樹の部屋で。
「................で、結局なにがどうしてこうなったの?」
樹が私達のことを見下ろす。................と言っても、樹がおっきくなったんじゃなくて、私たちが床に正座させられてちっちゃくなってるから。................あ、樹はベッドの上ね。
「................薄々感じてたんだけど................イツキやマホーロと一緒に過ごすうちに、なんだか愛しくなって................大切に思う気持ちが強くなったんだ。家族に対するのとは、なんか違うような気がして................それで、気がついた。これは、................『スキ』、なんだって。」
「エリカ................」
「................だから、マホーロに打ち明けたんだ。................イツキが寝てる間に。そしたら................『少し、考えさせて』って................」
樹がふむふむと頷く。ここからは、私の弁明になる。
「................それで、私も少し考えたの。................エリカは友達だって、ずっと思ってたから、いきなりライバルに................、樹のことが好きなライバルになるなんて、思ってもみなかったから、................混乱しちゃって。それで、少し時間を貰ったの。」
「................で、結果は?」
「それは................」
私が言いよどむと、エリカがこともなさげに、
「ああ、断られた。」
と、あっさりバラす。
「ちょっ、エリカ................」
「................ふぅん?」
樹が、「じー」っと私を眺める。................あ、穴が空いちゃうよっ!?
「だ、だって................負けたくなかったんだもん。................私が樹の一番じゃ、なくなるのが................嫌だったし。それに、エリカとはずっと友達で居たかったから。................だって、スキになったら................普通に接することできないじゃん................」
少しだけ涙目になる。................ホントは、樹のことを諦めてエリカの提案に素直に首を縦に振ることも考えてた。................樹は移り気だし、どうせ私のことだって『面白そうだから』一緒にいるだけだって考え込んで................そっか、『また』私が不幸になればいいんだ。そうすればまた、私の周りの世界はすんなりと回ってく。そう、思ってた。だけど。................だけど、私の中に根を下ろした『樹』という存在は、ずっと根深くて。................素直になれなかった。
................はぁ、ほんとに私ってダメだな................そう自嘲してから、おでこのあたりにムズムズするものを感じて伏せていた顔を上げると、
「じー................」
「じ、じー................?」
樹どころか、エリカにも睨まれていた。思わず飛び退くと、正座していた足が痺れてその場に這いつくばる。
「................磨穂呂、さっきから聞いてると、まるで『自分のことはどうだっていいから................』みたいなこと言ってるけど、................本気?」
「................あと、マホーロの提案はイツキのことを何も考えてないような気もするが?」
「うぐっ................」
的確にピンポイントを突かれる。................わ、私だってほんとは................
「ねぇ磨穂呂。」
樹がベッドから下りてくる。
「................エリカはさ、私と磨穂呂どっちも好きになっちゃったって言ってたよね。................でもさ、磨穂呂はエリカに『ごめん』って言ったんだよね。」
わけも分からず、とりあえず頷く。
「................でも、エリカから私への告白の答えは、まだだったよね。」
私の心がざわつく。................もしかして、いや、待って................
「................エリカ、大好き。」
そっとエリカのほっぺたに、樹がキスをする。その瞬間、私の視界がぼやけた。
「................そっか、そうだよねっ。................エリカの方が、ずっといいよねっ................私にはもう、興味ないよねっ。」
よろよろと立ち上がって、樹の部屋を出ていく。................なに、エリカ『さん』と『椎原さん』、まだ用なの?私疲れたから、先に部屋で寝るね。
じゃあ、また、そのうち、学校で。
夢なんか見た私は、最高の道化だったんだね。




