真夜中のヒメゴト………………?―おわりかけ。
「………………………………」
「………………………………」
月明かりの照らすテーブルで、私たち――私とエリカは向かい合って座る。エリカはどこかそわそわしてて、さっきからお尻のあたりを気にしてる様子。………………………………ち、ちょっと小さかったかな………………
私は、その前のことを思い返す。
「………………へっくちっ」
「………………あ、そう言えばエリカ、服着てなかったんだっけ………………………………」
「し、失礼な………………………………一応、最低限は着てるから。」
「ほんとの最低限、ね………………」
………………うん、このままほっとくと今度は私がエリカの看病することになる。………………確実に。
「待ってて、今換えの服見繕うから。」
なるべく物音を立てないように歩いてクローゼットを開けると、微かにエリカの残り香が漂う。ちょっと酸っぱいような香りは、怖かったからなのかな………………………………うん、全部取り替えてもらった方がいいかも。適当にごそごそ見繕うと、エリカのところに戻る。
「………………………………はい、これなら多分、着られると思うんだけど………………………………って、エリカ?」
なぜかさっきからギョッとしたままのエリカを、現実に引き戻す。
「………………こ、これ………………ほんとに着なきゃダメか?」
「嫌ならいいけど………………その代わり、そんなカッコのままだと風邪ひいちゃうよ?」
「そ、それは困る………………わ、わかった、着るよ………………………………で、でも………………なんで下着まで混ざってるんだ………………?」
「い、いや………………………………けっこう汗かいてる、みたいだから………………そ、その………………………………後ろ、向いてるから。」
慌ててくるんと後ろを向いて、エリカの着替えを待つ。
「い、いや、流石に下着までは………………………………ま、マホーロの、………………とか、触れたもの、だし………………」
エリカが言いよどんで、私も赤くなっていく。………………………………貸したものは当然返してもらわなきゃいけないし、でもそうなると………………そういうことだ。
「………………………………い、いいよっ、それ、あげる、からっ………………………………お、下ろしたてでまだ使ってない、から……………………………き、気にしないで………………………………」
「そ、そう、なのか………………………………でも、貰うのも悪いな………………そうだ、今度見繕ってあげるよ。………………………………あー、でもそうなるとイツキも連れてかないと………………」
「そ、それは多分大丈夫………………樹は暇さえあれば探検してるから、こっそり抜け出してもバレなそうだし………………………………それに、樹の部活の先輩に頼んで引き止めておいてもらえば。」
「………………そ、そうかっ…………………な、なら……………………………また、休みができたら………………」
そんなぎこちない会話を交わしたあと、意を決したようにエリカが自分の背中に手を回す。慌ててエリカにくるんと背中を向けると、
「………………………………いや、見てても、いいから。………………………………それに、ソワソワしてて挙動不審だし。」
「うっ………………」
じゃあお言葉に甘えて、なんて言い出せるはずもなく、私はすこーしづつエリカの方に向き直る。………………み、見たいなんて思ってるわけじゃないし、エリカのことに見とれてたりなんて、絶対にしない、もん………………………………
月明かりに照らし出されたエリカは、さながら動く彫刻みたいで………………足から布地を下ろしてパサリと脱ぎ捨てるだけのことなのに、仄暗い明かりのせいでとても怪しく見える。………………………………ハッ!?わ、私は今何を………………
「………………………………マホーロ、そんなにじっくり見られると、こっちもやりづらいんだけど………………」
薄いトレーナーに袖を通していたエリカが申し訳なさそうに言う。
「………………え、そんなに見てた?」
「………………けっこう、気になるぐらいに。」
「そ、そう………………」
………………自分だと全く覚えがないのに………………
「………………き、着替え終わったぞ………………」
なんとなく申し訳なさそうなエリカの一声で、私の目も覚めた。
「ど、どう………………?」
「………………ぴったりとはいかないけど、まぁこんなもんかな………………」
「そ、それなら良かった………………」
エリカにそっと微笑んで見せる。でもその裏側では、内心とんでもない葛藤に襲われていて。
(つ、使ってないって言ったけど………………………………ホントはこの前付けたことあるやつ………………)
弾けそうになる私の頭を、必死に押さえ込んだ。




