おめざめ。
「................ほろ、まほ、ろ................まほろ、起きてっ」
ゆさゆさと身体を揺さぶられて、私は目を覚ます。
「........................もうちょっと、寝かせて................」
ごろんと反対側を向くと、覚めちゃった目をまた戻そうとがんばる。けど、ゆさゆさ攻撃は止むことはなく、更に激しくなっていく。
「................あぁ、もう................お姉ちゃん、もっと、寝かせて、よ........................。」
いつもの癖でこぼれた言葉。................って、あれ、私は菊花の寮に入ったんじゃ........................。
おかしいなぁ、と思いつつ薄目を開けると、ちょっとむすっとした見知らぬ―――いや、よく知った顔が、私のことをのぞき込む。
「........................ふぇ、いつ、き........................?」
なんで私の部屋に樹がいるの........................? ぼんやりした頭で記憶をたどって................すぐにはね起きると、樹のおでこに私の頭がクリーンヒット。
「いった........................」
「いててて.......................」
二人して頭を抱えてうずくまる。でも、痛みのおかげか、目は完全に覚めた。
「いてて................もう磨穂呂、いきなり起きないでよぉ................頭がスイカみたいに割れるかと思った。」
「ご、ごめ、ん........................」
ちょっとズキズキする頭を抑えて樹に謝る。................ついでに、昨日のことも。
「................そのっ、いきなり、押しかけて................ごめん。」
「................それは別にいいや。磨穂呂に抱っこされるの、あったかくて気持ちよかったし。」
「ひっ!?」
慌てて持ってきたぬいぐるみを探すと、ベッドの下でこてん、と転がってた。................ってことは、一晩中抱っこしてたのは................
「................もう、離してくれなかったから寝返りできなかったんだよ?それに寝息がかかってくすぐったかったしさぁ。」
見ると、樹の目がちょっと赤くなってて。........................もしかして、樹が寝るの、邪魔しちゃってた?
「そ、それなら、起こせば、よかったのに................」
「................すやすや寝てる磨穂呂を起こす勇気なんて、無かったから........................」
「そ、そう................」
二人して目線を逸らすこと、30秒。先に樹が折れた。
「................とりあえず、支度、しよ?」
目線を追うと、時計の針はいつもよりもかなーり遅い時間を指し示していて。
「ちょ、いつきっ、」
「................とりあえず私は制服に着替えるから、ちょっと出てて貰えるとありがたい、かな................」
「ごめんっ、私も、部屋、戻るっ」
挨拶もそこそこにして、廊下を短距離走して階段を駆け下りて自分の部屋に戻り、ハンガーをひったくってパジャマを脱ぎ捨てて制服を着る。................ああっ、ボタンかけ違えたっ!?
やっとのことで制服を身につけると、扉の外から遠慮がちなノックが聞こえてくる。
「あのー、磨穂呂................?」
返事も待たずに開けられた扉のスキマから、樹がちょこんと頭を差し出す。
「................鍵、私の部屋に落っことしてたよ。」
「................へ?」
................そういえば、私は昨日鍵を持って出たはいいけど、肝心の鍵をかけてなかったような................
「................うわっ、磨穂呂、そのカッコ................なんでパジャマの上からスカート履いてるの?」
「えっ?」
慌てて見ると、確かに................後ろを向いていそいそと脱ぎ散らかすと、樹にチョンチョンと背中をつつかれる。
「................髪、ボサボサだから直してあげる。................とりあえず、しゃがむか座って?」
言われた通りにその場にしゃがむと、樹が不器用な手つきで櫛を入れていく。何回も引っ掛けては髪が犠牲になるし、ガリガリされて痛かったけど................一生懸命にやってくれてるのは、伝わった。
「................と、とりあえず、こんなもん?」
そう言われて鏡の方を向くと、ひとまずはいつも通りの髪型に戻っていた。
「ん、ありがと、樹。」
何気なく差し出した右手はちょうど樹の頭の辺りで、途端に樹がむすっとする。
「................磨穂呂、私の方がお姉さんなんだからね?」
「................は、はーい................。」
そう言いつつも、樹は素直に撫でられていた。




