かれるのも噛みつかれるのもちょっと嫌だなぁ………………うぅ、どうか今日のお昼はスパゲッティでありますようにっ。

「………………………………そういえば磨穂呂、エリカはお昼になったら帰ってくるのかなぁ。」

「うーん、どうだろねぇ………………案外、お弁当とかなのかもしれないよ?」

そう答えたはいいけど、実のところ私は少しムッとしてた。………………………………せっかくのふたりきりなんだし、私以外のことを口にするなんて………………………………樹の、バカ。

「………………………………あれ、磨穂呂?顔赤いよ?どうしたの?」

「な、なんでも、ないっ………………」

「そーお?………………おでこ見せて?」

「こ、こう………………?」

その場にしゃがんで前髪をかきあげる。樹はすかさず私のことを見下ろして、

「じー………………………………」

「い、いつき………………?そんなに見られると、なんだかおでこがムズムズするんだけど………………」

「じー………………………………磨穂呂、おでこにぶつぶつができてる。」

「にゃっ!?」

慌てておでこを触ってみる。………………こ、これ、ニキビだ………………

「そ、そんなのは見つけなくていいからっ!!」

元通り前髪を下ろすと、樹を置き去りにしてずんずんと一人で進んでいく。慌てて樹がちょこまかと付いてくるけど、それを引き離すようにもっと大股で歩いていく。

「ま、まほろ、まって、はやいよっ」

「………………樹が遅いだけでしょ?」

「ひ、ひどいっ………………確かにわたしはチビだけどぉ………………ま、まほろがいじめるぅ………………」

「………………ふん、だ。」

………………樹のバカ。私とふたりきりなのにエリカのこと言い出した上に、おでこをめくってニキビまで見つけるし………………ほんっとに、樹ったらおバカなんだから………………

………………なーんでこんなチビちゃんを好きになっちゃったんだろ………………それこそ、エリカみたいにおっきくてちょっととぼけた感じの子が気になるのに………………それこそ、樹なんてちっちゃくて、抱っこすると暑苦しくて、勝手にどこかいなくなるし………………首輪でも付けて飼っておきたいぐらい。

「あ、あの、まほろ………………?」

「………………………………なに?」

「ひぅっ!?………………………………あ、あの、暑いなら………………そこに自販機あるから、冷たいものでも、って……………」

「………………いい、大丈夫。」

「で、でも、………………お日様にずっと当たってたから、磨穂呂は熱中症かもしれないし………………」

「大丈夫って言ってるでしょ!!」

思わず口をついた激しい言葉にハッとする。目を見開いて固まった樹は、そのまま大声で泣きじゃくる。

「う、うわぁぁぁん、まほろが、怒ったぁぁぁ」

「い、いつきっ………………………………ごめん、ごめんったらっ!!」

「ま、まほろの、バカぁぁぁ!!」

辺り一帯に響くような声で樹は泣きじゃくる。今度はうってかわって私の方がおろおろし始める。

「い、いつきっ、ほら、向こうで何か飲もっ!?」

だ、誰も見てないよねっ………………慌てて樹をズルズルと引きずるようにして、自販機のところまで連れていく。

「ほ、ほら、好きなの選んでいいからっ………………………………ん?」

樹を連れていくと、自販機の前には既に先客がいて、………………………………自販機を蹴飛ばしていた。

「あーもー!!なんで商品が出てこない上にお金すら返さないのよっ!!あたしのなけなしの1000円返しやがれっ!!」

赤毛の髪の人が、物凄い形相で赤い自販機をいじめていた。

「い、いつき、行こっか………………」

「う、うん………………………………あの人絶対ヤンキーだよぉ………………」

樹の口を慌ててふさぐ。けど、赤毛の人はくりんと首を回して、

「誰がヤンキーですって!?」

自販機にずがんとパンチ一発。

「ひいっ!?」

その時、自販機からガコンとジュースが落ちてくる。

「………………んぉ?なんだ、ちゃんとお釣りもジンジャエールも出るじゃない。………………って、ええっ!?」

ジュースは確かに落ちてきた。………………それも、たくさん。

「え、ちょっと、これどうすれば………………………………ああもうっ、どうせならお金がどさーって落ちてきなさいよもうっ!」

それから、私たちの方を振り向くと、

「………………あはは、私がぶっ壊したこと、黙っててね?ほら、これあげるから………………」

と、たくさん出てきたジュースの山から適当に取り出して無理やり押し付けられる。

「そ、それじゃまたねっ!?」

慌てた様子で逃げ………………走り去っていく。それから間もなく、ツナギ姿の用務員さんがすっ飛んでくる。

「………………………………お前達か、自販機を壊したのは………………?」

「い、いえっ、私たちはなにも………………」

「散歩してたら、ジュースとかたくさん転がってて………………」

「ほう………………………………?」

疑いの眼差しが向けられる。………………よ、良かった………………慌ててジュースを戻しておいて………………

「それで、誰か怪しい奴を見なかったか?」

「あ、さっき向こうに走っていく人を見たような………………………………一瞬だったんでよく見えなかったですけど………………」

と、校門の方を指さす。

「わかった。」

と、それだけ言って用務員さんは走っていく。

「………………あー、………………行こっか………………」

「うん………………………………」

………………………………わ、私たちは、なにも、見てません、よっ………………?

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