とてててて。
「しょぼーん………………」
「ほ、ほら樹………………元気だしなよ、ねっ?」
「………………………………ぐすん、わたし………………ネコさんに、きらわれてるんだ………………」
「そ、そんなことないって………………たまたまだよ、たまたま………………………………それに、樹が『じー』ってするから、みんな怖がっちゃうんだよ、きっと………………」
「や、やっぱり嫌われてるんだ………………しょぼーん………………」
あぅぅ………………ど、どうしよう………………………………
さっきからしょぼーんっとしっぱなしな樹を連れて、私はまた中庭の小道をてくてくと歩いていく。………………………………それにしてもこの中庭、ネコが多いんだなぁ………………首輪付いてるのも居るし、もしかして寮生の誰かが飼ってるのかな………………………………?でも寮って、ペット大丈夫なのかな………………普通なら禁止だけど………………
「ネコさん………………」
樹は相変わらずしょぼんとして下を向きっぱなし。しかもだんだん斜めに歩いていって………………………………もう、ぶつかるよ? 慌てて腕を引いて立木を避けると、そのまま私の方へと引き寄せる。………………樹には、私が居ないとダメなんだから、ね。
「ま、まほろぉ………………」
「はいはい、泣かないのっ。………………後でケーキ買ってあげるから。」
「………………………………イチゴの載ったショートケーキがいい。」
「はいはい。」
樹の頭をさわさわと撫でる。………………………………こ、これがお姉ちゃんの気分ってやつかぁ………………こ、これはいいもの………………クセに、なりそう………………
「………………そうだ、もう一回ネコさんと遊んでみる?」
「え、えっと………………」
樹がそわそわする。ネコさんと遊びたいってのが半分と、怖いってのとまた引っかかれるんじゃないかっていう怯えとが半分づつ、なのかな。
「………………………………大丈夫。私が隣にいるから。樹だって、ネコさんとケンカしたいわけじゃないんでしょ?………………『じー』しなければ大丈夫だよっ。ねっ?」
「………………ま、磨穂呂がついててくれるなら………………………………わ、わかった、行くっ。」
樹が、顔を上げて私の手を引く。………………うん、とりあえずは大丈夫かな。
「ほらほら、走らないのっ。………………転んだらまた水道んとこに逆戻り、だよ?」
とっとことっとこ走っていく樹のあとを小走りで追いかけていく。樹と私、二つの違うコンパスで進んでいくその先にあるのは、さっきの茂みと開けた平地で、
「………………えっと、まずは猫じゃらしをもって………………ネコさーん、こっちだよー?」
樹がしゃがみこんで、そばにあった猫じゃらしを手折って茂みの向こうに向かってふりふりする。
「………………あれ?ネコさん?」
樹が首を傾げる。どれどれ?と真上からのぞき込んでみると、
「………………うーん、ネコさんはみんなお昼寝中みたい。」
「えー………………まだお昼じゃないのに?」
「ネコさんは寝るのがお仕事みたいなものだからね………………他のとこ行こ?」
「うん………………………………ちぇっ、」
樹が猫じゃらしをぽいっと投げる。………………あ、そういえば、モモはどこいったんだろ………………
「うにゃ?」
呼んだ?とばかりに、横の茂みからモモがひょこっと出てくる。
「おまえはほんとにタイミングいいね………………ねぇモモ、おまえの仲間たちが集まってるとこに案内してくれない?」
「うにゃあ………………」
いいけど………………とでも言いたげなモモの視線を追うと、樹の手元にある煮干の袋を追っていた。………………あ、そういえばさっき樹に渡したんだっけ。
「樹、モモにリベンジしてみる?」
ビクッと震えると、樹は袋を開けて煮干を摘むと、モモの前に差し出す。すぐに食いついたモモはしばらくかじかじした後で、「こっちだよ」と言うようにニャンと鳴いて、とてとてと歩いていく。
「あ、待って………………磨穂呂、行こ。」
「う、うんっ」
とてとて、とことこと早足で歩くモモの後ろを、こっちも早足な樹と、大股で歩く私がついていった。




