真夜中のヒメゴト………………?―おわり。
「ど、どう?」
「………………ん、きつくはない。ただ、ぴったりと言うわけでもないけど………………」
「そ、それは、そう、だよねっ」
私の服を身にまとったエリカが、その場でくるんと回ってみせる。………………ぐぅ、なんでこう、着る人によって服の見え方が変わるんだろ………………私が着てもだっさくみえるのに………………
「………………マホーロ?」
「ああ、いや、なんでも、ないっ………………………………」
エリカに見とれてた、なんて素直に言うわけにもいかず、私はそう答えるので精一杯。
「………………さて、と。もう遅いしベッドに戻るか。………………あー、でも、そこまで眠くない………………」
「………………なら、お話する?ほら、ちょうど月も出てるし。」
窓から差し込む光がちょうどテーブルに重なるように、そっと立ち位置を変える。お互いの顔はちょっと暗いけど、分からないって程じゃない。
「………………どうする?話すなら、樹も起こすか?」
「………………ううん。樹はあの通りぐっすり寝てるし………………それに樹の声はけっこう通るから、私たちが起きてるのバレちゃうよ。」
「ふふっ、確かにそうだな。………………さながら、真夜中の秘密のお茶会、だな。」
「ふふふっ、お茶やお菓子は出せないけどね。」
できるだけ小さな声で話すようにして、まずはエリカに切り出す。
「………………………………聞いてみたいな、エリカのこと。あと、妹のことも。」
「ふーむ………………マホーロはなかなか難しいこと聞いてくるな………………」
「あっ、ご、ごめん………………ダメ、だった?」
「いや、いいさ。………………けど、あんまり面白くないぞ?それに妹のことなんて………………」
「………………さっき、名前呼んでたよ。………………寝言の中で、『ターニャ』って。」
「なっ………………………むぐっ!?」
声を上げそうになるエリカの口を慌てて塞ぐ。………………あ、顔が赤くなってく………………。慌てて手を離すと、エリカは荒い息をつく。
「………………そうか、私はターニャのことを………………ふふっ、私もついにホームシック、か。」
エリカか虚空を仰いで自嘲する。
「………………………………そうさ、ターニャ………………タチアナ・フォン・シュミットは、私の最愛の妹さ。………………もうすぐ引き裂かれるけどな。」
「ひ、引き裂かれるって………………」
「………………言い忘れたが、私は親の離婚によって日本に来たんだ。………………ああ、まだ成立はしてないんだが………………………………これが成立したら、私は『エリカ・フォン・シュミット』じゃなくなる。………………『エリカ・ナカジマ』になるらしい。」
「そ、そう、だったんだ………………」
聞いちゃいけなかったかな、という思いが私を支配する。けど、エリカは目の前で手を振って苦笑いする。
「………………大丈夫、元からわかってたことだ。それにタチアナ、いやターニャは………………どうなろうと、私の妹であることに変わりはない。姉妹ってのはそういうもんだろ?」
ニカッと笑うエリカの言葉が、私の胸へと突き刺さる。
「そう、だよね。………………『普通の』姉妹だったら、それが当たり前だもんね。」
ついホンネが零れて、エリカに不審がられる。
「………………『普通の』、とは、どういうことだ?」
「………………じ、実は………………私にも、『小雪姫』っていう、姉がいて………………………………」
その先を、私は言いよどむ。………………その先は、言えない。言ったら、いけない。だってそれは………………………………『お姉ちゃん』からの………………………………
「………………そうか。なら私は寝るぞ。」
「………………………………………………へ?」
あれだけ不審がっていたエリカが、割とあっさり引き下がる。エリカはベッドに戻ると、樹からちょっと距離をとって寝転がる。
「………………ほら、マホーロ。早く布団に戻りな。もう寝ないと、明日起きられないぞ。」
「………………………………え、エリカ………………」
「………………それにしても、イツキは暑苦しいなぁ。………………間に誰か挟まってくれると、楽なんだけどな。………………ああそうそう、私は寝つきが悪いからな、眠くなるまで誰か話し相手になってくれると助かるんだけど?」
ようやく私は、エリカの意図に気がついた。………………………………そっか、私から話すまで、気長に待っててくれるんだ………………………………
私も、そっと樹とエリカの間に体を差し込む。………………んっ、ちょっと狭いから、エリカとくっつきそう………………私が身を縮こませると、その隙間をエリカが埋めてくる。
「………………ん、イツキよりは、暑くないな。」
「い、いや………………だからって、……………………………あ、あの、私もくっついていい?」
答えを待たずに、エリカの方に寄る。胸がぶつかって、小さな声が口の端から漏れる。
「………………ごめん、ちょっと、胸、借りる。」
そう言うと、エリカの張りのある双丘に顔を埋める。………………柔らかい。まるで、『お姉ちゃん』と一緒に寝てるみたい。
「………………満足したか?」
「………………も、もうちょっと………………」
「もう、仕方ない『妹』だなっ。」
エリカは、私の気が済むまで胸を貸してくれた。




