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居着く磨穂呂はほろほろと。

今回はいっつんですよ。

................うーふ、風邪引いた................。私は、ベッドに寝っ転がって天井を眺めた。................あ、あんな所にシミが。

................結局あの後、私は磨穂呂のことを追いかけることが出来なくて。そして、................なんであんなこと言っちゃったんだろって。ずっと自分の中で問い詰めてたら、いつの間にかお風呂で逆上(のぼ)せてた。なんとか自分の部屋まで帰れたのはいいけど................朝起きたら、全身怠くて................一発で風邪だって分かった。

(................まほろの、せいだ。)

磨穂呂が、私のことを惑わすから................ううん。悪いのは、私の方。勝手に磨穂呂に目をつけて、勝手に仲良くなろうとして................勝手に、欲情して................。

(................あー、私、何してるんだろ................。)

................最初はただの『面白い人』として観察しようとしたのに、私のことを『初めての友達』なんて言って、嬉し涙流して................私よりも色んなとこがオトナなのに、中身は私よりも幼いみたいで................。

(................私が、守ってあげた方がいいのかな................?)

................私は騎士よりも学者の方が向いてるし、「かばう」よりも「みやぶる」の方が得意なのに................磨穂呂の前だと、私はただの変な人。他のみんなだと、じっと見つめると嫌そうな顔したり、時には怒られる。けど................磨穂呂は、最初こそびっくりしたけど、それからは嫌そうな顔しないで受け入れて................くれたのかな?単に言い出せないだけなのかもしれないけど。

........................あれ、なんで私................磨穂呂のことしか考えてないんだろ。いつもなら、今日のご飯のことを考えたり、流れてく雲と空模様を見つめるだけで楽しいのに................今日は何を考えても、全部最後は磨穂呂のことになっちゃって................あぅ、まともな『観察』ができないよ................。


遠くで正午の鐘が鳴る。................あれ、もうお昼なんだ。................でも、お腹空かないや。

私は、だるい身体を無理に起こしてトイレに立つ。最初に買った2ℓのスポーツドリンクは、もう半分ぐらい汗に変わってて................そろそろ、次のが欲しくなる。でもその前に、お腹の中でたぽたぽしてる残り半分をどうにかしたい........................。

壁伝いに歩いて、やっとのことでたどり着く。................あれ、誰かいる................? 扉が開いて出てきたのは、

「................まほ、ろ................」

「................い、いいいいい、い、つき................」

................ビニール袋を持った、磨穂呂の姿。

「あ、あの................こ、これ................さし、いれっ................」

下ろした前髪の奥で、磨穂呂の視線があちこちさまよう。................私はここにいるって言ったら、どんな反応をするの、かな................

「................あ、................こ、ここ、空いた、から................どう、ぞ................。」

磨穂呂が半身になって、私のことを通してくれる。................すれ違う瞬間に、微かに甘い香りがして、私の熱が上がってく。

「................まほ、ろ................」

「................な、な........に........?」

「................私の部屋、................そこ、だから................先に、待ってて................」

と、鍵を渡そうとするけど、磨穂呂は受け取らなくて。

「そ、その................何か、欲しい、の、あれば................買って、くる、から................」

と、私の手を握る。

「................す、スポーツドリンクの、一番大きいの................お願いして、いい?」

「う、うん................分かった。」

と、磨穂呂がすぐに駆け出していく。................差し入れまで一緒に持ってかなくてもいいのに................。

私は、個室の扉を後ろ手に閉めた。


(................磨穂呂、遅い................)

私がヨロヨロと部屋に帰った後も、磨穂呂は私の部屋に来なくて。

(................まさか、迷ってる................なんてこと、無い................よね。)

そんなことを考えてると、部屋の扉がノックされる。

「...............どうぞ。」

「お、おじゃま、します................」

磨穂呂が遠慮がちに部屋に入ってくる。

「................はい、飲み物................。」

遠慮がちに差し出すのは、私が欲しかったのとは違うスポドリ。私の視線に気がついたのか、磨穂呂は空のペットボトルと持っているスポドリを見比べて慌てる。

「................いい、これでもいいから。」

少し力を込めて引っ張ると、フタを開けてそのまま一気飲みする。................ふぅ、生き返る。

「あ、あの........................」

磨穂呂が遠慮がちに口を開く。

「その................風邪、引いたのって、................わ、私の、せい................だよね?」

思わず飲んでいたスポドリを吹き出しそうになる。

「だ、大、丈夫................?」

「................なんで、それを................」

「や、やっぱり................」

オロオロする磨穂呂を尻目に、私は青ざめる。

(................ま、磨穂呂................もしかして、私の思いを................)

................こんな醜くて、言い出せないような思いが................磨穂呂に、バレてる........................?

「そ、その........................間違って、たら................ごめん、なさい........................。樹は................私のこと、................す、すき、................なの?」

........................お、終わった................。私は、布団に突っ伏した。それはもう、否定しようのない事実で................私の心は、ノーを呟けない。................最初っから分かってた。磨穂呂への感情は、観察対象へのそれじゃなくて................初めて見た時から、『スキ』のそれだって................。

「........................ねぇ、樹................その................私、も................まだ、よく、分かってない、んだけど................私、も................樹のこと、考えると................ドキドキ、して................楽しく、なって................これが、スキ................なの、かな................」

「................................ふぇ!?」

「................いつ、き........................私、いつきの、こと................スキに、なっちゃった、かも................」

「................................................ええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

私の視界が、ブラックアウトする。

........................最短記録:1日

無理があることは分かってる。けど................まほいつだから仕方ないんです、はい。

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