ショコラ・ティアラ。
本編に戻りますよ
................んー、にしても遅いなぁ。
私はカフェオレを口に運びながら、フォンダンショコラを待つ。
「来ないね、まだかなぁ?」
樹も足をぷらぷらさせる。
「................もう、お行儀悪いよ。」
手持ち無沙汰になって樹をつんつんすると、樹も負けじと私のほっぺをぷにぷにしようと手を伸ばすけど................いかんせん、リーチが違うので届かない。仕方ないと諦めたのか、樹はそのままつんつんされるのを楽しみ始めた。それをいいことに、更に樹をぷにぷにつんつんする。
「................もう、磨穂呂、くすぐったいから、やめてっ。」
そんなこと言いつつ素直にほっぺ差し出してるんだから、樹も甘えんぼ。
「はい、お待たせしました〜。」
二つのケーキか同時に運ばれてくる。
「わぁ................」
樹の顔がほころぶ。................うん、樹はやっぱり、笑った時の方がかわいい。もちろん、いつものむすっとした顔も、じーっと見つめる顔もスキだけど、こうやって笑ってる樹の方が、少なくとも私はかわいいと思う。
「................磨穂呂、顔が緩んでるよ。」
「................そ、そう?」
「うん。いつもの困った顔じゃなくて、ゆるーんとしてる。」
「ゆ、ゆるーん................?」
「........................あー、もしかして磨穂呂、ケーキ大好きなんでしょ。」
「べ、別に嫌いだないて言ってないし................ほら、早く食べよっ。」
話を誤魔化してフォンダンショコラにスプーンを刺すと、少しとって口に運ぶ。甘くてほろ苦いシアワセが、するんと溶けて口に広がる。
(ほわぁ................シアワセ。)
たまらず二口目を口に運ぼうと顔を上げると、私のフォンダンショコラをじーっと見つめる樹と目が合う。
「................食べたいの?」
「................いや、単に美味しそうって思っただけ。」
あれぇ?目が泳いでるよ樹。
「................ふぅん。樹の嘘つき。なら................」
スプーンを持った手を樹のティラミスに伸ばすと、端の方をちょこっとだけ削り取って口に運ぶ。..........くぅ、こっちも美味しい。
「あーっ!?磨穂呂、ひどいっ」
「はいはい、こっちもあげるから。」
フォンダンショコラをちょこっと掬って、樹の前に差し出す。
「はい、あーん。」
「ま、磨穂呂ぉ................そ、それは、恥ずかしぃ................」
「................要らないの?」
スプーンを引っ込めると、樹が慌ててスプーンにかじり付く。
「................もー、お行儀悪い。」
スプーンを引っ張ると、樹のヨダレもくっついてくる。
「................も、もう................このスプーン、樹にあげるっ。................その代わり、こっちのスプーン、貰うから。」
樹の前からスプーンをひったくると、フォンダンショコラに突き刺してぱくぱくと食べ進める。ほんのりとティラミスの苦味が残るスプーンと、フォンダンショコラのほろ苦さが混ざりあって、不思議な味になる。
................これが、私と樹の味。................って、何ヘンなこと考えてるの!?
「................ま、磨穂呂?」
「................な、なにっ?」
「................いや、何でも、ない................」
........................な、なら、呼ばないでよ................
「................なんか、この一個だけで、お腹いっぱいに、なっちゃった。」
「................磨穂呂も?................実は、私も................」
「................でよっか。」
お互いに残ったカフェオレを飲み干して、カフェを出る。支払いは全部樹がしてくれたけど、帰り道にまた手を繋ぐ気にはなれなくて................ちょっとだけスキマの空いた帰り道を、言葉もなしに寮へと帰った。




