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明日の、準備。

「じゃあ、また明日、ね................ちゃんと、寝るん、だよ................。」

「わ、わかった................」

やっとのことで樹をなだめて、そのまま樹の部屋に押し込む。................もう、ちゃんと一人で寝てよね................。

パタンとドアを閉めると、そのまま私の部屋に向かって歩き出す。私と樹の部屋は階層が違うから行き来するのにちょっと時間がかかるし、それに................あんまり夜に強くないから、早くお布団に入りたい。

自分の部屋の鍵を開けると、さっき脱いだ洗濯物をカゴへと投げ込む。それから、ベランダから洗濯バサミ付きのハンガーを持ってきてタオルを吊るしておく。................今日は少し風が強いからお部屋の中で干したいけど、生乾きだと臭くなっちゃうし........................いいや、とりあえずはお部屋の中で。

それから、私は寝る前に明日の準備をする。................えーと、新しいノートに教科書にっと................。あっ、このプリント、樹に渡すの忘れてた。でも今から戻るのも................うーん。それ程急ぐ連絡でもないし、明日会ったときに渡せばいっか。........................うん。準備終わりっと。

壁に掛けてある時計を見ると、いつも寝る時間よりも少しだけ早かった。けど、特にやることも無いし、もう寝ちゃおうかな?................あ、面白そうなテレビとかやってそうだし................うーん、でも寮監さんに怒られそう。

................どうしよう、................ちょっと、暇................。

手持ち無沙汰になって机の上を整理すると、原稿用紙の束がバサリと床に散らばる。................そうだ、須川先輩から言われたこと、すっかり忘れてた................。

他にやることも無い私は、スタンドのスイッチを入れて机に向かう。................そして5分ぐらい原稿用紙とにらめっこした挙句、机に突っ伏した。........................い、いきなり書けって言われても、なんにも思いつかないよぉ........................。

とりあえず、思いついた言葉を原稿用紙に書き連ねていく。何度も消しゴムをかけては書き直していくうちに、原稿用紙は黒くてボロボロになっていく。そして、

『ビリッ』

「あっ........................」

................見事に、真っ二つになる。................うー................

原稿用紙を丸めて、グシャグシャポイッ。改めて、新しい原稿用紙へと書き連ねていく。................こ、こんなもん、かな?


「私は、普通の女の子。今日はリンゴを一つ食べて、子鹿になった。昨日はミカンをひとかけら、小鳥になって空をふわり。明日はバナナかストロベリー。きっとすいすい、イルカになれる。」


........................うー................全然意味分かんないよぉ................でも、他に思いつかないし................こんなの見せたら、須川先輩の無表情な顔がさらに険しくなっちゃいそう................。

................いいや、忘れよう...............。スタンドを消して、部屋を暗くして布団にもぐる。ふかふかしてて気持ちいい................。


................とか思ってたけど、今何時だろ................。何度目かわからない寝返りを打って、壁の時計に目を凝らす。................あれれ、まだ20分しか経ってない。................うむむ、眠れない........................。

私は、ベッドの上に半身を起こす。................おかしいなぁ、いつもならすぐに寝られるのに................。

(........................いいや、寝よ。)

ぽふんと布団に横になると、手近にあったぬいぐるみを抱っこする。

(................そういえば、樹の部屋にはぬいぐるみ無かったっけ。)

それどころか、私服以外の私物がなんにも無かったような................。って、なんで樹のこと考えてるんだろ、私........................。

................なんか、今日は樹に振り回されたし、振り回してばっかり................。明日、ちゃんと謝らないと................。明日、で、いい、のかな................?

私はまた、ムクリと身体を起こす。そして、ぬいぐるみを片手にスニーカーを突っかけて、部屋を出る。常夜灯だけになった廊下を、記憶を頼りに歩いていく。................ん、ここだ。

軽くノックするけど、奥から応答はない。................もう、寝ちゃってるのかな。ドアノブを回すと、鍵はかかってなくて。

「........................樹、入るよ................」

恐る恐る足を踏み入れると、微かな寝息が聞こえてくる。そろりそろりとベッドまで歩くと、やがて月明かりに照らされた樹が見えてくる。

(................お腹出てる................もう、................風邪がもっと酷くなっちゃうよ?)

そっと布団をかけ直すと、寝てるのを確かめてから、そろっと部屋を出ようとする。........................イテテッ、なにか踏んだっ。

「................ふぁ、................だぁれ.........ママ...............?」

後ろで、樹が身体を起こしたのが分かった。

「........................だ、誰っ!?」

樹が焦った声を出す。

「........................わ、わたし、わたし、まほろ、だよ................」

慌てて正体を明かすと、樹がキョトンとする。

「........................まほ、ろ........?どう、したの?」

「................ちょ、ちょっと、心配に、なって................あと、プリント、渡そうかなって................」

「........................なんでぬいぐるみ持ってるの?あと、真夜中にプリントって................」

「こ、これは................その................」

................は、恥ずかしいな................

「........................その、寝られない、から................樹のとこ、行こっかな、って................」

「ね、寝ろって言ったのに................?」

「うっ........................」

「........................もしかして、一緒に寝たいの?」

「そ、そんな、こと................................ごめん、ね。................やっぱり、一緒に、寝よっか................」

「え、いいの?」

「........................うん。樹が、いい、なら................」

お風呂上がりみたいに、私の頭が熱くなっていく。

「................磨穂呂、一緒に、寝よ?」

樹が少しだけ空けてくれたスペースに、私は横になる。

「........................えへへ、あったかい、ね。」

「........................うん。」

樹の温もりに包まれると、私はすぐに眠りへと誘われた。最後に、樹の「おやすみ」を聞きながら。

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