シャワーの、中で。
廊下を小走りに駆け抜けて、私の部屋に飛び込んで中から鍵をかける。................はぁっ、はぁ、っ................。
ずぶ濡れに近い髪も、ほとんど乾かしてない身体に貼りつくパジャマや下着の感覚も、全部今はどうでも良く思えて。
(........................樹................。)
ベッドにうつ伏せに飛び込んで、私の初めての友達のことを考える。
(................ずっと一緒にいたいって、どういうこと、なんだろ................)
................あの言い方だと、友達................ってだけじゃ、ないだろうし........................。じゃあそれ以外だと................親友、家族、................恋人。........................こ、ここここここここいびと!?い、いつき、................と?
私の頭が沸騰していく。........................恋なんてまだ知らないし、それに................お、女の子と女の子で恋人になるのって、おかしく、ないの!?
私の頭の中を、ぐるぐると樹が駆け巡る。........................「まほろ」って呼んでくれたのも、家族以外だと樹が初めてだし................あんなにじーっと見つめられたのも、初めて。........................でも嫌じゃないし、むしろ................樹なら、私のことを分かってくれそうだし................変な人だけど、嫌いじゃない................し。
........................私、樹のこと、........................スキ、なの、かな................?
答えが見つからない問いかけは、私のくしゃみで無理やり途切れる。................やっぱり、ちゃんと身体拭かないと風邪引いちゃうかも................でも身体が冷えちゃったし、かと言ってまたお風呂行くのも................。シャワーで、いい、かな................。
私は、干しておいた生乾きのタオルと新しい下着と別の服を持って、シャワー室へと入る。コックを捻ると、天井からシャワーの滝が床へと打ち付けられる。そっと身体を潜らせようとして、慌てて飛び退く。........................み、水だ、これ................。慌ててお湯に切り替えると、今度は指先で温度を確かめてから滝を潜る。................ふぅ、あったかい。
頭からお湯を浴びると、冷えた体も少しずつ温まっていく。けど、芯まで暖まるにはまだ時間がかかりそう。................少しだけ、明日のことを考える。
まず教室に着いたら................樹のことを呼び出して、................ううん、そんなのムリ................私にはできっこない................。
................なら、後ろから話しかけて................ううん、人目もあるし難しい、かも........................。なら、一緒にトイレ行こって言って................。
何度もプランを立て直しているうちに、私の体はほかほかを通り越してゆでダコになって................結局、お風呂上がりの時と同じようにフラフラになって、ベッドに倒れ込んだ。
........................あ、原稿用紙、買ってないや........................。
翌朝、私は少しだけ早起きして身支度をする。................今日は、カンペも予行練習もナシ。................ぶっつけ本番で、樹のホンネを聞き出すんだ。
私は早めに朝食を済ませて、誰もいない1組の教室で待つ。................けど、一人来ても、二人来ても................他のみんなが揃っても、樹は来なくて。
その答えは、HRの中で明らかになる。
「................えーと、椎原さんは体調を崩した為本日は欠席とのことです。」
........................う、そ........................いつ、き........................?