みぃつけた。
モモを抱いて茂みを抜けると、そこには………………
「………………ネコ、だまり?」
狭い日なたに、ネコがぎっしり集まって毛繕いやひなたぼっこの真っ最中。そして、その真ん中に居座っていたのは、
「………………………………いつき?なにしてるの………………?」
スフィンクスみたいなポーズのまま、茶トラなネコとにらめっこ。
「………………………………じー………………」
「うにゃっ!!シャー!!」
あ、樹が引っかかれた。
「いったーい!!ネコさんのバカー!!」
樹が大声を出したせいか、周りに集まってたネコは一目散に距離を置く。
「………………樹、大丈夫?」
ぐるっと空いた隙間を縫って樹に近寄ると、
「あ、まほろぉ………………………………」
ほっぺたにざくっと切れた跡。
「もうっ、勝手にいなくなって………………………………まずはそのキズの手当てしないと。」
樹の手を握って外の水道まで走っていく。そして嫌がる樹の頭を持って、無理やり水で洗い流す。
「うわぁぁっ、顔にお水がっ」
「こらっ!大人しく、してっ」
私までなんだかびしょ濡れになりながら、なんとか樹のほっぺたを洗い流すことができた。
「はい、ほっぺに絆創膏はるから動かないで。」
「ええっ………………………………」
「はいはい、そのまま。」
手持ちの絆創膏を三つ、樹の顔にぺたぺたと貼る。
「ふふっ、なんだか樹、ネコさんのお髭みたい。」
「………………………………」
むすっとしてほっぺたを気にする樹。………………それにしても、まさかネコさんに埋まってるだなんて………………
「………………ネコさんににらめっこで負けた。」
「いやいや、にらめっこって………………」
「………………だって、こっちをじぃって見てくるんだもん………………」
「だからってネコさんに『じー』はダメだよぉ………………目を合わせると、ケンカしかけてるって思われるんだって」
「ええっ!?」
樹が文字通り飛び上がる。………………だんだん樹もマンガっぽくなってきたなぁ………………
「………………………………かんさつ、ダメなの?」
すっかりしょげる樹を見て、なんか可哀想になってくる。
「うーん………………………………そうだっ、遠くから見てるなら大丈夫じゃない?」
「えー、もっと近くで見たいよぉっ」
「そしたら樹、また『じー』するでしょ?次はお尻引っかかれるかもよ?」
「うーん………………ネコさん………………ネコさん………………」
「………………あのさ樹、『じー』しないで観察ってできないの?」
「………………自然にこうなっちゃうんだもん。」
「うーん………………どうしたらいいんだろ………………そ、そうだっ、そう言えば………………」
さっきからずっと手に持っていた煮干の袋を樹に見せる。
「………………なにそれ。じー………………?
おさかな?」
「煮干だよ。………………これを使えば、ネコさんと仲良くなれるかも。」
「ほ、ほんと………………」
「うん。………………あ、モモ。こっちおいで。」
水道の下に出来た水たまりの水を飲んでいたモモが、呼んだ?とばかりに顔を出す。
「まずはモモで練習しよっか。………………………………はい、樹もこれ持って。」
適当にひとつまみ煮干を取り出して渡すと、私もひとつまみ持ってモモの鼻先でゆらゆらと揺らす。
「にゃっ」
間髪入れずにモモが私の手に食いつく。素早く手を引くと、満足そうに煮干をかじかじする。
「………………ほら、樹もっ。最初は、手のひらの上がいいかな。」
「………………こ、こう?」
恐る恐る手を差し出した樹を、モモはきょとーんと眺めていた。そしてその手に前脚を載せると、器用に煮干だけ取ってすたこらさっさと逃げていった。
「………………ま、まほろぉ………………ネコさんに嫌われちゃった………………?」
半分涙目な樹をよしよししつつ、
「………………うーん、お腹いっぱいなのかな?それと、多分気まぐれなんだよ、きっと………………」
私は、モモの去っていった方をじっと眺めていた。
………………んもう、モモ………………少しは空気読んでよぉ………………




