フィッティングルームのなか、3人で。
今作は三者視点ですの。
《エリカの場合》
........................お、二人共戻ってきたな。
「遅いぞっ。................店員や客に何度睨まれたか................」
「ご、ごめん................こっちもサイズ見つからなくて................」
「................やっぱり子供服ばっかりだった................」
イツキはちょっと落ち込んでいた。
「................じゃあ、入るか。終わったら声かけるから、いっせーのーで、外に出る。それでいいか?」
「ばっちぐー。」
「うん、それで、いい。」
「じゃあ、また後でな。」
そう言って後ろ手にカーテンを閉めると、スカートに手をかける。................ふぅ、やっぱりズボンが一番落ち着くな。Rock................スカートだとなんかまとわりつく感じがするし、それに................制服みたいに特別に誂えてもらった物じゃないと、まず丈が短くて恥ずかしい。................こんなのを見て楽しんだり、見せて楽しむ者が居るというのが、未だに信じられないのだが................まぁ、そういうもんなのだろう。
インディゴブルーのジーンズを穿いて、次はベストとシャツを脱ぐと、下着に包まれた膨らみが現れる。................この国だと歳不相応らしく、風呂場で同級生に会ったり、着替えの時にはじっと眺められたり、嫉妬の眼差しを向けられたりもするが................何でまぁ、イツキにしろ................マホーロはそうでもないし、むしろこちら側な気もするけど................この体格を羨ましがるのだろうか?イツキは成長が遅いようだが、それでも可愛いし................ほんとに、何でなのか分からない。
................しかし、あの二人には感謝しないとな。みんなから特別視されて心の奥底で拗ねてた私を、友達と認めてついてきてくれた。それもそれも、マホーロと風呂場で鉢合わせしたから。................人目を避けて入ってた大風呂も、悪くは無いな。
「エリカ、終わった? 」
マホーロの入る隣の個室から、壁をノックする音が聞こえてくる。
「ああ、もうちょっと待っててくれ。」
慌てて上を身につける。黒のワイシャツの上からデニムのベストを羽織って、カーテンを開ける。
さぁ、どんな二人が待ってるかな。
《樹の場合》
................二人とおんなじ、大人になれたんだ。カーテンを閉めたあと、私はそっと服を抱きしめる。あいにくこのお店には、こんな子供っぽいのしか置いてないみたいだけど、でも................私の中身は、オトナになったから。だから子供っぽい服でも大丈夫。
雑にぽいぽいっと制服を投げ捨てて、ハンガーから服を外す。ピンクのMサイズのトレーナーを頭から被ると、少し長めな袖をまくって体に合わせる。................Sサイズだとぴったりかもしれないけど、私にだって意地があるもん。だから、あえて背伸びしてMサイズ。その後は短めのスカートを穿いて、準備オッケー。フリフリがついてて黄緑だから、なんかレタスみたい。
カーテンを開けて飛び出すと、まだみんな着替え中。................磨穂呂まだかな?カーテンの端をちょこっとめくると、中から悲鳴が。おっとっと、怒られちゃった。
................それにしても、磨穂呂と出会ってから、私の世界が広くなった気がする。ちっちゃくて、背伸びしたって簡単には届かなかった世界。でも、そこに磨穂呂がきて、手を伸ばして取ってきてくれた世界。私は今、磨穂呂のくれた世界を見てる。
................待ってて、いつか追いつくから。その、背中に。
私はそっと、カーテンを開けた。
《磨穂呂の場合》
................ふぅ。さてとっ、着替えよ。
後ろ手にカーテンを閉めて、まずは上から。薄いブルーのTシャツの上から、ちょっと厚めの桜色のカーディガン。大人しめの色にしたけど、他のふたりはどんな感じの色にしたのかなぁ?................っとと、早く着替えちゃわないと。みんなを待たせると悪いしね。
さてと、スカートを下ろして................って樹っ!?カーテンめくらないで!?
「ひゃん!?」
慌ててカーテンの合わせ目を押さえると、床にへたりこむ。................い、樹だけじゃなくて................他の人にも見られたしぃ................あ、後でゲンコツしてやる................
................まぁ、それは置いといて。いつまでもパンツ丸見えなのは気分悪いし、持ってきたロングスカートに足を通す。
................そういえばエリカも足長いけど、スカートとかどうしてるんだろ。なかなか合うサイズないし、ミニとか................み、見えちゃいそうだし。................うーん、無難にズボンなのかな。
薄紺のロングスカートを腰のところで留めると、その場で一回転してみる。................うん、丈も丁度いい。それにしても、ちょっと早く着替え終わっちゃったかな?
「エリ................」
名前を呼びかけて止める。................着るのにまだ時間かかってるかもしれないし、もう少しほっとこ。
(................それにしても、私に友達が出来るなんて、ね。)
................ここに来る前まで、引っ込み思案な私の周りには友達と呼べるような人はほとんどいなかった。でも、今は。
(................エリカ、八千流、そして................樹。あと、聖先輩、美海先輩、................不思議先輩?、墨森先輩、雪乃先輩。)
みんな、私のことを受け入れてくれて、それだけでも私の心はぽかぽかする。
(................出会えた人みんなに、ありがとうって言いたいな。)
................さて、もういいかな?
「エリカ、終わった?」
「ああ、もうちょっと待っててくれ。」
壁をノックすると、そんな返事が返ってくる。................さてと、私もそろそろ出よっかな。
カーテンをそっと開けて、外の世界に飛び出した。




