表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/87

走り抜けて。

ひとしきり樹をなでなでした後、私はカバンを手に立ち上がる。

「........................樹、遅刻、するよ。」

私の膝でぐでーっとしていた樹は、それを聞いて慌ててしゃきっとする。

「あわわっ、すっかり忘れてた................磨穂呂、走ろっか、いや走るよ!!」

「えっちょ」

言い終わる前に、樹に手を引かれて................いや、『引きずられて』寮の廊下を駆け抜ける。途中で何人か、ぶつかりそうになって文句を言われるけど、樹は一向にお構い無し。なので代わりに引きずられてる私が一応謝っておく。

やっとのことで寮を抜けて校門までたどり着くと、それまでまばらだった人影が急に増える。

「い、いつ、きっ................もう、走らなくても、大丈夫、じゃない、のっ。」

乱れまくった息もそのままに、樹の手を引いて止まらせる。

「だって間に合わないよっ。」

「........................樹、周り、見よ?」

なんでよー................って感じでしぶしぶ周りを見渡した樹は、少しして「あれっ?」って顔で首を傾げる。

「遅刻ギリギリなのに、なんでみんなのほほんと歩いてるの?」

答えの代わりに、私は腕を差し出す。

「わぁ、磨穂呂の腕って真っ白だね。」

「そ、そっちじゃなくてっ、」

「................わかってるよ。ちょっと言ってみたかっただけ。................みゅ?この時計合ってる?」

「................心配なら、携帯も、見る?」

昨日から制服に入れっぱなしだった携帯の電源を入れると、ディスプレイは腕時計と同じ時間を指し示していて。

「........................早くしないと、とは言ったけど、ギリギリとは、言ってない........................」

「................そうだっけ?」

こてん、と首を斜めにする樹。................もしかして、猪突猛進タイプなんじゃ................?

「................そ、それに................」

その先を続ける代わりに、私のお腹がきゅるる................と鳴く。................とりあえず赤い顔を伏せて隠しつつ、

「................まだ、朝ごはん、食べてない................し。」

「........................忘れてた。」

思い出したように、樹のお腹も鳴った。

「................磨穂呂、コンビニのおにぎりで、いい?」

「................鮭五目か、鳥五目、どっちかで................お願い。」


................はぁ、疲れた。

教室の自分の椅子に座ると、そのまま机に突っ伏す。

(................まさか、ここまで猪突猛進だとは................。)

小さなため息を一つ。................ちょっと私には、樹の手綱(たづな)を握っていられる自信が無い。かと言ってほっとくのも................。

「あれ、お疲れ?」

いつの間にか席についていた八千流が、あんぱん片手に話しかけてくる。

「................ちょっと、ね。」

「ふーん。」

それだけ聞くと、八千流はまたあんぱんをもしゃもしゃ食べ進めるのに戻った。................やっぱりおにぎりじゃなくてあんぱん頼めば良かったかも。

「................磨穂呂、買ってきたよ。」

樹の声がして、頭の上にひらべったい物が乗っけられる。頭に手をやって覗き込むと、

「................混ぜこみワカメ?」

「ごめん、こっち。」

樹が差し出したのは、鷄五目おにぎり。ワカメと引換に貰って、ビニールを剥いてかじりつく。................あ、お茶も頼めばよかった。

「磨穂呂、お茶飲む?」

「................ん、ありがと................。」

口の開いたお茶のペットボトルを渡されて、何の気なしに口をつける。................あれ?

「あ、磨穂呂。全部は飲まないでね?」

そう言われて口を離すと、すかさず樹が取り返して残りを飲み干した。........................って、ちょっと!?

「い、いいいいついつつつつつつっ!?」

「な、なに、どうしたの................」

「................そ、それ、わ、私が、口つけた、やつ、」

「........................あっ。」

樹も気がついたみたいで、ペットボトルをじっと睨む。唯一八千流だけは、『回し飲みすると必ず誰か飲み干すヤツいるよなー』なんてケラケラ笑ってるけど、私達はそれどころじゃなくて。

(................さ、最初少し減ってたけど................やっぱり................)

私は、無意識のうちに自分の唇に指を持っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ