とりあえずは。
樹の部屋から適当な着替えを持ってきてエリカの部屋に戻ると、樹はエリカの手によってキレイに隅々まで洗われて、エリカのバスタオルに包まれていた。
「あ、まほろぉ................」
いつにも増して元気の無い顔で、不安そうに樹がこっちを見る。
「................さっぱりさせて、もらったじゃない。どう?........................『オトナになった』気分は。」
ちょっとだけカッコつけて言うと、樹はお腹のあたりを気にして何度も撫でる。
「................な、なんか、不思議な感じ................寝る前まではなんともなかったのに、起きてみたら................ここから、血が出てるんだもん................。」
「だよねぇ................私もそうだったもん。」
「................確かに。私なんか、このまま死ぬのか!?とVater、Mutter................あー、両親に泣きついてな。必死にお祈りとかしたぞ?」
「................へぇ、意外。エリカのことだから、落ち着いて対処したのかと................」
「おいおい、私もその頃は11になったばかりだったぞ?................で、イツキ................その、体調の方は、どうだ?気分が悪かったり、クラクラしたりはしないか?」
「................う、うん。ちゃんと立てるし、フラフラもしないよ。」
「そっか、なら良かった。................いや、樹の場合、ちょっと遅いみたいだから................」
「................そ、そうなの................?」
「まぁ、でも気にしなくていいんじゃないか?よっぽどってことでも無いし。」
「な、ならよかったぁ................」
少しほっとした様子の樹。................だよね、最初はみんな、戸惑うもの。私だって驚いたし、お姉ちゃんの時なんか................うっ、い、いや、何でもないっ。
「................そ、そうだ。早く樹に、服着せないと、風邪ひいちゃう。」
「................すまん、すっかり忘れてた。」
バサッとエリカが樹のバスタオルを引っぺがすと、ちんちくりんな樹の素肌が目に入って慌てて着替えを差し出す。
「................そうだ、忘れてた。」
エリカがベッドサイドからポーチを取りあげて、中からナプキンを取り出す。
「................なにこれ?」
じーっと眺める樹の目の前で、封を切って樹に宛てがう。
「はい、このまま履いて。」
「こ、これなに?................なんか、ムズムズする................」
服を全部着終わると、樹が足の付け根を気にしてもぞもぞする。
「あ、それ取っちゃ、ダメだからね?後で保険医さんとこに行って、教えてもらうけど、それが無いと、全部血まみれだから。」
慌てて樹がもぞもぞするのをやめる。 けど、やっぱり不安そうに、
「................ねぇ、これしてれば大丈夫なんだよね?」
「うーん、絶対とは言えないけど........................とりあえずは、大丈夫。」
「................ほんと、だよね?」
樹は何度も念を押すように確かめる。................これは早く保険医さんとこに連れてかないと、ダメかも。
「................これってたまにトイレに捨ててあるやつでしょ?すごく真っ赤になってて................」
「はいストーップ。それ以上はダメ。」
................私がそういうのダメだし。
「................そう言えば、イツキはこれが初めてなんだよな?ってことは、これから諸々のものを用意する必要があるな。」
「................そうだね、さすがに私たちのを貸してあげるのは、樹だとしても、ちょっと........................」
そこで、今日が土曜日だったのを思い出す。
「................そうだ、樹。今日は休みだし、お買い物しに行こっか。」
「おかいもの?」
首を傾げる樹。
「そう、おかいもの。オトナになった樹には、色んなモノが必要なの。分かるでしょ?」
「................えーっと、鏡と、お化粧のポーチと、顔に塗るお粉と、」
「樹、ストップ。........................そうだね、お化粧はもうちょっと、オトナになってからで大丈夫。だって私も、持ってないもん。」
樹の前で手をヒラヒラと振る。................さすがにお化粧の道具までは私にも分からないし、樹のことだから色んなのに興味持って使わないのに買っちゃいそうだし。
「................そうか?私は持ってるが。」
「エリカっ!?」
余計なこと言っちゃダメ!!................ほらぁ、樹がじーっと見てるしぃ。
「................エリカは持ってるのにダメなの?」
「................もう、分かったよ................じゃあ、お買い物行く前に、着替えてくる。樹も、その服でお買い物行くなら、このまま待ってて。」
「................ちゃんとしたのに着替えてくる。」
「ちょっと待て、まずは保険医のとこに行くんだろ?................なら、制服の方がいいのでは。」
「うーん、それもそっか。でもどっちにしろ着替えないとダメだし、樹、帰るよ。」
「う、うん........................じゃあ、エリカ。またね。」
「........................ああ、またな。」
エリカは、ちょっと残念そうに扉を閉めた。
元からすぐ着るつもりだったので、ここを出る時に制服はベッドの上に広げっぱなしにしておいた。だからすぐに身につけて、寮の玄関口で樹を待とうと階段をかけ降りると、
「................マホーロ、イツキは?」
「................エリカ、何でいるの?」
「................いや、その................練習もないし、それにこの後買い物なんだろ?................つ、ついて行きたいなぁ、なんて。」
「................はぁ。................分かった。なら素直に言ってくれれば良かったのに................。」
「い、言い出しづらかったから................。」
そうこうしているうちに樹も降りてくる。
「わぁ................エリカってほんとに、私たちとおんなじ新入生だったんだ................」
そう言えば確かに、エリカの制服姿見るの初めてかも。
「................とりあえず揃ったし、行こっか。」
3人でてくてくと歩き出す。けど、私の心の中は。
(.......................このまま二人でデートできると思ったんだけどなぁ................)
ちょっとだけ、雲がかかってた。




