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戻ってみれば。

「……………………あれま。」

私たちが私の―――磨穂呂の部屋に戻って、真っ先にエリカが口にした言葉がそれだった……………………。

「もう、樹、起きて。」

「むにゅう…………もうカレーは嫌なのです………………」

簡単に言えば、樹が私の部屋のテーブルに突っ伏して寝ていた。

「………………うぅ、目の前をカレーが流れるぅ………………」

「………………こら重傷だな………………」

エリカがやれやれとお手上げする。

「もう、無理して食べることなかったのにぃ………」

「だ、だってたくさん食べないと、エリカや磨穂呂みたいにおっきくなれないし………………それに、『ご飯は残さず食べなさい』って教わったんだもん。」

「ほう、いい心がけだな。」

エリカが感心する。けど、それよりも私は樹のことが気がかりで。

「大丈夫?お腹痛くない?」

「うー………………お腹の中でインド人が暴れてる................」

「うん、どういう事か全く分からないけど何となく言いたいことは分かるかな。」

なんとなく具合の悪そうな樹が心配になって、思わず、

「………………樹、今日は私の部屋で寝る?」

「………………ふぇ?いいの?」

「なんか具合悪そうだし。何かあったらすぐに対処できるしね。」

「………………なら、お邪魔します。」

そう言うと、樹は早速私のベッドにごろんと横になる。………………そろそろ私も寝ようかな。

「じゃあエリカ………………って、」

あ、エリカがむくれてる。

「………………いけないんだぞ。勝手にほかの部屋に入り込んで泊まるのは。」

「そう言いつつ昨日はエリカが樹のことを泊めたよね?」

「うぐっ………………そ、それなら待ってろ。すぐ戻るから。」

そう言うなりエリカは私の部屋から走って出ていく。………………えーっと、どういう事なんだろ………………。

「まほろー、はやくー。」

すっかりおねむな樹が布団を被って、私のベッドから催促する。

「はいはい、今行くよっと。」

しょうがないなぁと苦笑しつつ、樹の待つベッドに足を踏み入れると、私の部屋のドアが勢いよく開く。

「っ!?」

「………………ん、エリカ?」

反射的に身構えた私と対称的に、樹はと言えばのんびりと眺める。................って、エリカ?なんでそんなに息を切らして................って!?

エリカは私のことを追い抜いて、樹の寝転がるベッドに自分の枕を投げ込んだ。そして、ベッドの壁側の隅っこに自分の身体を突っ込むと、そのまま樹を抱き枕にして目を閉じる。

「っ!?………………エリカ、抜けがけは禁止っ。」

エリカを追い出そうと間に割り込もうとするも、エリカは樹のことを抱えて一歩も譲らない。

「明日はエリカが一番先に起きるんでしょ?だからエリカがそっちの端っこ行ってよ。」

「やーだっ。そんなこと言って追い出す気だな?................でもまぁ確かに、樹やマホーロを踏みつけて起きるわけにもいかないしな。」

そう言うと、樹を支点としてくるんと向こう側に移るエリカ。空いた隙間に私が身体を沈めると、ベッドのスプリングがぎしっと嫌な音を立てる。

「………………………………」

「………………………………」

「………………な、何だよ………………」

「………………いや、別に?」

「嘘つけっ、その目は絶対私の体重想像してるだろっ!!」

エリカがほんの少し涙目になる。………………い、いや、そんなこと考えてないって………………

「………………ん、なんかベッドが斜めになってる。」

「いつきっ!?」

それは言わなくてもいいからっ!!………………………………あーあ、エリカが完全に拗ねちゃった………………。

「………………ぐすん、どうせ私はマホーロ達より重いもん………………」

「いや、そんなことないって………………きっと樹がそっち側にはみ出してるんだよきっと。ね!?」

「………………むぅ。」

じとーっとした目線を送ってくるエリカ。………………そ、そんな目で見られてもっ………………

「………………くっ、………………イツキ、お前は体重何kgだ!?」

「うーんとね、………………最近計ってないからわかんない。でも最後に計った時は30kgだったよ?」

キョトンとする樹。………………どうやらコトの重大さがまだ分かってないみたい。………………あ、エリカが枕と会話し始めた。

「………………そ、そういうエリカは?」

「………………つくづく傷を抉ってくれるなぁ!?」

顔を真っ赤にしてそう言いつつも、私の耳元まで顔を寄せて、こっそりと教えてくれる。

「………………………………52だ。」

言い捨てるとすぐに枕に顔を埋めるエリカ。………………ど、どうしよ………………私だけ言わないのは不公平だし、でもホントのこと言うのは………………とりあえずエリカの耳たぶにそっと唇を寄せると、

「………………私はね、55なんだ。」

こっそりと嵩増ししてエリカに伝える。エリカは一瞬だけ顔を上げると、すぐに不機嫌そうな顔になる。

「………………で、ホントの体重はどうなのさ。」

「………………………………………………エリカから、5個引いて?」

案の定エリカは枕と話し合い(?)を始める。それを知ってか知らずか樹はすやすや夢の中。

ベッドがまた、ぎしりと鳴った。

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