真夜中のヒメゴト………………?―まんなか。
「あ、あれ………………エリカ?」
思ってたのとは違って、エリカは下着一枚になってるけど、………………………………そういうことをしてる気配は全くなくて。
「どうしたマホーロ、何を驚いてるんだ?………………ああ、私は暑苦しいから起きただけだ。」
………………き、衣擦れの音も水音も、みんな勘違いだったんだ………………
「………………そ、そうだったんだ………………私はてっきり」
途中で言うのをやめると、エリカは不審がる。
「………………何をしてると思ったんだ?」
「そ、それよりもさっ。汗かいたんなら、服取り替えないとっ」
「………………マホーロ、何を考えてたのか『お姉さん』に聞かせてくれるかな?」
肩を掴んでぐぐっと押される。………………うっ、こ、これ言っちゃうとエリカ絶対怒るじゃん………………
「………………………………その、ごそごそしてたし、水の音もしたから………………………………そ、そういうこと、してるのかと………………」
私が何を言いたいのかを察したらしきエリカは、みるみるうちに芯まで赤くなっていく。………………あ、わなわな震えてるっ………………
「うがぁぁぁぁぁっ!!」
突然エリカが叫ぶ。ちょっ、ここ私の部屋だし真夜中だよっ!?………………ほ、ほら、みんな起きてきちゃったし!?………………樹はまだぐーすか寝てるけど、みんなはガヤガヤし始める。
「エリカ、ここに隠れてて!!」
耳元で小声でささやくと、返事を待たずにエリカをクローゼットの中に押し込める。そして、少し取り乱した風を装ってドアを開けてみんなの前に姿を現す。
「はぁっ、はぁっ………………………………び、びっくりした………………」
「びっくりしたのはこっちだよ!!真夜中に叫び声が聞こえたんだものっ。」
横の部屋に住む先輩が、みんなを代表して寝ぼけ眼で言う。………………どうでもいいけど相当寝相悪いんですね、パジャマの前全開ですよ………………
「ご、ごめんなさい………………部屋に、『あいつ』が出て………………」
「なにっ!?」
先輩が慌てて飛び退く。
「ああいやっ、もう開いた窓から逃げ出したんでっ」
ガヤガヤし始める野次馬達にそう説明すると、みんな信じてくれてホッと胸をなで下ろす。中には「災難だったねぇ」なんて声をかけてくれる人もいて、騙しちゃってる自分としては心がズキズキと痛む。
「おわっ!?今度はこっちに出たっ!!」
数件向こうの部屋に戻りかけていた人が慌てて飛び出してくる。それからはもう阿鼻叫喚で、みんな部屋の中に逃げ戻る。騒ぎを聞きつけた寮監さんがすっ飛んできて『始末』してくれるまで、みんな部屋の中で息を潜めていた。
「か、片付いたみたい………………」
「よ、よかった………………」
「なんか落ち着いたらトイレ行きたくなってきた………………でも一人だとまた遭遇した時が怖いよぉ………………」
「………………一緒に行く?」
なんて会話が廊下の方から聞こえてきて、私はそっとドアを閉める。………………さて、もういいかな?
「………………エリカ、出てきてもいいよ。」
クローゼットの前で呼びかけてみるけど、出てくる気配がない。………………あれ、中で寝ちゃってる?
そっとクローゼットのドアを開くと、私の洋服に埋もれてそっと膝を抱えるエリカが居た。
「え、エリカ………………」
「………………ま、マホーロ………………こ、怖かった………………」
ヨロヨロとクローゼットから出てくると、エリカは私にすがりつく。
「………………もしかして、暗いとこ苦手?」
「い、いや………………………………狭いとこが苦手なんだ………………………………悪いことしたら、物置に閉じ込められてたから………………………………」
青い顔で震えるエリカの背中を、そっとぽんぽんと叩く。
「………………ごめん。他の隠れるとこ探せばよかったね。」
「いや、いい………………………………そうしたら、もっと騒ぎが大きくなりそうだったし………………」
………………………………あれ?このシーン、他の人に見られたら相当マズいんじゃ………………半分裸なエリカのことを抱きしめる私とか、絶対『そういうコト』してるとしか………………
「………………………………あ、マホーロ。言っておくけど………………………………私はそういうこと、シたことないからなっ?………………………………ち、知識としては聞いたことがあるってだけで………………そ、そういうのは………………」
エリカがもじもじと恥ずかしがる。
「だ、だよねっ………………………………あ、あはは………………」
頭の中で、勘違いしてた私のことを蹴っ飛ばす。………………………………私のバカ。これじゃあまるで、私の方がそういうこと、シたいみたいじゃない………………………………ほんとにバカ。




