起き抜けの、イタズラ。
朝日がカーテンの隙間から射し込んで、私はそっと目を開ける。隣にあるはずの柔らかで温かな感覚を求めて手を伸ばせば、確かにそこに居て。
「おはよう、2人とも。」
そっと両脇にキスをする。壁の時計を見れば、もうそろそろ7時になるとこ。………………あれ?エリカはそろそろ起きないと不味いんじゃ………………
「エリカ、エリカ………………………………起きて。もう7時だよ………………」
「うぅ、んっ………………マホーロ………………?なんで私の部屋に………………?」
「もうっ、寝ぼけてるの?………………………………ここは、私のお部屋、だよ?」
「………………んっ………………?」
エリカはそっと身体を起こして、目をしょぼしょぼさせる。………………あ、目の焦点が合ってきた。
「………………そっか、そうだったな………………昨日はマホーロの部屋にお泊まりして、イツキと一緒に寝たんだったな………………………………。」
事もなさげにそう言って、エリカは壁の時計を見る。そしてまた布団にもぐる。
「………………え?起きなくていいの?」
「あと30分だけ………………練習は8:30からだし。」
「一時間で支度できるの?………………顔洗って、ご飯食べて、着替えて、集合するのに………………。」
「何とかなる。」
ごろんと寝転がるエリカに、私はちょっと心配になる。………………………………そ、そんなルーズでいいの………………?
「ダメだよ、遅刻したら怒られるから。」
ゆさゆさとエリカを揺すると、エリカはますます布団の中に潜り込む。………………ひゃっ!?どこ潜ってるのエッチ!!
「………………………………お、起きてくれたら、おでこに………………ちゅー、してあげよっかな………………」
ボソッと呟くと、エリカが目から上だけ出して呟く。
「………………………………おでこじゃなくて、唇がいい。」
「えぇっ!?………………………………さ、さっきほっぺたにしてあげたから………………」
「やだ。唇にしてくれないと起きない。」
エリカが駄々をこねる。………………………………あ、これ絶対楽しんでるやつだ………………
でも、起きてくれなきゃしょうがないし、諦めて私はエリカの布団を少しめくる。………………………………わ、私がしたいんじゃなくて、これはエリカを起こすため、だから………………………………
「………………んっ、ちゅっ………………」
「ちゅっ………………」
エリカの柔らかな唇に、そっと私の下手っぴなキスを重ねる。…………………そう言うエリカだって、緊張してるくせに…………………………顔がプルプルしてるの、バレバレだよ。
「………………………………さ、キスしたんだから、早く起きて………………」
「………………しょうがないなぁ。」
んっ、と力を込めてエリカが身体を起こす。そうだ、樹も起こさないと。
「樹、樹、朝だよ。」
「うぅん………………キジトラが一匹………………アメショーが二匹………………三毛が三匹………………」
「………………うなされてるな。」
「………………………………どうする?ほっとく?」
「………………でもなぁ、このままほっとくのも………………」
「なら、樹の部屋まで担いでいく?」
「それも人目がなぁ………………」
「………………………………よし、やっぱり起こそう。」
今度はさっきより強めに樹をゆさゆさする。
「いーつーきー、あーさーだーよー」
耳元で叫んでみるけど、樹はすやすや夢の中。
「………………だーめだこりゃ。」
エリカがバンザイする。これは私もお手上げだね………………
「………………しかし、よく寝てるなほんと。」
エリカが樹のほっぺたをつんつんぷにぷにする。あ、それ私もやりたい。ぷにぷに。むにむに。
「………………………………そうだマホーロ、いいこと思いついた。水性ペンあるか?」
私はぎょっとする。
「え、エリカ………………………………まさか………………」
「………………ふふふ、この国には修学旅行というものがあって、そこでの恒例の儀式だと聞いたぞ?一度やってみたかったんだ。………………お、これ使っていいか?」
私の返事も待たずに、エリカは机の上から水性マーカーを持ってきて樹のほっぺたに三本ヒゲを書く。
「ぷっ………………………………え、エリカっ、や、やめたげてっ、ぷぷぷっ、」
「ふ、ふふふっ、やってみると面白いなっ………………」
悪いとは思いつつも、思わず吹き出しちゃう。
「わ、私にも、やらせて?」
エリカからペンを受け取ると、私も樹の顔にラクガキする。た、楽しい、これっ………………ぷ、ぷぷ………………。すかさずエリカがカメラを構えて一枚パシャリ。後で写真ちょうだいねっ。
「あっはっは、楽しんだらお腹空いちゃった。エリカ、ご飯食べに行こ?」
「そうだな。………………あ、でもその前にイツキのラクガキを落とさないと。もしこのまま起きてきたら………………」
「よし、落とそう。」
私は慌てて、お風呂用のタオルを手にシャワー室に入る。軽く濡らしてから樹のとこに戻って顔を軽く拭く。………………あれ?キレイに落ちないっ!?
「エリカ、もしかしてそれ油性じゃっ!?」
「い、いや、水性だから………………」
エリカからペンをひったくって見る。………………うん、水性だね。ってことは、なんで………………?
「………………う、うっすらと残ってるけど、もう大丈夫じゃないか………………?」
「………………だ、だよね………………?」
一応、もうちょっと強めに拭いてから部屋を出る。
………………………………私たちが戻ってくるまで樹が起きてこないことを、こっそり二人で願っていた。




