真夜中のヒメゴト………………?―ほんとのこくはく。
「………………………………満足したか?」
「ん、もうちょっと………………………………」
「………………………………甘えんぼめ。」
いつまで、こうしてたんだろ。私はエリカの胸に顔を埋めて、言葉を一つ一つ練っていった。………………話したいことを、一つ一つ丹念に、練り上げていく。………………こんなの初めて。
「………………あ、あの、そろそろいいか?」
「………………もうちょっと………………」
「………………さ、流石にもう………………それに、マホーロの息がなんかくすぐったくて………………………………へ、変な気分になる………………」
「………………ごめん、ありがと。もう、いいよ。」
そっとエリカの胸から顔を上げる。………………知らぬ間にもぞもぞと動いていたらしく、エリカのブラがズレて蕾が覗きかけていた。
「………………えっち。」
エリカが赤い顔して服を整える。
「………………でも、落ち着いた。今なら言える………………………………私の、こと。」
エリカがきりっと引き締まった顔になる。………………いや、そんなにしゃきっとしなくてもいいんだよ?
「………………………………結論から言うと………………私がこんな話し方になったのも、人見知りになったのも、全部『お姉ちゃん』のせいなの。」
エリカが目を見開く。………………そうだよね、『普通の』姉妹しか知らない人達には、驚きしかないよね。
「………………『お姉ちゃん』は………………『小雪姫』は、私より4つ上。運動はできたけど、勉強はそこまででも無くてね。………………それに引き換え、私は勉強もこの通りできたし………………生意気だと思ってたのかな。私のことを目の敵にしてたの。パパやママにしてみれば『お姉ちゃんなんだから』って思ってたみたいだけど、小雪姫にしてみれば、自分の妹が自分よりも愛されてるのが気に食わなかったみたいで………………その時の私はそんなこと気が付かなかったから、普通に『お姉ちゃん』って慕ってたんだけど………………………………小雪姫が6年生の時にね、好きな人が出来たの。でも小雪姫は………………小心者で臆病だったの。だからずっと言い出せずにいて、………………………………それを不思議に思った私は親切心で、その人に伝えに行ったの。『うちの小雪姫お姉ちゃんがあなたのこと好きです』って。」
そこで一旦言葉を区切る。エリカはさっきまで、ふむふむと頷いていたけど、今は目を閉じて動かない。………………むすっ。ゆさゆさ。
「んおっ、マホーロ、起きてるって………………」
「ま、紛らわしいから、ちゃんと起きててっ………………」
「わかったわかった。………………それで、伝えに行った結果どうなったんだ?」
「………………次の日、お姉ちゃんは学校でからかわれた。………………『自分じゃ言えないから妹を使いっ走りにして伝えさせた小心者』、って。学校では抑えてたみたいだけど、帰ってきたらもう、ひどく怒ってて………………私のことを引っぱたいたり、蹴飛ばしたり。そして最後には、口を塞いでこう言い放ったの。………………………………『こんなおしゃべりな口を持つ磨穂呂は死んじゃえ!!』って。………………………………ショックだった。私はお姉ちゃんのこと慕ってたのに、お姉ちゃんは私のことをそう言うなんて。………………………………その日から、私はすらすらっと話せなくなったの。………………………………これは、お姉ちゃんの呪い。だけど、私が起こした災いだから………………………………一生、解いちゃいけないの。」
「………………………………マホーロ。」
エリカはもう、言葉が見つからないみたいで。………………………………そうだよね。こんなの信じろっていう方が無理な話だし………………………………それでも、私はこの十字架を背負って歩いていかなきゃいけないんだ。
「………………………………エリカ、私はもう寝るよ。………………このことは、誰にも言っちゃダメだからね。………………特に、樹には。」
そう言うと、エリカに背を向けて目を閉じる。直後に、背中に柔らかい感覚が当たる。
「………………マホーロ、私は………………………………ずっと、マホーロの味方だからなっ………………」
震える声は、自然と私の心に染み込んでいった。




