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樹のearlydays―椎原樹誕生日記念特別編

ちょっと今の時間軸からワープします

これは、私が磨穂呂に出会うちょっと前のお話。


「................ねぇ、まだ見てるの?」

「ほんと気持ち悪いよねー、なんであんなのが好きなんだろ。」

「ねーほんと。」

後ろから聞こえてくるヒソヒソ声は、私のところには届かない。今、私の注意が向いてるのは、

「................じー................」

(................わぁ、こんな動きするんだ。)

海底を這いずり回るナマコとダイオウグソクムシ。うねうね、ずりずり。

「................え、触ってもいいの?」

横にいた飼育員さんに聞くと、ちょっとぎょっとした顔をされる。................なんで?面白いのに。

何のためらいもなくダイオウグソクムシをつんつんすると、慌ててズリズリ逃げていく。................変なのー、ダンゴムシみたいなのに丸くなんないや。次はナマコ................わぁ、ぷにぷにしてる。さっきのダイオウグソクムシみたいに逃げたりはしないけど、時々もぞもぞ動く。................なんだ、つまんない。もっと派手な動きするのかと思ったのに。

................あ、こっちはアメフラシだ。えいっ、つんつん。................わっ!?なんか出た!!

そんな感じで、私は校外学習の水族館を思いっきり楽しんだ。


「えー、水族館のレポートぉ?そんなのだるいんだけどぉ」

「なんで小六にもなって水族館なの?ディスティニーランド行きたかったのにっ。」

校外学習から一夜明けて、教室で理科の時間。レポート用紙片手にみんながうなる。そんな中、私はサクサクと書き進めていく。頭の上でチャイムが鳴った。

「じゃあこのレポートは次の時間までの宿題なっ。」

先生はそれだけ言うと、教室を出ていった。

「次の時間までとか................明日じゃん、めんどくさっ」

「........................そう?」

隣の人のつぶやきに、思わずきょとんとする。................なんで?こんなに楽しいのに?

「って、椎原さんもう書き終わったの!?」

「................ううん、紙がもう書けないだけ。」

量が多すぎたかな?って首を傾げると、みんなが私のことを見つめてるのに気がつく。

「................どうしたの?」

「あ、あのさ................書き足らないなら、私のも書く?」

「え、いいの?」

ありがと♪って言ってレポート用紙を受け取る。それを見て、みんなも「私のも」「自分のも」って持ってくる。

「みんなありがと。優しいねっ。」

喜んで新しいレポート用紙に書き進めていく。わぁい、書きたいこと沢山あったんだ♪


翌朝、書き上げたみんなの分のレポートを机の上に置くと、群がるようにみんなが持っていく。わぁ、みんなそんなにうれしかったの?私もうれしい。

そんな感じで理科の時間になる。レポート用紙を集めて前に集めると、先生の表情が変わった。

「................なぁ、一つだけ聞かせてくれ。................なんで椎原さんの名前のレポートが12枚もあるんだ!?」

「................ん、みんなが『足りないならこれも使っていいよ』ってくれたからです。」

................なんで怒ってるの?

「し、椎原................さん................はぁ。ちょっとこれはクラス会議が必要だな。」

先生はおなかを押さえると、教室を出ていった。

「................へんなの。」

きょとんとして言うと、クラスの中がざわつき始める。

「名前書き換えるの忘れてたしっ」

「てかなんで椎原さん自分の名前書いちゃうの!?馬鹿なの?」

「バカはお前らだっ!!」

前の扉が勢いよく開いて、担任の先生が転がり込む。

「................椎原、お前図書室行ってていいぞ。」

「わぁい。」

トコトコと教室を出る。その10秒後、教室に雷が落ちた。


「................ったく、あいつらにも困ったものです。」

「........................」

「................先生?」

「................あぁ、いや、椎原さんのレポートを読んでましてね。然るべき所に進ませれば恐らくは世界的権威レベルになるんじゃないかと思って。」

「そ、そんなにですか?」

「................先生、あなた半日で6000字の論文書けますか?しかも小六で。」

「む、無理ですよっ。................えと、もしかして................」

「................レポート用紙が、どれもぎっちりなんです。」

「................恐ろしい子ですな。」

「................で、モノは提案なんですが................星花なんて、どうでしょうか。」

「................なるほど、あそこなら退屈しないでしょうし................親御さんに勧めてみます。」


「へ?私別の学校行くの?」

ししゃもを頭からぽりぽりかじりながら聞く。

「ああ、星花女子学園って言ってな。女の子しかいない学校だ。」

「ふーん........................面白そう。」


この時はまだ、私の運命が変わることになるなんて知らなかった。

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