樹のポッケ。
................はぁーあ。なんかもう、ボロボロ................。折角の樹とのデートだったのに、なんか気まずくなっちゃって。
「................じゃ、じゃあ私は上の階だからっ。」
「あ、そ、そうだったね................じゃあ、また明日。」
樹とぎこちない会話を交わして、部屋の鍵を開ける。................私、何がしたかったんだろう................。
でも、このままじゃ、いけない、よね。後ろ手にドアを閉めて、小さな影を追いかける。
「い、樹................」
小走りで追いついて、樹の袖口をぎゅっと握る。
「ど、どうしたの、磨穂呂................」
目をしぱしぱする樹を、そっと引きずる。
「................ねぇ、私のお部屋、来てみない?」
「........................え?磨穂呂の、部屋?」
「................そう。樹の部屋は、見たことあるけど、................樹は私の部屋、見たこと、ないでしょ?」
「................い、いいの?」
「うん。........................むしろ、樹に来て欲しいな。私の部屋の、初めてのお客さんに。」
「お、お客さんだなんてっ!?」
樹はあわあわする。その様子が小動物みたいだなんて言ったら、樹はどんな顔するのかな?
「................ま、待ってて、着替えてくる!!」
今にも階段を走り出しそうな樹の手を、慌てて掴んで引き戻す。
「ま、待って待って................その、制服のままで、いいから。」
「だ、だって、遊びに行くのに................」
「いいの、そのままで。..............私服はまた、次の........................で、でーとの時に、見せてくれれば、それでいいから。」
「で、ででででっ」
一瞬で真っ赤になった樹から目をそらす。................わ、私だって言うの、恥ずかしかったんだから................。
「................ほ、ほら、行くよっ。」
まだ固まったままの樹をズルズルと引きずって、私の部屋に連れ込む。
「................散らかってるけど、その辺に適当に座って。」
「お、おじゃまします?」
なんで疑問形なの................?と思いつつも、実家から送ってもらったダンボールを開ける。................間違えたそっちだ。................うん、あった。あ、でもグラスが................歯磨きのでいいか。
「................樹は、そこの黒いカップ使って。」
オレンジジュースとポテチを持って樹を誘う。
「................えっと、これ磨穂呂のじゃ」
「気にしないで!!」
「わ、わかった................」
................明日にでも新しいカップ買いに行こ................
ポテチを広げてカップにオレンジジュースを注いでも、樹はじーっと見つめたまま動かない。
「................どうしたの?ジュース嫌い?」
「そ、そういうわけじゃ................」
慌てたようにポテチをかっ込んでジュースで流し込んだ挙句にむせる。................あーもう、何してんの................。
「................大丈夫?制服にシミ付いてない?」
「................そ、それは大丈夫................」
布巾で樹のことを拭こうとして、樹の制服のポケットが膨らんでるのに気づく。
「................樹、ポケットに何入ってるの?」
「................わかんない。」
ちょっと考えてから、きょとんとする樹。
「わ、分からないって................ちょっと脱いで」
「えっ、こ、ここで................?」
「ブレザーだけね!?」
何を勘違いしてるんだ樹はっ!?とりあえず樹はブレザーを脱いだので、私がポケットを調べる。
「................ティッシュに、ハンカチに、チョコレートに、ガムに、ネコのスティックエサに、猫じゃらしのドライフラワーに、鉛筆に、後は................わぁ、クラック水晶にアメトリン、それにスモーキークォーツまでっ!!」
最初の方はゴミばっかりだなぁ................とテキトーに仕分けてたけど、底の方に溜まった天然石を見つけてテンションが上がる。
「........................磨穂呂、その石達に、名前があるの?」
「うんっ。これはね................」
樹を目の前にして天然石の解説会。気がついた頃には、外はすっかり暗くなってて。
「................あっ、ご、ごめん................」
「ううん、磨穂呂のおはなし、面白かった。」
「そ、そう................なら、良かった。」
それにしても、樹のポケットはすごいなぁ........................って、その前に。
「................もう、暗いけど................お風呂とご飯、どっち行く?」
「................先に、お風呂入りたい。」
「わ、分かった................じゃ、支度を」
樹がきょとんとする。
「................お風呂、そこにあるじゃない。」
「................いや、シャワー室に2人は................」
「昨日は一緒に入ったじゃん。」
「................その、流石に狭すぎたし................」
「........................ダメなの?」
「................大浴場にしよ?暗いけどまだ早めだし、それにここの人は、みんなでお風呂より、シャワーの方が好き、みたいだし................空いてると、思うから。」
................ホンネは、ずっとくっつきっぱなしなのが、恥ずかしいだけ。................おかしいね、スキなのに、くっついてたくないって。
「................ん、分かった................じゃあ、お風呂セット取ってくるから、................待ってて。」
部屋を出てぱたぱたと樹が走っていく。その背中を見送ると、私もテーブルの上を片付けてお風呂セットの用意にかかる。
................あ、また携帯の番号聞くの忘れてた。




