中庭のおさんぽ。
最後に敵が大爆発して、樹の見ていたアニメが終わった。
「面白かったね、樹。」
「うんっ………………あ、この後どうしよっか?」
「そうだねぇ………………………………エリカは夕方まで帰ってこないって言ってたし、それまで二人っきり………………なんだ、ね………………」
私の身体が、かぁぁっと熱くなる。………………久しぶりに樹と、二人っきり………………………………
「………………まほろ?」
「………………んぁっ、な、なに………………?」
「………………どうしたの?ぼーっとして。」
「う、ううん………………………………なんでも、ないっ………………ちょっと、疲れてるのかなぁ………………?」
慌ててそう誤魔化すけれど、樹はいつもの「じー………………」モードで私を追い詰めていく。………………………………ううぅ、そ、そんなに見られると、穴が空いちゃいそう………………………………って、樹っ!?………………そ、そんな………………近い、近いよっ!!
樹がじーっと顔を近づけてきて、ついには私の胸の横に手をついて、私を横たわらせる。それでも追撃の手を緩めない樹の前に、私は覚悟を決めた。
(………………い、樹はこんなちっちゃいからって、子供扱いしてたけど………………………………そ、そういうことも、知ってたんだっ………………)
この後散らされるであろう『大切なモノ』のことを考えて目を閉じると、こつん、と私のおでこに何かがぶつかる。………………………………あれ?
「ふんふん………………………………お熱はないみたい。」
………………………………あ、あの、樹?もしかして、熱を計ろうとおでこを近づけただけ………………?
「うーん、お熱がないとすると………………磨穂呂、お腹は痛くない?」
「し、知らないっ、もうっ………………」
私は立ち上がると、樹を押しのけてぷんすこと出ていく。
………………………………わ、私の一世一代の覚悟を、返してっ!!
「………………磨穂呂、どうしたの?機嫌悪いけど。」
「………………………………ふんっ。」
私は、どんどんと冷めていく身体を引きずって中庭へと足を向ける。何故かと言われれば理由はないけど、ただ………………樹がよく、中庭に行くって言ってたから、なんとなくそれが頭に残ってたのかもしれない。
「………………………………ん、あれ………………?ねぇ磨穂呂、何か聞こえてこない?」
「えっ………………」
そう言われて耳をすますと、微かに綺麗な音が聞こえてくる。………………これは、楽器の音?
「何だろ、行ってみよう。」
「あ、待って樹っ。 」
音がする方に勝手にとことこと歩き出す樹を追いかけて中庭の茂みを突っ切ると、樹の出すガサガサという音に驚いたのか音がぴたりと止む。
「もう、樹………………置いてかないでよ………………って、あれ?」
樹のあとを追って茂みを抜けると、そこに居たのは、
「あぅ………………」
「おやぁ?茂みの中から誰か出てきたぞ?」
「あっ………………えっと、ひーちゃんさんと、………………」
「知代ちゃんだよっ。」
ひーちゃん先輩がさっくりと説明する。………………あれ、知代先輩の様子が………………
「ねぇねぇ知代ちゃんっ、どうせならこの子達にも聞かせてあげよーよ!!」
「えっ、その………………………………ひーちゃん以外にも………………?」
「うんっ、だって知代ちゃんのフルートすっごく上手だもんっ。ねぇねぇそこの二人っ、知代ちゃんのフルート聞いてってよ!!聞いてけ!!聞かせたれ!!」
「ふぇっ!?………………い、樹………………どうする?」
「………………じー………………」
樹の視線を辿ると、その先には知代先輩が握るフルートがあった。
「ひゃうっ………………………………そ、そんなに見つめられると………………」
「樹、じーやめっ。」
頭をぺしんと叩くと、樹の目が元に戻る。
「………………あ、ごめんなさい………………でも気になる………………このキー押したらどうなるのかな………………」
樹がうずうずする。………………いじってみたいんだね………………でもダメだよー?
「………………すいません、樹が興味持ってるみたいなんで………………いいですか?」
「あっ、はい………………………………もう、ひーちゃんのバカぁ………………」
最後の方で微かにひーちゃん先輩を睨むと、知代先輩はフルートに口をつける。流れてくる調べは、川のようで。うっとりと聞き惚れていると、あっという間に演奏が終わってしまう。
「ど、どうでした…………………………?」
「すごーい!!知代ちゃんすごーい!!」
「………………………………もう、ひーちゃんのバカぁ………………」
「………………いや、ほんとにすごかったです。」
思わずほうっと息を漏らす。
「そ、そう………………ですか?」
「あっ、知代ちゃん照れてるー。」
「も、もうっ、ひーちゃんったら………………」
真っ赤になる知代先輩と、あはは、と笑うひーちゃん先輩。
「行こっか樹………………………………お邪魔しちゃ悪いし。」
「え、磨穂呂待ってよぉ………………あのボタンぽちぽちしてみたいよぉ………………」
「ダーメ!!樹のおもちゃじゃないんだよ?」
ダダをこねる樹を無理やり引っ張って、私たちはその場を後にした。
今回はひーちゃん誕も兼ねてますよん。
作者さんがお忘れでしたので。




