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上書き。

まず初めに、私の精神不調によりご迷惑をかけた皆様に深くお詫び申し上げます。

「........................はぁっ、はあっ................」

「な、なんとか、逃げきれたね................」

私達は、飛び乗ったバスの座席で荒めの息を整える。周りの人達は最初不思議そうにこっちを見ていたけれど、バスが動き出すと次第に興味を失ってこちらに向いた視線はじきに無くなる。

「................しっかし、まさかこんな目に遭うなんてな................」

エリカが吐き捨てる横で、私と樹はぷるぷると震えていた。................腕を掴まれた時の感覚が、まだこの腕に残ってるみたいで................。思わず、樹と繋いだ手に力がこもる。それは、樹も同じみたいで................。

「イツキ、気持ちはわかるけど................痛い。」

エリカが顔をしかめる。

「................樹、私の服のすそでよかったら........」

最後まで言い終わらないうちに、樹が私の服の裾を掴む。................よっぽど、怖かったんだ................

「........................その、ごめん。」

暗い雰囲気の中、私が切り出す。すると、エリカがけげんな顔をして

「........................なぜ、マホーロが謝る必要がある。」

「だって、私が、ゲーセン行こう、なんて、言い出したから................」

「................それなら、その案に一も二もなく飛びついた私も................目をキラキラさせたイツキだって、罪は同じだ。」

「ちょっ、エリカ................」

何もそんな言い方は................

「全員等しく、罪はないってことだよね。................悪いのは、あの男達。」

「樹................」

「................なんだ、分かってるじゃないか。」

「エリカも................」

「................だから、磨穂呂、................気にしないで?ほら、写真だって無事だし。................あんな目に遭っちゃったけど、これだって私の楽しい思いの一つだから。」

「................いつき........」

樹が守り抜いたプリクラを受け取って、少しの間眺める。慌てて掴んだから折り目も付いちゃってるけど、うまい具合に折れてるのは余白のとこだけ。これなら、大丈夫そう。

「樹、エリカ。どっちか、ハサミ持ってない?」

「ん、ああ........................ソーイングセットのでよければ。」

「うん、それで大丈夫かな。」

エリカから受け取ったハサミで、プリクラを3等分する。3人分用にきっちりと点線が入ってるから、切り離すのはそう手間がかからなくて。

「................はい、エリカ、樹。」

3等分の真ん中を私がもらって、右側を樹に、左側をエリカへと手渡す。

「3人とも中身は同じだから、安心して。」

「................こ、これは、私か?」

エリカは戸惑ったような声を上げる。................だろうね、最近のって自動で肌の具合とか調整してくれるらしいから................一方樹の方は、じーっとプリクラを眺める。

「樹、どうしたの?」

「................な、なんでもない。それより、ありがと。」

樹は、プリクラを大事そうにお財布の中に仕舞う。................うーん、樹はレシートばっかりだから間違えて捨てないかが心配だなぁ................。

「................おや、もう次は寮の前か。................最後はドタバタしたけど、いい休日になったな。」

停車案内を眺めていたエリカが、車内ボタンへと手を伸ばす。それを見て、とっさに私はエリカの腕をつかむ。

「な、なんだマホーロ................」

「ううん、ここじゃ降りないで。」

「な、なんでだ?................寮の前のバス停だぞ?次は。」

「................ううん、それは分かってる。でも、まだ寄りたいところがあるの。」

そう言うのと同時に、バスの扉が閉まってバスが動き出す。遠ざかっていく寮の屋根を横目に、私は樹とエリカに向き直る。

「................楽しいお出かけの、最後の思い出がこんなのだなんて、私は嫌。だから........................上書き、しよ?お出かけの、最後の思い出を。」

そう言うと、私は席に座り直す。................うーんと、ここ。今度こそ、エリカに車内ボタンを押してもらう。

降り立った私達の目の前に見えてきたのは、

「................Aquarium?」

「................こんなところに、水族館があったんだ................。」

「こないだテレビで見て、いいなぁって思ってたの。だから................最後のシメには、いいかなって。」

「................マホーロ。」

「磨穂呂................」

二人で私のことを見つめてくる。................え、あの................

「................ありがと、磨穂呂。」

「................Danke schon.」

深々と頭が下げられる。................い、いや、そんなことされても................

「................さぁ、行こうか。................思い出の、上書きに。」

「うん。」

樹とエリカの手を、しっかりと握りしめる。そして、入り口のカウンターを三人でくぐった。

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